テレビの音声が変わる?

2012.05.18(Fri)

テレビCMの音量が大きくてびっくりしたことがありませんか。

「なぜテレビCMの音量は大きいのか」と訊かれる事がよくあります。
答えは簡単で、放送に規定された最大音量で作られているから、です。

普通、テレビ番組では、「人の話し声よりも大きな音」も表現しなければなりません。たとえば、爆発音とか雷鳴などが人の話し声よりも小さかったら全然迫力のない番組になってしまいますね。
そうすると相対的に他の音はそれよりも小さくなります。放送規定で音量の上限は決まっているので、平均音量はもっと低いところになる訳です。
ところがCMは15秒や30秒という短い時間なので、必要な音も少ないのです。音楽もナレーションも常に最大音量をキープすることができるという訳ですね。CMは視聴者にアピールすることを目的としているのだから、音量が大きいほどアピール度が増してスポンサーが喜ぶ、という理由もあります。

また、現代ではコンプレッサー/リミッターなどのエフェクター(特殊効果機器)の進歩によって、平均音量を必要以上に上げることも可能になっていて、CMに限らずテレビ音声はどんどん音量が大きくなる傾向にあります。

そこでとうとう対策がとられる事になりました。ちょっと専門的な話になってしまいますが、これまでのテレビ音声処理作業では、人の聴感に近い振れ方をする「VUメーター」で、音量が大きすぎないかを監視していました。これを番組全体の平均音量を監視することのできる「ラウドネスメーター」に切り替えることになったのです。平均音量が規定以上の番組やCMは放送できません。
これによって、番組やCMの音量が揃えられることになります。夜中に深夜映画を観ていて、CMになった途端に大きな音がしてびっくり、なんて事がなくなるかもしれません。
私たち視聴者にとっては歓迎すべき変更となるでしょうね。

このラウドネスメーターへの切り替えは、今年10月から実施されるようです。現在、テレビ番組の音声処理を行うスタジオ(MAスタジオといいます)では、切り替え作業に大わらわみたいです。メーターの新規導入に加えて、エンジニアによってはこれまでのミキシングスタイルも変えなければならない場合もあるでしょうから、その大変さは私たちの想像以上のものがあるのかもしれません。


さて、先ほど「エフェクターによって平均音量を上げる」と言いました。このブログの過去記事の中にも何度かそういった表現をした事があったと思いますが、これまで具体的な説明をしてきませんでした。やや専門的な話になりますが、ここできちんと説明をしてみたいと思います。

まずは人の声が必要です。処理されていない、録音したまんまの素材が欲しいのですが用意できないので…、仕方がない、私の声を使いましょう。本邦初公開、私の肉声です。
(左の三角形をクリックすると再生が始まります)







いやあ~、顔から火が出るほど恥ずかしいですね。前にも書きましたが、私は自分の声を聞くのが大嫌いですから、もうこれは羞恥プレイ以外の何物でもありません。

この恥ずかしい声を波形表示するとこうなります。

one_wave.gif

真ん中の色の濃いウネウネが音声を表しています。縦方向が音の大きさ、横方向が時間軸で、左から右へと時間が進んでいきます。
音声と波形表示のイメージが一致しないという方はこちらの動画をご覧ください。なんとなくイメージが掴めると思います。

音声を録音する時には、もうこれ以上大きな音は録音できません、という音量の上限が、機材によって必ず決められています。上限を超えると音が割れたり、雑音が発生したりします。
この音声波形には音量が突出して大きな部分がありますね。ここが上限を超えてしまうため、この恥ずかしい声はもうこれ以上音量を上げる事ができません。

そこでコンプレッサーなどのエフェクターが登場します。これらの機材は、ある一定以上の大きさの音が入力されたら、その時だけ音量を下げる、という働きをします。音声を圧縮する、などという表現をすることもあります。
突出して大きな部分だけ音量を下げたら、上限までに余裕ができます。その余裕の分だけ全体の音量を上げることが可能になる訳です。

wave_pict.gif

これで全体の平均音量が上がりました。

こうして圧縮された音声は、音量の大きい部分と小さい部分の差が小さいため、他の音と混ざっても埋もれにくくなり、聞きやすくなるという利点があります。

これを聴き比べてみるために、BGMを入れてテレビCM風の音声を作ってみました。
まずは圧縮なしの、録音したまんまのナレーションを使用しました。







次に圧縮したナレーションを使用した音声を聞いてみてください。







どうですか、恥ずかしいナレーションがぐっと前に出て、聞き取りやすくなっていますね。声に応じてミックスバランスを変えていますが、どちらのナレーションもイコライジング等の音質補正は行っていません。
全体の音量も大きくなっています。私の恥ずかしさの度合いも大きくなりました(笑)。
ちなみにどちらの音声も、部分的な最大音量は同じです。

もちろんこれは音楽(ボーカルなど)にも有効な整音作業のテクニックです。
ただし、過度なコンプレッション(圧縮)は演者の抑揚表現等のパフォーマンスを殺してしまう場合もあるので、エフェクトの使用には細心の注意が必要です。

余談ですが、テレビ番組(CMも)では、本編の前後に0.5秒の無音部分をつける必要があります。したがって15秒CMの場合、音声は14秒しか入れることができません。このテレビCM風の音声は、そこもきちんと踏まえて作ってあります。

そしてもうひとつ余談ですが、最後の英語部分は MacOSX Lion のテキスト読み上げ機能を使用しました。英文の読み上げは驚くほど精度が上がっていますね。
日本語も読み上げることができますが、そのクオリティはまだまだです。

Lionさんにお願いして、おまけにこんなCMも作ってみました(笑)








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COMMENT

諸星輝々

No title

さはんじさん こんばんわ*

さはんじさんの生声聴けて感動です♪^^

ところで最後のも、さはんじさんの声が処理されたものですか?


2012.05.19(Sat) 00:15 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>諸星輝々さん
コメントありがとうございます。

下手くそな素人ナレーションを披露して、本当にお恥ずかしい限りです(^^;

また言葉足らずだったようで、解りにくかったですね。すみません
最後のヘンテコなナレーションは、パソコンのテキスト読み上げ機能の声なのです。
私が読んだ原稿?をそのままMacに打ち込み、読ませました。
日本語の読み上げを選択したので、最後の「Welcome to sound side」も英文で打ち込んだにも関わらず、日本語読みのイントネーションだったのが面白かったです(^^)

2012.05.19(Sat) 06:27 | URL | EDIT

Ryoji Suzuki

すごいっす\(@o@)/

こんにちは♪

とてもスバラシイ記事、
執筆なさいまして、まぁ♪

すごいっす\(@o@)/
すごいっす\(@o@)/
すごいっす\(@o@)/

あと、
さはんじさん、
『声』、抜けのよい、
そしてとがってない、
優しい“良い声”ですね♪
さはんじさんの声の
周波数帯の、
すっきりしたまとまり方みたいの、
ボクは好みです。

ですのに、
自分としては、
どうしても、
自分の生声はハズかしいですね、
本当に不思議です。
(このことはサウンドサイドの以前の記事でもふれていますよね♪)

他人さまの声を聴いて、
恥ずかしい、なんてちっとも思わないのに。

そうでしたか、
ラウドネスメーターに移行ですか。
アナログ音声モノ出力の時代から、
これまで足早に
局も民生機も、
変化対応してきましたが、
ここにきて、
いくらか落ち着くとよいですね♪

少々お話がズレますが、
映画や野球中継なんかの、
サラウンド装置の臨場感は、
バーチャルではあっても、
最初は驚くほど飛び出て聴こえてくる、
そんな体験もあります、
でも、長時間だったり、
毎日だったりは何故か無理なんですよね♪
ボクの音響の師匠は、
『人は後ろからのスピーカ音は
本来は生理的に好めないんだよ』
と、以前教えてくださいました。

やはり、NHKのAMラジオ、
ポケットラジオクラスの
スピーカ出力の音が、
人の声は、人の耳には、
いや、ボクにとっては、
いちばんここちよい再生装置であることには、
今後も変わらなさそうです。
(NHK贔屓なわけではないです)

さはんじさん、
NHKクラスの
最高のハイレベルな機材で、
ナレーションされたら、
日本中で人気のでそうな『声』だと、
ボク、本気でおもうv-22
あはあは(^o^)♪

2012.05.19(Sat) 16:51 | URL | EDIT

さはんじ

Re: すごいっす\(@o@)/

>Ryoji Suzuki さん
コメントありがとうございます。

お褒めいただき、ありがとうございます。記事を書いた甲斐がありました(^^)

自分の声を聞くことには、いつまで経っても慣れませんねえ。もうほとんどコンプレックスと言っても良いくらい、イヤなもんです。

ラウドネスメーターへの移行は賛否両論あるみたいですが、この間お会いしたベテランのミキサーさんは「これでやっとVUメーターの呪縛から逃れられる」と喜んでおられました。しばらくは混乱することもあるでしょうが、きっと良い方向に落ち着くのではないかと思います。
てゆーか、Ryoji Suzuki さんも相当お詳しいですね(^^)。

サラウンド音声は確かにインパクトのあるシステムですが、おっしゃる通り長時間の試聴は疲れますね。これはやはり過度に演出されているんじゃないでしょうか。映画はもちろん、スポーツ中継などでも自然な音場とは言い難いような気がします。

そしてやはり人間(生物)は背後の音に本能的に恐怖を感じるのでしょうね。
ゴルゴ13じゃないけど(^^;

歌もののボーカルは、今では一音ずつ音程を補正することができますが、どんなにハイレベルな機材を使用しても、下手くそなナレーションをごまかすことはできません。
自分の声やしゃべり方にコンプレックスがあるだけに、ナレーターや声優さんって凄いなあと、憧れに近い尊敬の念をいつも感じています。

P.S.
長い事時間が経ってしまいましたが、mp3プレーヤー、やっと使わせていただきました。
ありがとうございました!


2012.05.19(Sat) 23:24 | URL | EDIT

フェイクAKE

No title

こんにちは v-298v-298v-298

ついに声アップしちゃいましたねっ
うちのイメージしてたさはんじさんの声とギャップがありすぎたらどうしようって思ったけど、イメージ通りだったんでホッとしてます

やっぱり二枚目な声してます!!

英語のとこの女性の声
「サウンドサイド」って言ってるじゃない?
どこから取ってきたんだろうって思ったらLionさんだったのね
もうびっくりですよ

ねっ
最後のヤツなんだけど
ちょっと関西弁はいってない?
うちね
声出して「サウンドサイド」って言ってみたのよ
まったく同じイントネーションだったからバカウケしちゃいました

2012.05.20(Sun) 15:38 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>フェイクAKEさん
コメントありがとうございます。

イメージ通りでしたか。…って、どんなイメージ?(^^;

Lionさんの英文読み上げは本当にびっくりするくらいハイクオリティです。
長文になるとやや不自然な部分が出てきますが、今回のようにサウンドロゴ的な短いセンテンスだと、知り合いの外人さんに読んでもらいました、と言われたら信じてしまいそうなくらいリアルですよね。

なんと、あのイントネーションは関西弁のものでしたか。
ボイスサンプルを取るときに、関西の人を選んだのでしょうかね。
そういえばMacのテキストスピーチは、それぞれの声に名前が付けられています。
今回の英文は「Samantha」さん、日本語の読み上げは「Kyoko」さんを使用しました。
(日本語のボイスはひとつしかないので、他の選択肢はないのですが)
「Kyoko」さんって、もしかして京都の「京子」さんなのかな?(笑)


2012.05.20(Sun) 22:21 | URL | EDIT

PATTI

No title

さはんじさん、こんにちわ!

このところ、携帯でばかり記事を読んでいたので、
やっと今日、さはんじさんの肉声を聴きました。

こうやって声が聴けるのっていいですね~
これから記事やコメを読むたび、この声が聴こえますよ!
嵐の相葉くん風の声ですね

あ、もう「PATTIさん」って、聞こえた(笑)

女性の日本語読み上げ、関西関東のイントネーションが入り混じって、関東出身の女優さんがドラマで関西弁使ってるみたいに聞こえて、笑っちゃいました(^.^)

CMで音が大きく感じるのは、その昔、
ドラマなどはモノラル、副音声、主音性の多重録音なのに対し、
コマーシャルはステレオ録音だから、音が大きく感じるんだ…
なんて、誰かに教わって、意味も分からないのにへぇ~って思った記憶があります。
あれはガセだったのか。

今日やっと、よーくわかりました。
ありがとございます、ジオ、いや、さ・は・ん・じ さん!
(わざとですよ、わざと!)

2012.05.25(Fri) 10:50 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

あ、言われてみれば、確かに相葉くん風の声かもしれません。
これまで誰からも言われたこと無かったですけど…。
でも、顔は似てません。 ←言うまでもないですか、そうですね(^^;

私の奥さんは大阪出身なんですが、テレビ番組等で関西以外の人が無理矢理関西弁を話しているのを聞くと、めちゃめちゃ機嫌が悪くなります。私なんかには分からないのですが、おかしなイントネーションは関西弁がバカにされているような気になるんですって。
最近では木村カエラちゃんがガムのCM(だったかな?)で、関西弁風にしゃべってましたが、あれにも激怒してました(^^;。

モノラル/ステレオの違いは、音量とは関係ないです。
近頃ではCM以外にもステレオの番組が増えていますから、わかりますよね。

2012.05.25(Fri) 23:05 | URL | EDIT

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