Carole King『TAPESTRY』

2012.01.20(Fri)


TapestryTapestry
(1999/05/27)
Carole King

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1971年に発表されたキャロル・キングの『つづれおり』は、言わずと知れた名盤中の名盤です。ベストアルバムではないかと思ってしまうほど素晴らしい曲が多数収録されたこのアルバムの功績は、ここで私が語るまでもないでしょう。収録曲の多数のカバーバージョンが存在する事や、この『つづれおり』のトリビュートアルバムも多数発売されている事からも、世界中の多くのアーティストからリスペクトされていることがうかがい知れます。
また、このアルバム自体も、紙ジャケット仕様やボーナストラックが追加されたリマスタリング版、ライブ演奏のディスクが付属したレガシーエディション等、仕様を変えて何度も再発売されています。ここでは1986年発売のCD(おそらく初CD化されたものだと思います)についてレビューします。

この『つづれおり』は、しっとりとしたスローからミディアムテンポの曲が多く、それぞれの曲は大変美しいメロディーを持っていますが、上品にまとまった感じはせず(もちろん決して下品だという訳ではありません!)全体的に非常に力強さを感じるアルバムです。
その力強さは、バンド全体のドライブ感もさることながら、キャロル・キングの感情表現の豊かなメリハリのあるボーカルとアコースティックピアノによるところが大きいと思います。

硬質な低音のピアノが迫力たっぷりの1曲目「空が落ちてくる」のボーカルは残響がほとんどなく、極端にオンマイクで歌っているような生々しいサウンドで、特に歌い出しのインパクトは絶大です。少々歪み気味にも聞こえますが、それも曲調によくマッチしたサウンドになっていると言えるでしょう。
パワフルなピアノは2台がオーバーダブされているようで、ベーシックなリズムを演奏するピアノは中央やや右寄りあたりに、印象的なフレーズやソロを担当するピアノが左チャンネルに定位しています。演奏の強弱によって音色がかなり違うので、おそらくフォルテシモの部分では叩き付けるほど強く、相当にダイナミクスの広い演奏をしているのではないかと想像できます。
ダイナミクスといえばドラムの抑揚表現による音量差にも注目したいところです。バスドラムはやや控えめですが、存在感のあるベースがしっかりと低域を支えている感じです。このベースは中央よりやや左寄りから聞こえるような気がしますね。バンド全体のドライブ感が素晴らしく、演奏のテンションの高さがリスナーにもビシビシと伝わってきます。

2曲目の「去りゆく恋人」もピアノのダイナミクスが印象的です。ジェームス・テイラーのアコースティックギターは硬く鋭いサウンド、それに対してベースは太く丸いサウンドで、どちらもメロディックなフレーズが非常に印象的です。そっと叩かれるタムの豊かな音色も大変心地よいですね。

3曲目「イッツ・トゥー・レイト」のボーカルには非常に深いリバーブがかかっています。また、この曲のドラムは他の曲よりも高域のヌケが良く、特にハイハットやライドシンバルには繊細さが感じられます。が、バスドラムはとても力強いので、全体に弱々しい感じはしません。右チャンネルのエレキギターと左チャンネルのピアノがユニゾンでプレイするフレーズはサウンド的にも面白い効果が出ていると思います。

ゆったりとした曲調の4曲目「恋の家路」もドラムの力強さが際立っています。タムのフィルはとてもパワフルで、胴鳴りの音色が非常に心地よく響きます。アタックの強いパルシブなバスドラムに対してウッドベースは柔らかく音像の大きなサウンドで、このバランスが良い雰囲気を作っているように思います。アコースティックギターは終始控えめですね。

ドラム、ベース、コンガの他はすべてキャロル・キングの多重録音で演奏される5曲目「ビューティフル」の、右チャンネルから聞こえるチープな音色のキーボードが面白いですね。でも全体の雰囲気は決してチープではありません。

どっしりとしたゴスペル調の6曲目「幸福な人生」は、乾いたサウンドのテナーサックス・ソロが印象的です。また、この曲にはストリングス・カルテットがひっそりと聞こえてきますが、この地味な扱いは、続く7曲目(アナログレコードではB面1曲目)の「君の友だち」で大々的にフィーチャーされる事への布石なのでしょうか。

ということで、ジェームス・テイラーを筆頭に多くのカバーバージョンが存在する名曲中の名曲「君の友だち」です。ドラムレスとは思えないほどの力強さを感じさせるこの曲は、やはりキャロル・キング本人のダイナミックなボーカルとピアノが最大の聴き所でしょう。また、ウッドベースや先の弦楽四重奏も存在感のある素晴らしい演奏を聴かせてくれます。アコースティックギターはここでも終始控えめですね。

8曲目「地の果てまでも」は、よく転がる柔らかいサウンドのエレキピアノと、荒っぽくも歯切れの良いエレキギターのカッティングの対比が面白い曲です。この曲のドラムはなんだかくぐもったようなサウンドですが、スネアの音はけっこう好きです。

ピアノの低音が印象的な9曲目「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」では、アコースティックギターに存在感が出てきます(笑)。ウッドベースと共に低域を支えるバスドラムは非常に柔らかく優しいサウンドで、「恋の家路」とは対照的です。どちらもドラマーはラス・カンケルなのですが、曲によってまったく違うサウンドをプレイしてますね。また、この曲ではシンバルがまったく聞こえません。コーラスはジェームス・テイラーとジョニ・ミッチェルです。

明るく楽しげなシャッフル・ビートの10曲目「スマックウォーター・ジャック」は、「地の果てまでも」と同様にエレキピアノとエレキギターが大活躍していますが、それぞれの定位は逆転しています。歯切れの良いドラムサウンドは小気味良いですね。部分的にバリトンサックスがフィーチャーされていますが、その扱いはちょっと中途半端な気がします。入れるならもうちょっと出番があってもいいのでは?(笑)

極端なトレモロを伴ったエレキピアノが印象的な11曲目「つづれおり」は、キャロル・キングのひとり多重録音の楽曲です。左チャンネルから聞こえるのはチェレスタでしょうか。ここでもピアノは2台がオーバーダブされているようです。

ラスト12曲目の「ナチュラル・ウーマン」もオーバーダブされた2台のピアノが迫力たっぷりの演奏を聴かせてくれます。アコースティックピアノはフォルテシモではどうしても音が硬くなってしまいますが、そこにウッドベースの太く柔らかい低音が加わって非常に良い雰囲気で盛り上がり、最後はしっとりと幕を閉じる感じです。一番最後の、控えめながらも深く柔らかいピアノの低音まで、しっかりと味わいたいものです。


このアルバム『つづれおり』は、とてもシンプルな楽器編成になっています。が、それにもかかわらず音楽の幅の広さというか、全体の色彩感のようなものが非常に豊かなことに驚かされます。自然体で飾り気のない、贅肉をそぎ落としたような構成だからこそ、音楽の本質的な部分が表れてくるのでしょうね。そして、それこそが長い年月を経ても輝きを失わない「本物の音楽」と言えるのではないでしょうか。

最後はちょっと饒舌になりすぎたかな?(笑)


   


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COMMENT

おたべ

No title

さはんじさん、こんにちは。


つづれおり、大好きなアルバムです。
以前、記事を書きましたが、君の友達、
この曲を聴くと涙が出てきます。
全てが名曲ですね。

2012.01.20(Fri) 13:28 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>おたべさん
コメントありがとうございます。

「君の友だち」、優しさと力強さを兼ね備えた名曲ですね。
おたべさんはトワ・エ・モワの曲を対比(?)していましたが、私はサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」とイメージが似ているような気がするんですよね。「友だち」を歌った歌ではないですけど。

本当に名曲揃いの名盤だと思います(^^)

2012.01.20(Fri) 23:50 | URL | EDIT

PATTI

No title

さはんじさん、おはようございます

京都はv-279
こんな朝に、キャロル・キングの「綴れおり」は
特によく合います・・・

わたしたち女性ヴォーカリストにとってこのアルバムは
バイブルです。君の友達、ナチュラルウーマンは
歌えて当たり前、ジャズのスタンダードのようなもの。

I feel the earth moveは小学生の私には
衝撃でした。Venus や、Aquariusは、聴くというより
踊ることで一種のトランス状態に陥るため、
小学生にも体で理解できたけど、
上記の曲、It's Too Lateの2曲は
リズムを感じ、踊りたくはなるんだけど、
魂に訴えるものが、単調でないリズムパターン、
和音の4つ目に積まれた音の混じったメロディライン
のような、知的な楽しみからできている。
ロックは学校で習う歌とは違うってことを
初めて感じた曲でした。


踊る曲ではない、洋楽・・・
心で聴く洋楽との始めての出会いでした。


2012.01.21(Sat) 08:19 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

まさにスタンダードナンバー、ですよね。様々なジャンルのアーティストがこのアルバムの収録曲をカバーしていることからも、それがよくわかります。

良い音楽というのは、聴き手の心の中で色々なベクトルを持って無限に広がっていくものなんだなと、PATTIさんのコメントを読んでいて思いました。
「心で聴く」とはまさに至言ですね。(^^)v

2012.01.21(Sat) 23:41 | URL | EDIT

old basket boy

No title

こんばんは。はじめて書かせていただきます。
ポール・サイモン、キャロル・キングとつづけて取り上げておられるのがうれしいです。
若い頃、一緒にデモ・テープを作っていた二人が共にこんなにすごいアーティストになるなんて信じられない思いがします。
今度、S&Gの「ボクサー」を取り上げていただけませんでしょうか?
失礼しました。

2012.01.24(Tue) 22:01 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>old basket boyさん
コメントありがとうございます!

そうそう、ポール・サイモンとキャロル・キングは大学のクラスメイトで、当時二人で作ったデモテープをレコード会社に売り込んでいたらしいですね。
ここでレビュー記事が続いたのはたまたまですけど…(^^;

S&Gの「ボクサー」も非常に興味深いサウンドの楽曲ですから、是非取り上げてみたいと思います。
といってものろのろ更新の当ブログ(汗)、いつになるかはお約束できません。
すみませんが、気長にお待ちくださいね。

2012.01.25(Wed) 11:10 | URL | EDIT

PATTI

Boxer

さはんじさま。

コメントありがとうございました。
興奮状態からやっと抜け出して、
また、さはんじさんのレビューが読みたくて
覗きに来ました。

Old Basket Boyさんのコメを見て、
Boxer、そういえば、記事にしたなあと、
ゴソゴソ自分の過去を探ったら、あった、あった!

http://blog.livedoor.jp/pattialice22/archives/15996.html

リンクできるかしら?
曲の事には触れてませんが、縁のある曲という事で。

よかったらご覧ください。



2012.01.31(Tue) 11:58 | URL | EDIT

さはんじ

Re: Boxer

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

記事を拝見しました。「The Boxer」は思い出の曲ですね。
高校生の頃にキダ先生に認められるとは、すごいです!

しかし「The Boxer」のギターって結構難しいですよ。高校生の頃からこれが弾けるということは、PATTIさんのギターテクニックも相当なものだと見ました。

私が高校生の頃は、「The Boxer」のイントロが弾けるだけでヒーローでしたよ(^^)

2012.01.31(Tue) 23:09 | URL | EDIT

Lamo

これ・・・

フェイバリットアルバムです

2012.02.01(Wed) 11:32 | URL | EDIT

諸星輝々

No title

いつもありがとうございます。。

"Tapestly" 珠玉のような曲と歌詞が宝箱のように詰め込まれた
名盤ですよね。

これが世に出たのが71年

彼女が29歳のとき・・
デビューして13年目 アーティストとして最も熟成された時期に、たっぷりと時間を費やして創られたアルバム そんな印象です。

彼女のナイーブな感性が曲中にしっとりと滲み出てて・・後世に残る
アルバムの1枚だと感じます。

2012.02.01(Wed) 19:46 | URL | EDIT

さはんじ

Re: これ・・・

>Lamoさん
コメントありがとうございます。

Lamoさんもですか! 本当に幅広く愛されている名盤なんですね。

2012.02.01(Wed) 22:44 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>諸星輝々さん
コメントありがとうございます。

はああ、コメントをくださる皆さんの、このアルバムに対する熱い想いが溢れ出して止まらない、そんな感じになってきました(大げさ?)。
丁寧さと大胆さのバランスが絶妙で、私はそこに魅力を感じます。

2012.02.01(Wed) 22:59 | URL | EDIT

さはんじ

コメントについて

>Aliceさん
宣伝を目的としたコメントは承認できません。
申し訳ありませんが、コメントは削除させていただきました。

コメントやトラックバックについては、こちらをご覧ください。
http://soundside.blog3.fc2.com/blog-entry-69.html

2012.02.03(Fri) 13:40 | URL | EDIT

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