松尾由美「ブラック・エンジェル」

2012.02.23(Thu)


ブラック・エンジェル (創元推理文庫)ブラック・エンジェル (創元推理文庫)
(2002/05)
松尾 由美

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音に関する本とはちょっと違うかもしれませんが、今回は音楽を題材とした長編ミステリ小説、松尾由美の「ブラック・エンジェル」をご紹介します。ミステリとファンタジーと青春小説が渾然一体となったこの作品は、現実離れした設定の中、本格的な謎解きも楽しめるという不思議なテイストを持っています。

大学のクラスメイトで結成したサークル「マイナーロック研究会」のメンバーである俺は、アメリカのカリスマ・ロックバンド「テリブル・スタンダード」の幻のファーストアルバムを中古CD屋で手に入れた。仲間とそのCDを聴いていると突然黒い天使が現れて、なんとメンバーの一人である岡埜映子を殺してしまったのだ。警察は自殺として事件を処理したが…。

この作品には実在のロックミュージシャンや楽曲名が度々登場します。これらの知識があると物語の雰囲気がよりリアルに感じられるのではないでしょうか。もちろんなくても楽しめますけどね。

文章は非常に読みやすく、登場人物のキャラクターも興味深いものになっています。特に問題のCDの元の持ち主である外国人、ダグラス・サザーランドはロックファンのオヤジらしい(?)胡散臭さがあっていい感じです。また、物語が進むうちに次第に明らかになる、メンバーそれぞれが抱える事情や若さゆえの悩みなどはとても共感でき、青春小説としての評価が高いのも頷けます。

ではミステリとしてはどうか、という事になりますが、この作品ではCDから(ハトくらいの大きさの)黒い天使が現れて人を殺してしまうという、なんとも荒唐無稽な事件が冒頭に提示されます。私たち読者はまずこの化け物による殺人事件を事実として受け入れなければなりません。
このようなファンタジーやSFが融合したミステリは決して少なくないので、読み慣れた人には抵抗がないかもしれませんが、ここが読み進める上での大きなハードルになってしまう事もあるでしょうね。ただし現実離れした設定はこの黒い天使のくだりだけです。
犯人と犯行の手口はわかっているので、犯人である黒い天使は一体何なのか、そしてなぜ岡埜映子は殺されなければならなかったのか、これが物語を牽引する謎になります。

いわゆる「動機」を探るミステリなのですが、なにしろ化け物の犯行ですからその解決に納得できるかどうかは意見の分かれるところでしょう。そのあたりがミステリとして弱いなどと評される所以なのかもしれません。しかし私は全ての謎がきれいに収斂し解決するミステリならではの快感を得ることができました。

万人受けする作品ではないかもしれませんが、もしもこういった内容に興味があれば、ご一読を。


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2012.03.20(Tue) 23:46 | まとめwoネタ速suru

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