太田忠司「維納音匣の謎」

2012.07.04(Wed)


維納音匣(オルゴール)の謎 (祥伝社文庫)維納音匣(オルゴール)の謎 (祥伝社文庫)
(2001/09)
太田 忠司

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前回「さよならの殺人1980」のレビュー記事を書いている時に、音に関するミステリがもう1冊あった事を思い出しました。むしろこちらを先に取り上げるべきだったかもしれません。
ということで今回は、同じく太田忠司の長編本格ミステリ小説「維納音匣の謎」をご紹介したいと思います。なにやらややこしい漢字が使われていますが、このタイトルは「ウィーンオルゴールのなぞ」と読みます。
この作品は、作家探偵の霞田志郎と妹の千鶴が活躍する「霞田兄妹シリーズ」の4作目です。シリーズものは、やっぱりできれば1作目から順に読みたいところですが、いきなりこの作品から読んでも不都合は起きないでしょう。たぶん。

高級ホテルの大広間で催されたイベント「ウィーンの銘菓とモーツァルトの夕べ」。その最中にアクシデントで退席したピアニストの倉坂杏が、ホテルの客室で殺された。事件現場にはいくつもの不可解な点がある。ルームキーを持っていない被害者はなぜオートロックの部屋に入ることができたのか。絞殺死体に乗せられた薔薇の花束、そして遺体発見時に傍らで鳴り続けていたアンティークのオルゴールは何を意味するのか。
警察は、過去に数々の難事件を解決した実績から、イベントに参加していた霞田千鶴の兄、霞田志郎に捜査協力を依頼する。が、やがてオルゴールに関連する新たな殺人事件が…。


主人公で探偵役の霞田志郎は、普段はおっとりした性格ですが実は頭脳明晰、些細な事柄から物事の真相を導きだす能力に長けています。であるが故に、陰惨で悪意に満ちた殺人事件の捜査は、犯人だけでなく関係者の内面や過去さえも暴きたてる事に他ならないと充分に解っていて、自ら積極的に事件に関わろうとはしません。ところがミーハーで好奇心旺盛な妹の千鶴が度々事件に首を突っ込み、結局は巻き込まれてしまうというのが、この「霞田兄妹シリーズ」のお約束的なストーリーになっています。毎回、微妙に志郎の事件に取り組む姿勢が違っているような気もしますね。
この二人を中心とした登場人物のやりとりは軽妙で楽しく、まるでマンガのようにサクサクと読み進められますが、ストーリーは極めて論理的な正当派本格推理なのです。

さてこの作品はタイトルにある通り、オルゴールの歴史や構造等についての蘊蓄がたっぷりと語られています。構造や形状、材質などはもちろん、オルゴール本体の置き場所によっても音質が変化するなどという描写もあり、私なんぞはニヤリとさせられてしまいます。そしてこの音質の違いが犯人特定に至るプロセスに関わってくるのですが、ネタバレになるかもしれないのでこれ以上は言いませんよ(笑)。
個人的には音に関するもっとマニアックな部分が推理のキーポイントになったりすると嬉しいのですが、さすがにそんな事はありません。予備知識などまったく必要ないし、文章はとても読みやすいので、誰でも気軽に読むことができます、念のため。
しかし「天上の音楽」と例えられる、大型アンティーク・オルゴールのサウンドは是非聴いてみたいですねえ。

そして、この事件には製菓学校の関係者やケーキ店のパティシエが関わってくるため、ザッハトルテなどのウィーン菓子がたくさん登場します。ケーキ好きな人にもたまらない作品ですよ。
余談ですが、この作品には「パティシエ」という表記が出てきません。今では小学生でも使う言葉ですが、この作品が刊行された1994年当時は一般的でなかったのでしょうね。

ところで、この「霞田兄妹シリーズ」は全部で11冊ほどあるのですが、文庫化されたのはこの「維納音匣の謎」までの4冊のみです。この作品が文庫化された2001年からもう11年も、私は次の「巴里人形の謎」以降の文庫化を熱望しています。電車での移動中に本を読む文庫派の私としては切実なお願いなのですよ。
祥伝社さん、どうぞよろしくお願いします(笑)。





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COMMENT

おたべ

No title

こんにちは。

維納音匣(オルゴール)の謎。
オルゴール大好きな私にはツボてす(^^)
軽井沢にあるホール・オブ・ホールズという
アンティークオルゴール館に何度か遊びに
行きました。
実際に聴くとクリアな音と迫力にびっくりしますよ。
ぜひ読んでみたいです!

2012.07.04(Wed) 14:55 | URL | EDIT

PATTI

さはんじさん、こんにちわ!

いつ読書されるんだろうと思ってたら、通勤電車ですか。ご苦労様です(^ ^)

京都もオルゴールに縁があって、嵐山にオルゴール博物館があります
http://www.orgel-hall.com/

小学校では6年生になると、外装を工作して、1人1人オリジナルのオルゴールを作ります。

末っ子も6年生。工作得意なので今から楽しみなんです。

2012.07.04(Wed) 18:18 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>おたべさん
コメントありがとうございます。

おたべさんはアンティークオルゴールの音を聴いたことがあるのですね。
普段は気にしていませんでしたが、割と色々なところにオルゴール館があるようです。
機会があれば行って、じっくり聴いてみたいですね。

推理小説に抵抗が無くて、オルゴールとケーキが好きならば、
この本はお薦めですよ(^^)。

2012.07.04(Wed) 22:07 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

以前よりも電車に乗る機会が減ったので、読書量もずいぶん減ってしまいました。
私、家で読書がなかなかできないんですよ。なぜか読書の姿勢を長時間続けるのが苦手で…。
電車の中ならいくらでも読めるのに、ヘンですよね(^^;。

この作品は主人公の霞田兄妹が名古屋在住という設定なので、名古屋のオルゴール館と、それから嵐山のオルゴール博物館も登場しますよ。嵐山では事件の重要な手がかりを得ることになるんです。

息子さんの作るオルゴール、楽しみですね(^^)。

2012.07.04(Wed) 22:22 | URL | EDIT

プリンセス・ハナ

おはようございます (*^_^*) 

実家が嵐山の近くの嵯峨野というとこですからね
嵐山のオルゴール館にはしょっちゅう足を運んでいましたよ

オルゴール好きがこうじて
北海道のオルゴール館まで行っちゃったぐらいです
そこにしかないオルゴールというのもあるし
見てみたい
聴いてみたいと
トワイライトエクスプレスに乗ってはるばると…

この本はちょっと興味をもっちゃいましたね
ぜひ読んでみたいです

2012.07.05(Thu) 06:25 | URL | EDIT

PATTI

No title

さはんじさん、こちらでもちゃんとお礼言わなきゃ

ブログを始めてからずっと困っていた問題が、いともたやすく解決して、「スッ!」って感じです(笑)

ありがとうございました

2012.07.05(Thu) 16:20 | URL | EDIT

さはんじ

Re: おはようございます (*^_^*) 

>プリンセス・ハナさん
コメントありがとうございます。

をを、こちらにもオルゴールの好きな方がいらっしゃいました。
本のレビュー始まって以来の反応の良さに少し戸惑ってます(^^;

オルゴールを聴くために北海道ですか。
やっぱり一度聴くと逃れられないほどの魅力があるのでしょうね。

しかも憧れのトワイライトエクスプレス!!!
はあ〜、ため息しか出て来ません(^^;

この本の作者、太田忠司氏もオルゴールに魅せられたようで、
後にオルゴール修復師を主人公にした「レストア」という作品も書いています。
私もこちらは未読ですが、ぜひ読んでみたいですね。

2012.07.05(Thu) 17:20 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん

どういたしまして。問題が解決してよかったですね(^^)

検索してたまたま見つけたページを紹介しただけなので、
あまり感謝されると逆にこちらが恐縮してしまいます(^^;


2012.07.05(Thu) 17:23 | URL | EDIT

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