あなろぐ懐古ログ 「ワウ・フラッター」

2013.02.15(Fri)

今回のあなろぐ懐古ログのお題は「ワウ・フラッター」です。

ちょっとオーディオに詳しい人などは、略して「ワウフラ」なんて言うこともありましたね。これは音響機器の回転ムラなどによって発生する周波数の変動を指す言葉です。

アナログ方式の録音/再生機器のカタログや取扱説明書には必ず、仕様としてワウ・フラッターが何パーセント以下という記載がありました。しかしCDプレーヤーなどのデジタル機器の場合、その記載は決まって「測定限界以下」となり、最近では記載自体がないこともあるようです。デジタル録音が常識となりつつある現代では、ワウ・フラッターという言葉はほぼ完全に駆逐されてしまったと言えるのではないでしょうか。

ちょっと前まで「録音」と「回転」は切っても切れない関係でありました。レコード盤やテープレコーダー(のリール)など、録音メディアはいつも回転していたんですね。ですから「録音する」という言葉と「テープを回す」という言葉は同じ意味合いを持っていました。録音現場では「はい、それでは録音しま〜す」というよりも「はい、それでは回していきま〜す」なんて言葉のほうが普通に使われていたように思います。よくよく考えると非常に曖昧な言葉ではありますねえ。
余談ですが、映像の録画にも「回す」という言葉が使われています。「カメラ回して」なんていうこともありますが、厳密に言えばカメラは回しません。回すのはVTR(ビデオテープレコーダー)ですよね(笑)。
…とまあ、そんな細かいことは置いといて。

録音と回転の蜜月(?)は、録音の歴史が始まったエジソンの頃から、実にデジタル録音の時代まで続いていきます。ハードディスクも回転メディアですから、おそらく初めてその関係が切れたのは、メモリーカード等に音声信号を記録するICレコーダーが登場した時ではないかと思います。将来的にこちらが録音の主流になるのかもしれませんが、その時にも「回す」という言葉が慣例的に使われ続けているのか、非常に興味深いところではありますね。

さてさて、本題のワウ・フラッターです。冒頭でちょっと触れましたが、これは主に音響機器(テープレコーダーやレコードプレーヤー)の回転ムラによって起こります。回転ムラというのは、機器(モーターや伝達ベルトなど)の回転が周期的に速くなったり遅くなったりする事です。つまり、録音テープやレコード盤の速度が速くなったり遅くなったりして、音が揺れたり濁って聞こえてしまうんですね。
この音揺れの周期が長いものを「ワウ」、短いものを「フラッター」といい、その総称が「ワウ・フラッター」です。ちなみにワウとフラッターの境は10Hz(1秒間に10回の変動)とされています。

回転ムラは電気的・機械的に起きる様々な原因によって発生し、一般ユーザーレベルで対処することは難しいでしょう。せいぜい走行系部品の掃除など日々のメンテナンスをきちんと行って、よりひどいワウ・フラッターが発生しないようにする事くらいでしょうか。

ところで、回転速度が速いほど回転ムラは少なくなります。ヒスノイズの時にお話ししたのと同じように、マイクロカセットよりもカセットテープ、カセットテープよりもオープンリールテープレコーダー、一般用オープンリールテープレコーダーよりも業務用マスターレコーダーのほうが走行速度が速いため、ワウ・フラッターは小さくなります。ここでも高級品のほうが高音質であるという図式は健在ですね。

ちなみにCDなどのデジタル音声にワウ・フラッターが起こらない(測定限界以下、ですね)のは、回転速度が充分に速いからだという記述を見たことがありますが、それはちょっと違うんじゃないかなと思います。1秒あたりに扱うデータが膨大になるデジタル音声は非常に高精度な時間管理がされていて、回転ムラがあってもその影響は無視できるほどに小さくできるそうです。もしもデータの読み取りに影響が出るほどの速度変化があればジッターノイズという雑音が発生し、ひどい時にはエラーが起きてしまうでしょう。デジタル音声は伝達速度が変化したからといって、音声の速度や音程がそれに応じて変化するような事はありません。
ということで、ワウ・フラッターはアナログ音声機器特有の現象であると言えるのではないでしょうか。


さて、ワウ・フラッターといえば思い出す事があります。
サイモン&ガーファンクルの名曲「明日に架ける橋」のエンディング、それも一番最後の部分は、ストリングスのロングトーン(10秒くらいある)なのですが、このストリングスが大きくうねって聞こえて気持ち悪かった、という人がいます。レコードでもラジオでも、どこで聞いても同じだったというんですね。私も言われてみればその通り、たしかにうねっていたなあと思いました。ところがCDになると、これがうねっていません。つまり、録音されたマスターテープは異常がなかったという事になります。

これ、アナログレコードのワウ・フラッターなのでしょうね。それも、モーターやベルトの回転ムラによるものではなく、たぶんレコード盤の偏心が原因なのではないかと想像します。偏心というのは中心から片寄っている事で、つまりレコード盤の真ん中に空いている穴はどれほどの精度で中心がとれているんだろうか、その微妙なずれによって周期的な速度変化が起きているのではないか、と思うのです。
ほとんど全てのレコードでこういったワウ・フラッターは起きていたのでしょうが、特にこの曲のような比較的高い音程のロングトーンでは目立ってしまったのでしょう。こういったエピソードも、アナログならではの話題ですね。

ちなみに高級オーディオでは、こういったレコード盤の偏心を補正するレコードプレーヤーなんて物も存在します。

以上、今となっては何の役にも立たない、「ワウ・フラッター」についてお話ししました。


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COMMENT

cyah

こんばんは。

とある小説で女性が「録音いってきまーす」と言うセリフがあって、
何かと思えば「音入」→「おトイレ」だったという・・・。
(ごめんなさい、さはんじさんのネタ取っちゃった・・・(笑))

それにしても懐かしい用語が出て来ましたね。
アナログの頃はモーターの回転精度が性能だったりするんですよね。

CDは多分時計と同じで水晶発信素子で同期をとっているので、
理論的にはワウフラッターが出ないのだと思います。
この辺は最近のデジタル機器全般に言うことの出来る話ですが。

2013.02.15(Fri) 22:32 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
コメントありがとうございます。

音入れネタ、いいですねえ(笑)
いっその事、カタカナにして「レコーディングいってきまーす」と言ったほうがカッコイイかもしれませんよ。あ、でも、興味を持った人がぞろぞろついてきて、余計に恥ずかしい思いをするかも(^^;

ワウ・フラッターを懐かしいという人は、もうそこで世代がわかってしまいますよねえ。

2013.02.16(Sat) 21:59 | URL | EDIT

cyah

こんばんは。

嫌だなぁ、私は17歳教信者だって言っているじゃないですか。(苦笑
それにカセットテープはしぶとくまだ現役ですから。
(第一線は外れたにしても、ラジカセがまだ出回っているので)

2013.02.18(Mon) 22:33 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
あはは、そうでしたね。cyahさんは17歳…と。

カセットテープ、今でもあるんですが、会議用120分テープとカラオケ録音用5分テープしか置いていない店が多いと聞いた事があります。アナログレコード全盛のときは46分テープをよく使ったものですが、こちらも今では駆逐されてしまった物の仲間と言えるのでしょうね。

2013.02.18(Mon) 23:16 | URL | EDIT

cyah

またまたこんばんは。

言われてみればテープの長さまであまり見たことはありませんね。
100均あたりで割とよく見てはいるんですが、120分は割が合わない気が・・・
(しかも伸びるので耐久性に乏しいし)

他にレコードプレーヤーなども最近良く見ますよ。
手持ちのレコードをCD化させたり
MP3のようなデジタル音源に変える際に使われているみたいですが。

2013.02.19(Tue) 22:36 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん

おっしゃる通り、120分テープの耐久性は頼りないものがありましたね。

レコードプレーヤー、手持ちのレコード音源をデジタル化する用途だとすると1度再生したらそれで終わりになってしまいそうですね。DJをやる人などにはまだ需要があるのでしょうけど…。

2013.02.20(Wed) 17:20 | URL | EDIT

cyah

たびたびこんばんは。

前の話からは外れますが、レコード盤を針ではなく
CDのようにレーザーピックアップで溝を読んで
再生するプレーヤーがあるとか。
(以前30万とか100万とか聞いたけど)

まだ真空管アンプにこだわっている人もいるので
しばらくはまだアナログの世界も安泰かも知れませんよ。

2013.02.21(Thu) 22:02 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん

をを、ありましたね、アナログレコードのレーザー再生プレーヤー(?)。
そうそう、確か出始めの頃(15年以上前かな?)に100万円くらいだと聞いた記憶があります。
スクラッチノイズも少ないとの事で気にはなりましたが、価格が現実的でないです…。

アナログオーディオ存続のために、マニアの皆様には頑張ってほしいものです(^^;

2013.02.22(Fri) 17:21 | URL | EDIT

Vitalabolove

こんばんは。
いつも楽しく拝見しております。

どうしても「CDなどのデジタル音声にワウ・フラッターが起こらない~~」の部分がひっかかります。

CDプレイヤーも家庭用から高度な製品までさまざまですので一概に論じるのも良くないと思いますが、
一度メモリにデコードしたPCMデータを同期して転送していますよね。
だいぶ先の再生分まで読み出しているとします。その際、デコードでエラーになることはあるでしょう。
L、Rの両方のチャンネルデータに整合がとれない場合、サブチャンネルのデータを取りにいき、さらにダメな場合は前後の読み出せる値から近似値を算出するかと思います。
盤面のキズにもとづくエラーは上記のような訂正かと思うのですが、駆動時の振動によるエラーも生じていると思います。
かつて、それが気になり制振対策したり回転速度を落としたところ、パルスデータが綺麗になったことがあります。

そういえば、輸入版の12インチがうねって気持ち悪く聞こえたことがありました・・・

ところで、レーザーターンテーブルも存在しますが、やはり針を使うプレイヤーには勝てないのでしょうか・・・

2013.02.22(Fri) 23:57 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>Vitalaboloveさん
コメントありがとうございます。

お詳しいですね。おっしゃる通り、デジタル再生において駆動時の振動によるエラーは、おそらく頻繁に起きていると思います。それが再生音質に何らかの影響を与えていることも間違いないでしょう。
しかし、あくまでもワウ・フラッターは再生音の周期的な周波数変動ですから、そういった読み取りエラーをワウ・フラッターとは言わないと思います。
という意味で、「デジタル音声にワウ・フラッターが起こらない~」という表現を使用しました。

レーザーターンテーブルですが、実際に音を聴いたことがないのでなんとも言えませんねえ。何と言っても針のプレーヤーとはかかるコストが違いすぎます。
何十倍もの金額を払うだけのメリットがあるのかどうか…?

2013.02.23(Sat) 07:38 | URL | EDIT

Vitalabolove

ふたたび失礼します。

本題のワウ・フラッターと話が反れてしまい失礼しました。
CD のノイズに関して偏ったコメントとなってしまったかもしれません・・・

私ごとで恐縮ですが今でもたまに音遊びをします。その際、意図的に Wow 効果を加えたりします。
本当は ( ノイズとして ) 取り除きたいと思いますよね。
ところが、ほかにもレコード針特有のプチプチした効果を加えたり、デジタルの音にありがちな綺麗すぎる音に味をつける楽しみ方もあります・・・

レーザーを使ったターンテーブルは自分の手元にないので、記憶にもとづく体感で言いますと、良い音でした。
針を使うプレイヤーのうち高級な部類とさほど変わらない価格だったかと思います。
なんでも、一回再生すると半日か一日くらい間を空けないと盤面を痛めてしまうそうです・・・

2013.02.24(Sun) 09:18 | URL | EDIT

さはんじ

Re: ふたたび失礼します。

>Vitalaboloveさん

原音を忠実に再生するオーディオの理想と、音楽表現の理想は必ずしも一致しません。音楽的にカッコ良いのであればノイズを付加したり原音を歪ませたりすることも必要な加工であると言えるでしょう。感性の赴くままに音を汚していくのも楽しいですよね。客観的なセンスを問われそうではありますけど(笑)。

>一回再生すると半日か一日くらい間を空けないと盤面を痛めてしまうそうです・・・

なんと、そうなんですか。お気に入りの音楽を聴くのに1日1回の制限をつけられるのはツラいですね。

2013.02.24(Sun) 23:17 | URL | EDIT

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