Al Jarreau『JARREAU』

2012.07.11(Wed)


JarreauJarreau
(2009/05/19)
Al Jarreau

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今回取り上げるのは1984年に発表されたアル・ジャロウのアルバム『ジャロウ』です。これは、ギタリスト、ジェイ・グレイドンのプロデュースによるポップス路線の「アル・ジャロウ三部作」と言われる3枚目のアルバムです。この三部作の中ではグラミー賞を受賞した『ブレイキン・アウェイ』が有名かもしれませんが、私はこの『ジャロウ』の1曲目「モーニン」が好きなのです。つまり選んだ理由はそれだけです(笑)。
原題はそのまま『JARREAU』です。これは「じゃれあう」と読んではいけません(笑)。
え、誰もそんな風には読まないだろうって? 

いやいや、そんな事も "あるじゃろう"。

お後がよろしいようで。 …じゃなくて、レビューを始めますよ〜(汗)。

オヤジギャグに続いて、いきなり余談ですが(今日はナンかヘンだゾ)、実はこの記事のカテゴリをPOPSにするかJAZZにするか迷いました。アル・ジャロウと言えばジャズ・ボーカリストにカテゴライズされるでしょうが、このアルバムはどう考えてもジャズではありません。悩んだ挙句、iTunes Store のカテゴリに倣ってJAZZ/FUSIONに分類しました。

アル・ジャロウはソフトで表現力豊かな歌声と、まるで楽器を演奏しているかのように多彩で卓越したボーカル・テクニックが有名です。ボイスパーカッションの元祖はこの人じゃないでしょうか。今で言うボイパは打楽器やリズムマシンの音色の模倣で、どれだけ本物に近いかが問われているように思いますが、アル・ジャロウのボイスパフォーマンスは高度なテクニックの上に確たるオリジナリティが感じられます。

しかしこのアルバム『ジャロウ』ではお得意のパフォーマンスを必要最低限に抑え、楽曲の良さとそれを最大限に引き出すボーカルの表現力を重視して、極上のAORアルバムに仕上げています。
その仕掛人であるプロデューサーのジェイ・グレイドンは、スティーリー・ダンのヒット曲「ペグ」で誰もが驚くような斬新かつ大迫力のギターソロをプレイし、一躍有名になったギタリストです。その音楽的才能やプロデュース能力は、この『ジャロウ』を聴いただけでも充分うかがい知ることができるでしょう。

アルバム全体としてはヌケの良い明るいサウンドといった印象で、中高音に比べて低音はややタイトな感じに聞こえます。それが全体にすっきり爽やかなアルバムのカラーに繋がっているのでしょう。感情たっぷりに歌うアル・ジャロウのボーカルはとてもソフトな印象ですが、よく聴くと非常に高い周波数が強調されているような、繊細な輪郭が感じられるサウンドです。

さて1曲目の「モーニン」です。ジャズ好きならば「モーニン」といえばアート・ブレイキーの曲を思い出すでしょうが、あちらは「Moanin'」、こちらは「Mornin'」です。たった一文字の違いですが、「嘆き」と「朝」ですからその曲調は正反対ですね。そのタイトル通り非常に爽やかな曲で、こんなに爽やかな曲が他にあるだろうか、と思えるほど爽やかな曲です。何回言うねん(笑)。
美しいキーボードのグリスダウンから始まるこの曲は、タイトで弾力の感じられるドラムと明るい音色のシンセサイザーやフェンダーローズ、それにジェイ・グレイドンの弾んだ歯切れの良いカッティングが印象的です。ベースはミュートが効いてやや控えめですが着実に楽曲のボトムを支えていますね。ミュージシャンはそれぞれジェフ・ポーカロ、デビッド・フォスター、エイブラハム・ラボリエルといった超一流どころですから悪かろうはずがありません。間奏前のボーカルのロングトーンは、徐々に深めのロングリバーブが乗ってきて、ボーカルの消え際では少し大げさなくらいになっていますが、続くフルートのような音色のシンセサイザーソロにうまく繋がっていきます。
いつの間にか入ってきて曲を大きく盛り上げるストリングスも美しく広がりのあるナイスサウンドですし、終盤の転調も自然で非常に気持ちの良いアレンジだと思います。

2曲目は明るく元気の良いホーンセクションが印象的な「ブギー・ダウン」です。トランペットとトロンボーンという編成のホーンセクションは伸びやかでかつ歯切れも良く、変に高域が強調されていないのでとても聴きやすいサウンドです。相変わらず見事なボーカルは、要所要所にゴスペル風のコーラスを伴い、楽しくノリの良い雰囲気を作り上げていますね。間奏部分では得意のアドリブ・スキャットも披露していますし、2コーラス目の後のシンセサイザーのフレーズとユニゾンするボーカルもいい感じです。
この曲は、ホーンセクションとドラム、そしてパーカッション以外はすべてシンセサイザーによる演奏で、私はその音色にやや物足りなさを感じてしまいます。ドラムはスティーブ・ガッドなのですが、残念ながらハンドクラップ風のパーカッションが強烈すぎてあまりガッドらしさが感じらません。ハイハットも全体に控えめで、スネアやタムのフィル部分でガッドがひょっこり顔を出すような印象ですね。私は昔、ライブで大迫力の「ブギー・ダウン」を体感してしまったので、このスタジオバージョンの楽器編成が不満でなりません。楽曲自体は素晴らしいので、非常に残念です。

3曲目「君故に」は、サブタイトルにもなっている「Nitakungodea Milele」というフレーズが印象的に繰り返されるミディアムテンポの楽曲です。これはスワヒリ語のようですね。重たい音色のスネアと枯れたようなサウンドのベースに乗って、フェンダーローズがマイルドで少し切ない感じに響いて聞こえます。バッキングに徹しているギターもよく聴くと多彩なフレーズをプレイしています。きらびやかなストリングスはシンセサイザーでしょう。少し奥まったような非常に柔らかいサウンドのフリューゲルホルンがいい感じです。

4曲目は、6分30秒と収録曲中で一番長い「セイヴ・ミー」です。フェンダーローズとシンセサイザーをバックにしっとりと歌い上げるイントロ部分から、リズム隊の入ってくる力強い展開がとてもいい感じです。スティーブ・ガッドのどっしりとした豊かな音色のスネアと、ジェイ・グレイドンのカッティングが印象的ですが、時々聞こえてくるベースのオブリガード的なフレーズも聞き逃したくないポイントです。サビからはもう一度リズムパターンが展開して、今度はブラスセクションも入ってきます。2コーラスめに入る直前、リバースシンバルが左から右へ移動するサウンド・エフェクトとそれに続くブラスのパワフルなアクセントも効果的ですね。
フェンダーローズの低音のフレーズとユニゾンするローボイスのボーカルはダブリングしているようです。オーバーダブした自らの声と掛け合いになるサビからラストまでの盛り上がりもいいですね。

ライドシンバルのロールから始まる5曲目「ステップ・バイ・ステップ」のドラムは、今度はジェフ・ポーカロです。ガッドよりもスネアのヌケが良く明るいサウンドですね。力強いエレピとざらついたような音色のエレキギターが特徴的な曲です。出だしは明るくキュートな感じですが、途中からややマイナーっぽく展開していき、サビからはブラスセクションが入り力強い曲調へと変わっていきます。このあたりの変化をアル・ジャロウのボーカルは実に自然に表現していますね。さすがです。

6曲目「ブラック・アンド・ブルース」は、その名の通りブルージーなナンバーです。ギターのカッティングと複数のキーボードがユニゾンしているのでしょうか、独特のリフのようなフレーズが印象的です。硬めのアコースティックピアノの低音が力強く鳴っていますね。2コーラスめからボーカルに絡んでくるハーモニカ風のシンセサイザーが、ちょっとニセモノっぽい(笑)ブルースの雰囲気を出しています。間奏部分ではツインギターのパワフルかつなめらかなフレーズとボーカルの掛け合いになり、続く3コーラスめ(?)はフェイク気味のボーカルにエレキギターとハーモニカ風シンセが絡んできます。ラストは冒頭と同じコーラスのリフレインでフェードアウトします。 

7曲目の「トラブル・イン・パラダイス」のドラムは、あまり胴鳴りの感じられない硬めのサウンドです。負けじとベースも硬めの音色ですね。イントロとサビではハンドクラップ風パーカッションとキーボードのリフが、その他の部分ではこれまた硬めのアコースティックピアノのサウンドが印象的です。多彩な奏法でバックを固めるエレキギターもいい感じで、特にハーモニクスがとても効果的に使われていますね。全体に硬めのサウンドが多い中、ソフトなフリューゲルホルンが実に爽やかな雰囲気を作っています。

8曲目「ノット・ライク・ディス」は、フェンダーローズとストリングスセクションのみをバックにしっとりと歌い上げるバラードです。タッチの強弱によって硬い音から柔らかい音まで幅広い表現をする、フェンダーローズのポテンシャルを見せつけられたような気がします。こんなにも多彩なサウンドの出せる楽器なんですね。2コーラスめから入ってくる美しいストリングスはボーカルとともに楽曲を大きく盛り上げ、しっとりと終わります。幅広いダイナミックレンジと、完璧にコントロールされたアル・ジャロウのボーカルをじっくり味わいたい1曲です。

力強いアコースティックピアノと元気なブラスセクションのイントロから、爽やかなボーカルへと続くラスト9曲目は「愛を待ちわびて」です。ちょっと位相ずれしたようなアコースティックピアノの独特なサウンドが特徴的です。この曲でもサビからハンドクラップ風パーカッションが鳴っていますね。これはこの頃の流行りだったのかもしれません。ハイトーンのストリングスは生っぽく聞こえますが、よく聴くとポルタメントのかかったシンセサイザーだとわかります。元気で爽やかなポップスといった雰囲気のアルバムそのままの印象を残してこの曲はフェードアウトしていきます。


明るく爽やかで耳障りが良く、さらに良質な楽曲の揃ったこの『ジャロウ』は、爽やかなBGMとして聞き流すのもよし、じっくりと聴き込むのもよしと、幅広い器を持ったアルバムです。アル・ジャロウのボーカルはややクセがあって好みが分かれてしまうかもしれませんが、食わず嫌いは勿体ないと思いますよ。
特にこれからの季節にピッタリはまるアルバムだと思います。
梅雨の合間の、もしくは梅雨明けの青空を見上げながら聴くと、きっと最高です。

ジャケット写真はちょっと暑苦しい感じがしますけどね(笑)。



   


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COMMENT

浦太

No title

「じゃれあう」に座布団3枚!!

2012.07.12(Thu) 00:19 | URL | EDIT

PATTI

No title

さはんじさん、こんばんわ(^^)

『ある・じゃれあう』
『そんなことも あるじゃろう』

ご苦労様・・・

さて、

これは若い頃聴いてないアルバムです
でも、ジェイ・グレイドンと聞いちゃ、
黙ってらんないよ。
彼のアレンジはあの頃本当におしゃれで
優れていたから、バンドでカバーしたときは
鳥肌が経ちました。
マントラバージョンの
Nothing You Can Do About Itです。
他にもやったはずだけど、覚えてなくて・・・

playersも凄いですね。
キーボードの早弾きリフなんか、かっこいい!
この人は爽やかですものね。
きっと真面目なんだろうな~と思います。

ブギーダウンもあったあった
YouTube
スキャットもいいわ~
でも、この人って、ライヴ人ではないでしょうか。

アドリブでインスパイアしたりされたりで
ステージマジックが繰り広げられるんだろうな~!

2012.07.12(Thu) 00:28 | URL | EDIT

フェイクAKE

おはようございます (*^_^*) 

もしかして
さはんじさんってこの頃オヤジ化してます?

この「モーニン」って曲を聴いてね
以前どっかで聴いた事があると思ったの
それで
昨日ベッドの中でずっと考えててね
あっ!!
て思い出して
朝一でその似てると思った曲を聴いてみたんだけど全然違う曲だったのよ

昔NHKでマイケル・J・フォックス主演の欧米のドラマやってたんだけど、そのOPがこんな感じの曲だったの
ファミリータイズってドラマなんだけどね

ファミリータイズの方を聴いてモーニンに似てるとは思わないんだけど、モーニンを聴くとファミリータイズの曲に似てると思うのよね

なんかこれってちょっと不思議と思いました

2012.07.12(Thu) 06:07 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>浦太さん
コメントありがとうございます。

座布団3枚、いただきました〜!

でも、女性陣からの反応はあまり芳しくないですね。
やっぱりおやぢは理解されない?(^^;

2012.07.12(Thu) 10:16 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

・・・座布団とられた感じがしないでもありませんねえ(^^;

アル・ジャロウはやっぱりライブパフォーマンスの人ですよね。
ライブの度に毎回違った演奏になるらしいです。

私がコンサートで観た「ブギー・ダウン」
あれ、たしかテレビ中継が入ってたな〜と思って探したら、ありました。
私の記憶が確かなら、1989年の新宿厚生年金会館、私これ最前列で観てました。
画質悪いけど、スタジオバージョンより数段いいでしょ(^^)
http://www.youtube.com/watch?v=5SuKcGEZ9LU

2012.07.12(Thu) 10:32 | URL | EDIT

さはんじ

Re: おはようございます (*^_^*) 

>フェイクAKEさん
コメントありがとうございます。

え〜と、この頃じゃなくて、元々・・・ごにょごにょ…

ファミリータイズ、懐かしいですね。
今は亡き富山敬さんが吹き替えてたお父さんが好きでした。

そう言われて聞いてみると、確かに曲調も、エレキピアノやギターの感じも似てますね。
ファミリータイズのOPテーマのほうがちょっとメロウな感じかな〜。
ミュージシャンまではわからなかったのですが、作曲はサックス奏者のトム・スコットでした。


2012.07.12(Thu) 10:42 | URL | EDIT

PATTI

No title

わぁ、アルジャロー、やっぱりすごいですね

ラップまでやってる~

ダンスはおやじそのものだけど

そのてんはあたしもあまりかあわらないや!

声の種類を数えたら、すごい数になりそう。

この人の歌は何度も何度も楽しめますね。

聞き流すなんて、ありえないわ。

ポップに深い。粋って感じ(^^)

2012.07.12(Thu) 11:43 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん

アル・ジャロウ、足長いですよね(そこかいっ)。
んで、足高く上がりますよね(^^;

ポップスだけじゃなくテイクファイブや、チックコリアのスペインなんかも歌ってます。
こちらも凄いので、機会があったら聞いてみてくださいね〜。

2012.07.12(Thu) 15:46 | URL | EDIT

PATTI

No title

さはんじさま。

本日は大変お世話になりました。
明日にでも取り掛かりますので、お楽しみに。
でも、歌は、あの日、声の調子が人生で一番悪かったから
遺体の我慢して歌ったのでした。

さて。さはんじさん。
このわたくしが、アル・ジャロウのスペインを知らないなんてこと、
ある・じゃろうか?オヤジ返し!

彼のスペインは絶品ですもの。丸コピーしました。
今も、スキャットまで完璧に歌えますよん。
あの頃のジャズ・フュージョン歌手はみんなそうですもの。

話は飛び火しますが、
この、丸々コピーっていうのが大事で、
ステージでやってはオリジナリティないけど、
いろんな歌いまわしを理屈抜きに自分のものに
できるから、絶対今の子も、やるべきだと思います。
たくさんコピーしたものこそ、
オリジナリティあふれる歌が歌えるようになると
私は信じています。
(でも~、アルジャロウはあの伝説のスキャットと
全く同じものを2度とやらないでしょうね。
ライヴの人だもん。)
ほかの楽器もそうですよね。
密かな楽しみとして、サックスをコピーしたり、
胡弓や、バイオリンの弓の返しあたりの音を真似したり・・・

ただのオタクですけど。楽しいもん、おとまね!

アル・ジャロウのスタンダードは聞いたことないので、
ボチボチ聞いていきたいと思います。
語りすぎてしまいました、ゴメンなさ~い

2012.07.12(Thu) 22:45 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん

どういたしまして。簡単に済むと思ってたのですが、私のほうに落ち度があったようで
ご心配をかけてしまいましたね。失礼いたしました。

…またツッコんでいいですか? 遺体の我慢て・・・(^^;

>このわたくしが、アル・ジャロウのスペインを知らないなんてこと、
>ある・じゃろうか?オヤジ返し!

ぐわっ、おみそれしました〜。
こういうのをアジアじゃ「仏陀に教えを説く」というんだよ…(By 紅の豚)
ですね(^^;

>たくさんコピーしたものこそ、
>オリジナリティあふれる歌が歌えるようになると

そうですね。良いものをたくさん食べてこそ、自らの血となり肉となるのでしょう。
それぞれの楽器には様々な特長があるので、それを声で真似ることは貴重な経験になると思います。
アル・ジャロウの唱法は、まさにそのお手本みたいなものですね。

と、何の経験もないのにエラそうな事を言う私なのでした(^^;

2012.07.13(Fri) 00:01 | URL | EDIT

PATTI

No title

遺体の→痛いの

オヤジよりひどいねv-356

2012.07.13(Fri) 14:34 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>PATTIさん

楽しいからオッケーです(^^)

2012.07.13(Fri) 17:27 | URL | EDIT

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2012.07.19(Thu) 02:07 | | EDIT

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