Diane Schuur『TALKIN' 'BOUT YOU』

2012.04.11(Wed)


トーキング・バウト・ユートーキング・バウト・ユー
(1992/03/21)
ダイアン・シューア

商品詳細を見る


今回は1988年に発表されたダイアン・シューアの第5作目となるアルバム『トーキン・アバウト・ユー』を取り上げてみたいと思います。ダイアン・シューアといえばジャズ・バラード、というイメージがあるかもしれませんが、最高のバックミュージシャンを従えてグルービーなR&Bを見事に歌い上げるこのアルバムも忘れないでほしいものです。
私はこのアルバムに収録されている「ルイジアナ・サンデイ・アフターヌーン」という曲がとにかく大好きで、私の好きなボーカル曲ベスト3には常にこの曲がランクインしています。それゆえ非常に思い入れの強いアルバムなのですが、なるべく冷静にレビューしていきたいと思います。

※アマゾンではアルバムタイトルの日本語表記が若干違っていますが、この記事ではCDのライナーノーツにある表記を採用しています。

1曲目の表題曲「トーキン・アバウト・ユー」は、リチャード・ティーのダイナミックなピアノとエドウィン・ホーキンス・シンガーズのコーラスを全面的にフィーチャーしたゴスペル・チューンです。スティーブ・ガッドの歯切れよくも重量感のあるスネアが気持ちいいですね。間奏のサックスソロ(ロニー・キューバーのバリトンサックスです)のバックに、なんだかザワザワとした雰囲気が感じ取れます。ライブ感を出すために入れたガヤ音(大勢の人の話し声?)なのかもしれませんが、ちょっと中途半端な気がします。サックスソロの後、コーラス隊がぐっと前面に出てきて、主役であるダイアン・シューアのシャウト風ボーカルは数メートル後ろに下がったかのような音像配置になります。声を張り上げれば張り上げるほど奥まっていく感じがして、ちょっと寂しい気がしますね。全体の音圧をキープするためには仕方がないのかもしれませんが、もうちょっとなんとかしてボーカルの迫力を出してほしかったです。後半はテンポアップして大いに盛り上がっていきますが、この部分は迫力たっぷりのサウンドで文句のつけようがありません。

2曲目の「ファニー(バット・アイ・スティル・ラヴ・ユー)」は1曲目と同じくレイ・チャールズのカバー曲です。今度はスロー・ブルースの曲調ですが、これまたリチャード・ティーの迫力あるピアノが印象的です。特に間奏のレンジ感たっぷりのソロは聴き応えがありますね。ゴージャスなストリングスがフィーチャーされていますが、それよりもダイアン・シューアのボーカルが持つブルース・フィーリングのほうが勝っています。

さてさて、3曲目は「ルイジアナ・サンデイ・アフターヌーン」です。押し出しの強いバスドラムとミュートの効いた太いベースが作り出すタイトなリズムに、アンニュイなフィーリングのピアノとフェイザーのたっぷりかかったフェンダー・ローズ、艶やかで歯切れの良いエレキギターで始まるこの曲は、気だるい日曜日の午後に恋人を想い、徐々に増長してくる高揚感といったものを、完璧な演奏と歌唱で見事に表現していると思います。ウィル・リーの図太いスラップ・ベースや、トム・スコットのサックスの音色も非常に素晴らしく、とにかく全てのパートが完璧に調和した名曲ではないでしょうか。
ああ、やっぱり冷静なレビューができませんね、この曲は(笑)

4曲目「フォー・ユア・ラヴ」はベースの存在感に注目です。音量も大きいのですが、ミディアムスローなテンポのバラードといった感じのこの曲調にスラッピング・ベースを乗せてくるウィル・リー恐るべし、と思うのは私だけでしょうか。
ベースの弦を親指の横腹で叩いて音を出すスラッピング(チョッパー)は、どちらかというと激しい曲調でよく聞かれる奏法なのですが、この曲ではその音色の太さとスラッピング独特の弾力感が実に良い雰囲気を出しています。そんな訳で私はどうもベースばかりに耳がいってしまうのですが(笑)、ゆったりとした表情豊かな艶っぽいボーカルと、それに絡むトム・スコットのテナーサックスも素晴らしいです、はい。

5曲目はちょっとクールな曲調の「ハーツ・テイク・タイム」です。この曲ではスティーブ・ガッドのカウベル、タム、スネアの細かなプレイと、そのリバーブ感の心地よさに注目したいですね。控えめなエレキギターのバッキングと、それに相対するように斬新なアコースティックギターのソロは、どちらもスティーブ・カーンです。時折聞こえるエレキギターのアームプレイが良いアクセントになっているように思います。

力強いテナーサックスで始まる6曲目「サムシン・リアル」はゴスペル風のバラードです。全体に深いリバーブがかかっていますが、オケに馴染んでいてあまり目立ちません。その分ブレイク部分では際立って聞こえるような気がしますね。控えめなオルガンのロングトーンがいかにもゴスペルといった雰囲気を作っています。

7曲目はゴキゲンなシャッフルビートのR&B「ハード・ドライヴィン・ママ2」です。こういった曲をノリノリで歌うダイアン・シューアもいいですね。この曲のボーカルにもたっぷりとリバーブがかかっています。オーバードライブさせたスティーブ・カーンのギターの音色もいい感じです。一番最後のタムは非常に深い音色で気持ちいいですね。

一転して8曲目はスローバラードの「ナッシン・イン・ザ・ワールド」です。イージーリスニング風のストリングスがフィーチャーされ、ポップスっぽい感じの曲に仕上がっています。

9曲目の「エイント・ザット・ラヴ」は、1曲目の「トーキン・アバウト・ユー」と同じくレイ・チャールズの曲で、雰囲気もよく似ています。こちらのほうが幾分リラックスした明るい曲調になっているでしょうか。テナーサックスはレニー・ピケットで、ユーモラスで多彩なプレイが印象的です。テナーサックスでこんなに高い音を出しますか(笑)。

10曲目はピアノのみをバックに歌う力強いバラード「ライフ・ゴーズ・オン」です。この曲のピアノはデイブ・グルーシンで、こちらもダイナミックレンジの広い演奏をしていますが、これまでのリチャード・ティーやミシェル・フォアマンのピアノに比べると優しく柔らかい音色です。高音はきらびやかで繊細な感じがしますね。

ラスト11曲目は「クライ・ミー・ア・リヴァー」です。柔らかく包み込むようなフェンダー・ローズの音色と、淡々とリズムを刻むドラム、時折スラッピングでアクセントを入れる重いベースをバックに、やや情感を抑えたボーカルがクールな雰囲気を作っています。この曲では何と言ってもスティーブ・カーンのギターに注目したいですね。ワウペダルやボリューム奏法などを駆使して多彩なプレイと音色を聴かせてくれます。ラストのリフレインではボーカルのリバーブが急に深くなって、ちょっとびっくりしてしまいました。

このアルバムは全体の曲順なども、押しては引き、引いては押す、といったメリハリのある構成になっていて聴き応えは充分です。最後はやや地味めに終わってしまうかな、という気もしますが、聴き終えた後には充実した満足感が残ると思います。
また、ここでは演奏の素晴らしさばかり記してしまいましたが、もちろんダイアン・シューアのボーカルも素晴らしいものです。余裕すら感じられるほどに安定感のある歌唱には、只々敬服するばかりです。


さて、この『トーキン・アバウト・ユー』は、ニューヨークのミュージシャンを中心としたやや泥くさいR&Bテイストのアルバムですが、これに対してお洒落なLAフュージョンに仕上がっているアルバムが、デイブ・グルーシンやリー・リトナー、エイブラハム・ラボリエル等がバックを務める『シューア・シング』(1985年発表)です。どちらもアプローチやコンセプトは似たアルバムだと思うのですが、そのサウンドによって大きくイメージが異なっています。聴き比べてみるのも面白いのではないでしょうか。





  よろしければランキング投票をお願いします→ 

COMMENT

にっこ

No title

さはんじさん、御無沙汰してます。

ダイアン・シューアさんのことは全然知りませんでした。

早速聞いてみましたが、声も素敵ですね。

明日時間があれば、じっくり聞いてみようかなと思います。

2012.04.12(Thu) 23:03 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>アルギンにっこさん
コメントありがとうございます。

ダイアン・シューアはジャズボーカリストですけど、様々なジャンルの曲を歌いこなすことのできる優れたシンガーだと思います。
アルバムによってカラーが違ったりするので、色々と聴いてみてください(^^)

2012.04.13(Fri) 21:59 | URL | EDIT

bunta52

こんにちわー
ぼくも彼女のこと知らなかったので、公式サイトを覗いてきました。彼女のサイトには、ファンの声を聞けるようにゲストBOOKが設けてあるのですね?^^
サービス精神のすばらしいシンガーだと思いました。 
誰でも自由に書き込みできるみたいですね~~♪

  http://www.dianeschuur.com/guestbook.php

2012.04.15(Sun) 11:18 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>bunta52さん
コメントありがとうございます。

私も公式サイトまではチェックしてませんでした。
こういった所にも人柄が表れるのですね。

2012.04.15(Sun) 22:58 | URL | EDIT

POST COMMENT


プロフィール

さはんじ

Author:さはんじ

FC2カウンター

ブログランキング参加中


にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村
ブログランキングならblogram

おきてがみ


足あとを残せます。

アーカイブ

 

検索フォーム

Amazon 特集情報



Google AdSense

まずは「知る」ことが大切


blogram

にほんブログ村ランキング

↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。