Andrew Gold『WHAT'S WRONG WITH THIS PICTURE?』

2011.07.26(Tue)


What's Wrong With This PictureWhat's Wrong With This Picture
(2005/05/31)
Andrew Gold

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以前に予告した通り、今回はヒット曲「ロンリー・ボーイ」を擁したアンドリュー・ゴールドのセカンドアルバム『自画像』(1977年発表)を取り上げていきます。原題は『WHAT'S WRONG WITH THIS PICTURE?』で、直訳すると『この絵の何が間違っているでしょうか?』となります。そう、ジャケットのイラストが間違い探しになっているんですね。それをそのまんまアルバムタイトルにしてしまうという何とも大胆な遊び心にあふれたアルバムです(?)。
邦題の『自画像』は原題とかなりのギャップを感じますが、これはおそらく「ロンリー・ボーイ」の歌詞に触発されてつけられたのでしょう。やっぱり『間違い探し』なんてタイトルにはできないですよね(笑)。

このアルバムはプロデューサーがピーター・アッシャーに替わっていますが、レコーディングエンジニアは前作『アンドリュー・ゴールド・デビュー』と同じヴァル・ギャレイで、そのせいかサウンドの傾向はさほど違っていないようです。耳にイタい感じは無く、柔らかく暖かみのあるサウンドですが、しっかりとメリハリは感じられます。相変わらずボーカルはやや奥まっていますが、そのため各楽器に迫力が感じられ、センスよくまとまっているという印象です。

前作よりもゲストミュージシャンによる演奏が多くなっていて、また、スタンダード・ナンバーのカヴァーも積極的に取り入れるなど、音楽的な幅が大きく広がっています。そして例のジャケットやアルバムタイトルに代表されるようなユーモラスな遊び心は前作同様に楽曲中にも多く見られます。これはいわゆるポップ・ミュージックには非常に大切な要素だと思いますし、何よりもアーティストの人間性が垣間見えるようで楽しい気分になりますよね。

さて、1曲目「ホープ・ユー・フィール・グッド」は、数秒間の無音状態の後に分厚い音(これはエレキギターの逆回転サウンドでしょうか?)がうわっとフェードインしてきて、重く力強いリズムが始まります。このインパクトは抜群で、アナログレコードに針を落とした人に「あれ、音が出ないぞ」と思わせて、次の瞬間にいきなり脅かすというイタズラ心を感じてしまいます。ジャケットに続いて、サウンドでもしょっぱなからヤラレタという感じですね。力強いバスドラムと、リズムを後押しするエレキギターのチョーキングが印象的な曲で、短いベースソロと深いリバーブのかかったリコーダーが独特の雰囲気を出しています。終盤の盛り上がりもいい感じですね。

2曲目「過ぎゆく日々」は一転して静かなピアノのイントロから始まるバラードです。途中から聞こえてくる笙(しょう)のような音はストリングスでしょうか。などと思っていたら間奏は尺八のソロになります。このあたりのアレンジからもリスナーを驚かせる茶目っ気を感じます。とは言っても曲自体はとてもシリアスな曲調です。リーランド・スカラーのベースもいいですね。

エレキギターのカッティングが印象的な3曲目「ドゥ・ワァ・ディディ」は明るく元気なロックンロールで、バスドラムのビーターがドラムヘッドに当たるパチパチというアタック音がよく聞こえて、力強さを感じます。また、マンドリンが効果的に使われている4曲目「人生はくりかえし」のドラムは控えめですが、深みのあるタムの音はなかなか気持ちのいいものがあります。ストリングスはシンセサイザーですね。そしてこの曲のボーカルは実に表情豊かで、ボーカリストとしての実力も素晴らしいと再認識させられます。

ピアノとストリングスのみを伴奏とした5曲目「エンジェル・ウーマン」に続いて、6曲目はキュートで楽しい曲調の「マスト・ビー・クレイジー」です。多彩なフレーズを演奏するエレキギターはなぜか非常に控えめにミックスされていて、ボコボコとした音色のドラムのリズムが立って聞こえます。サックスのソロやオルガンもいい感じに入ってきます。

そしてアナログレコードならここからB面ということになりますが、7曲目は力強いピアノのリフが印象的で、キャッチーな曲調の「ロンリー・ボーイ」です。このピアノのリフには驚くべき(?)仕掛けが隠されていて、表拍のように感じるピアノが実は裏拍で、裏拍に聞こえるカウベルこそが表拍なのです。2コーラスめになると誰でも気が付くのですが、イントロおよび1コーラスめでは、解っていてもピアノが表拍に聞こえてしまいます。
これは1コーラスめの歌詞の内容が2コーラスめで裏切られるという構成をサウンドでも(拍の裏表をひっくり返すことによって)表現しているのでしょうか。さらに3コーラスめで発展する歌詞を後押しするように、このリフにはバスドラムとベースを伴った力強いシンコペーションが追加されます。もうこの構成だけでも恐れ入ってしまうのですが、さらにこのリフを基調とした間奏では押しては引き、引いては押すといったダイナミックレンジを活かしたアレンジがされていて圧巻です。エレキギターのソロもエキサイティングで、且つ気持ちのいいサウンドです。深みのあるスネアも実にいい音してますね。ホント、名曲だと思います。

8曲目はストリングス以外のすべての演奏をアンドリュー・ゴールドひとりでこなしている「ファイアフライ」です。ダブルでレコーディングされたエレキギターがいい雰囲気を作っていますね。また、後半ではリズムを後押しするような低音のストリングスが曲に深みと重みを加えています。

ここまできたら全曲にコメントしなければならないかな?(笑)
9曲目はミュート気味のアコースティックギターのカッティングが印象的な「ステイ」です。軽やかなエレキギターのカッティングもいい感じです。間奏前に「バンッ」という大きな音が鳴りますが、これは何の音でしょうね。終盤のコーラスには目一杯のリバーブがかかります。

10曲目「家へ帰ろう」のイントロのエレキギターはボリュームが抑えられていて、そのため続くドラムはとても大きな音に聞こえます。このあたりのバランス感覚も素晴らしいですね。いかにもエレキギターが主役ですといった感じでカッコいい曲なのですが、最後の部分はなぜか不自然に感じるくらいあっさりとフェードアウトしてしまいます。

左右に揺れる柔らかいエレキピアノの音が印象的なラスト11曲目の「このままでいたい」は、スネアドラムの音が特徴的で、アタックよりも響き線(スナッピー)の音が強調され、ソフトな雰囲気をつくっています。それに対してバスドラムはタイトなサウンドです。タムは深みがあって力強い…と思ったら、なぜかタムのみアンドリュー・ゴールド本人が叩いているようです。後からオーバーダブしたのでしょうか。

この『自画像』は前作『アンドリュー・ゴールド・デビュー』と同様に素晴らしい楽曲が揃っている上に、なんとかしてリスナーを喜ばせよう、もしくは驚かせようというイタズラ心(サービス精神?)を感じるアルバムです。それは楽曲自体はもちろん、アレンジであったり楽器のチョイスであったり、押しては引きといった曲順であったり選曲であったりと、ありとあらゆる部分に隠されているように思います。ジャケットの間違い探しと同様に、アルバム全体に散りばめられた仕掛けを探してみるのも楽しいでしょう。タイトルの『WHAT'S WRONG WITH THIS PICTURE?』にはそんな意味も込められているのでは? と思うのは考え過ぎでしょうか。
ユニークで人を喰ったような「アーティスト本人によるライナーノーツ」の内容からはアンドリュー・ゴールドの人柄がうかがえますし、このアルバムには実に様々な要素が含まれているから探してみてね、という意図も感じ取ることができるような気がします。

ちなみに2005年に再発売されたCDには5曲のボーナストラックと共に、ジャケットの間違い探しの正解が記されているそうです。なんと32ヶ所もあるとのことですが、アナログレコードならいざ知らず、CDサイズでは確認するのもひと苦労でしょうね。私が所有しているのは1991年に発売されたCDなので、ボーナストラックも含めてこういう話は只々くやしいばかりです(笑)。





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COMMENT

Shogo

私もこのアルバム大好きです。
素晴らしいレビューだと思います。

2015.12.19(Sat) 22:32 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>Shogoさん
コメントありがとうございます。

音楽的アイデアと遊び心に溢れた素晴らしいアルバムですよね。
多くの楽器に精通したマルチプレーヤーならではの名盤なのかもしれません。

2015.12.19(Sat) 23:56 | URL | EDIT

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