スキマスイッチ『空創クリップ』

2012.08.07(Tue)


空創クリップ空創クリップ
(2005/07/20)
スキマスイッチ

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ロンドンオリンピックもいよいよ終盤戦に突入です。メダルの数や色も気になりますが、各国の代表として世界の大舞台で全力を尽くす選手たちに、最後まで熱い声援を贈りたいものです。
ということで、今回のCDレビューは2005年に発表されたスキマスイッチのセカンドアルバム『空創クリップ』を取り上げてみました。このアルバムには、大ヒット曲「全力少年」や「冬の口笛」、「雨待ち風」といったシングルヒット曲が収録されています。
…まさかの「全力つながり」、ちょっと強引でしたかね(笑)。

初めて「全力少年」を聞いたとき、いや、正確には自分で歌ってみたとき、大きな衝撃を受けました。ポップでキャッチーな印象のサビのメロディーは、鼻歌程度でも歌ってみると、その飛び跳ね方が非常に複雑で難しい事に気付かされます。こんな不自然なメロディーをキャッチーに聞かせてしまうとは、私だけの印象かもしれませんが、こりゃすごいと率直に驚いた訳です。これは歌詞ののせ方による所も大きいのではないかと思いました。バラードに定評のあるスキマスイッチですが、私は特にアップテンポな曲での、リズミカルな歌詞とメロディのバランス感覚に強烈なセンスを感じてしまいます。
これまで多くのアーティストが、ロックのリズムに日本語をいかに乗せるかを試行錯誤してきましたが、そのひとつの形がスキマスイッチ(と大橋卓弥のソロ)の楽曲に現れているのではないかと思います。メロディーと歌詞がうまく馴染んだ楽曲は、「音」としても大変心地良いと言えるのではないでしょうか。

さて、このアルバム『空創クリップ』ですが、非常にバラエティに富んだ楽曲が揃っていて、それぞれのアレンジも多彩です。しかしスキマスイッチの世界観はきっちり統一されているように思います。編曲はスキマスイッチ自らが行っていますが、そちらの才能も大したものですね。一聴するとシンプルなアレンジに感じますが、よく聴くと多くの音が効果的に詰め込まれている事に驚かされます。基本的にはくっきりとしたボーカルと、柔らかめでどっしりと落ち着いた、広がりのあるバッキング、という印象ですが、それぞれのサウンドは近い音と遠い音のコントラストがはっきりして、奥行きが感じられます。音圧も充分に感じられ、まあ一言で言えば「良い音してます」ですね。
日本の録音技術は世界でも高水準と言われていますが、特に2000年代くらいからのサウンドは本当に素晴らしいと思います。あまり良い音してるとサウンドレビューもやりにくくなってしまいますが(笑)、音質と音楽の質は別物ですから、今後もぜひ個性的なアーティストが独自のサウンドで私たちを楽しませ、驚かせてほしいですね。

…脱線してしまいました。いつもの様に1曲ずつ聴いていきましょう。

まず1曲目「君に告げる」は、このアルバムのイントロダクションといった感じの短い曲です。まず息を大きく吸い込むブレスの音から、いきなりボーカルとアコースティックギターのアルペジオが始まります。アルバム全体の傾向でもありますが、ボーカルにはほとんどリバーブが感じられず、至近距離で歌っているような生々しいサウンドです。アコギの方はこれまたリアルな音で、爪と弦が当たる感じまで聴き取れそうです。続いて入ってくるピアノは非常に柔らかく控えめなサウンドで、ビビッドな音場をふっと和ませてくれますね。その後聞こえてくるストリングスは最後のロングトーンがクレッシェンドしていき、緊張感を高めた所で、適度なリバーブを残してふっと終わります。

この残響が途切れた所でおもむろに2曲目「全力少年」のイントロが始まります。よくある手法と言われればそうかもしれませんが、この繋がりは実に効果的で王道と言えるでしょう。私は大好きです。
イントロのピアノは比較的柔らかめで豊かなサウンドです。そこにシンバルとストリングスが入ってきますが、この細かなシンバルワークは是非とも聞き逃したくないポイントですよ。リズムが入るとストリングスもブラスセクションも全開で、サウンドがうわっと大きく広がります。多くの音が鳴っているためかドラムは控えめに聞こえますが、要所要所でパシーッとシンコペートするハイハットのアクセントが効いています。派手なストリングスやブラスに隠れて、地味にリズム的なユニゾンをプレイするピアノとアコギの作り出すサウンドも面白いですし、タンバリンやカスタネットといった多彩なパーカッション、これでもかとかき鳴らされるハープなど、サウンド的にも聴き所満載の名曲です。

3曲目は可愛らしい男心(笑)を歌ったラブソング「水色のスカート」です。太いベースと押し出しの強いバスドラムに、柔らかいピアノと細いアコギ、そして室内楽風のストリングスが印象的です。ハイハットはくっきりしているものの、ドラムは全体的にちょっとこもったような重いサウンドですね。オルガンの音色がいい味を出しています。

4曲目はこのアルバムの前年に発売されたシングル曲「冬の口笛」です。この曲もドラムのサウンドはタイトで地味な感じですね。よく動くベースのフレーズと、ハイハットの音色に近いようなアコギのコードストロークが独特のスピード感を出しています。しかし何と言ってもこの曲は、広がり、厚み共に充分で冬の雰囲気も感じられる、ストリングスのアレンジが決め手になっていると言って良いでしょう。
エンディングでは意味ありげに曲調が変わりますが、これは歌詞に登場する二人の行く末を暗示しているのでしょうか。口笛ならぬ大橋卓弥のハーモニカが、出しゃばり過ぎることなくフィーチャーされています。

5曲目は皮肉な歌詞が意外なオチへと展開するユニークな佳曲「フィクション」です。この曲もメロディーと歌詞がうまく融合していますね。乾いた音色の力強いアコースティックギターが印象的で、私は大好きなサウンドです。左チャンネルのエレキギターや太いベースの多彩なフレーズも聴き所ですよ。キメのアクセントやブレイクもセンス良く決まっていて、全体的にシャープなバンドサウンドといった印象です。パラパラとイマイチ揃わないハンドクラップも面白いし、唐突にアコギだけが残って終わるエンディングもいい感じですね。
余談ですが、私としては、わざわざタイトルで「フィクション」と謳わなくてもよかったのでは、とも思います。この歌詞を聞いて実話だとは思わないでしょ?(笑)

6曲目の「さみしくとも明日を待つ」は、アレンジと演奏でGRAPEVINE(グレイプバイン)とコラボレートしたバラード曲です。他の曲と比べてドラムのサウンドにぐっと存在感が出ていますね。スネアドラムはヌケが良く、ヘッドや胴の鳴り、響き線の音までリアルに聞こえてきます。ベースは重心が低くふわっとした音像の大きなサウンドで、力強いバスドラムと対照的です。後半はボーカルも含めてリバーブを多用した壮大な音場が展開します。ハードなディストーションギターが活躍しますが、前面に出てくる事なく、全体のサウンドを盛り上げるような扱いになっていますね。ノイジーにかき鳴らしたギターの空間系エフェクト成分だけを使用したようなサウンドが、前衛的かつ幻想的な雰囲気作りに一役買っています。最後にイントロのピアノに戻るのも、いい感じです。

7曲目は、w-inds.に提供した「キレイだ」のセルフカバー・バージョンです。ダンサブルなアレンジのw-inds.バージョンとはまったく違うロックなバンドサウンドになっていますね。タイトルとは正反対の、ダーティーなエレキギターのイントロにニヤリとさせられます。ノリの良いバンド・アンサンブルが心地良いナンバーで、ザラついたリード系シンセサイザーの音もバンドサウンドから浮き立つことなく、うまく馴染んでいます。スピード感のあるボーカルも見事で、ラストのスキャットもなかなかのもんです。

8曲目「かけら ほのか」は、重たいピアノのイントロにドキッとしますが、木管楽器群とブラシを使ったマーチ風のスネアドラムがノスタルジックな雰囲気を醸し出す可愛らしい曲です。太く柔らかいサウンドのフレットレスベースが、嫌味にならない程度に動いて良い雰囲気を作っていますね。エンディングの気だるく自信なさげな(笑)コーラスも好きです。

9曲目はなんとギターデュオの山弦とのコラボレート曲「目が覚めて」です。他の曲にはギタリストとして佐橋佳幸が参加しているものもありますが、この曲はしっかり「山弦」としてクレジットされています。左右に振り分けられた2本のアコースティックギターは、もう完全に山弦の世界を作り出していて、そこに常田真太郎の柔らかいピアノの音が違和感なく溶け込んでいるといった印象です。1コーラス目の終わりから入ってくるパーカッションと、右側に定位した(佐橋氏の)アコギによるミュートされたカッティング(?)の息もぴったりですね。切ない歌詞を優しい音色で包み込むような、表情豊かに響く山弦のギターは本当に素晴らしいです。

10曲目は一転、明るく元気でキャッチーな「飲みに来ないか」です。まろやかなブラスセクションは、クレジットによるとトロンボーンとフリューゲルホルンのようです。こういった楽器のチョイスにもセンスを感じますね。賑やかなクランチっぽいエレキギターが全体の雰囲気を決定していますが、奥の方に聞こえるオルガンのサウンドが実にいい感じです。複雑な男心をユーモラスに歌った歌詞は、これ、なかなか的を射た深い歌詞なのかもしれませんヨ。

ラスト11曲目はシングルヒット曲「雨待ち風」です。このアルバムバージョンではピアノとストリングスによる美しい前奏が追加され、前曲「飲みに来ないか」の余韻を完全に断ち切っているように思います。重く響くピアノをバックに、哀しい歌詞をほぼノンエフェクトのボーカルが生々しく歌う導入部は、聴き手の心をぐっと掴んでしまいます。サビからはリズムやストリングスが入り一気に盛り上がりますが、最後の1行だけふっと音が薄くなるというアクセントの効いたアレンジになっています。この曲はスネアドラムの音が特徴的で、少しボコボコとしたような、力強くも丸いサウンドです(我ながら不思議な表現だなあ)。エンディングは少し明るい曲調になり、このまま終わるかと思いきや、最後はまた重いピアノだけが残って終わります。これも余韻のある、何か含みを持ったアレンジに感じますね。良い曲です。


ということで、全曲レビューが終わり、締めのコメントを書くのがいつものパターンなんですが、それらしい事を最初に全部書いてしまったので、実はとても困っています(冷汗)。行き当たりばったりで記事を書いているのがバレバレですね。今後はもっと構成を考えて書かなくてはいけないと、はい、教訓になりました、という事でこの記事を終わりたいと思います(苦笑)。

しかし、最近のJ-POPのバンド名は不思議なものが多いですね。
(なんと無理矢理な締めコメント!)


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COMMENT

PATTI

さはんじさん、どもです(まねしたよ!)

スキマスイッチは、全力少年しか知らないです。その上、タイトルが全力少年だっていうこと、今日、こちらで初めて知りました。
確かにメロディがすごい動き方しますが、ちゃんと、コードの大事な音を踏んでるから、違和感ないんですよね。このサビのインパクトはすごい。Aメロがどんなだったか、忘れちゃうほどすごい!だから売れるんですね。

うちの娘の部屋の照明のスイッチは、クローゼットが迫る壁のスキマスイッチです(笑)

ところで、ブログ通信簿は、やはり、同じエラーが出て、使えません。ping貼り直したり、いろいろやってみたんですけど、ダメでした。
今日これからもう一度やってみますが、多分、ダメでしょう・・・

2012.08.07(Tue) 19:04 | URL | EDIT

プリンセス・ハナ

こんばんは
うちもね
スキマスイッチは大好きなの

「全力少年」はもちろんのことだけど
一番好きなのは「ガラナ」かな?

ずっとね
「ガラナ」アップしたくてチャンス狙ってたんだけど
なかなか機会がなくてね
そのうちアップするかもです

それにしても
さはんじさんがスキマスイッチを知ってるとは…
以外ですね~
彼らのこの軽快なリズムはまさにうちの分野でしょ?

2012.08.07(Tue) 20:11 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
どもども、コメントありがとうございます。

「全力少年」のサビ、すごいですよね。ちょっと聞いただけでは覚えられなくて、
悔しいので(?)一生懸命音とって、歌えるようになりました(^^;
滅多に行かないけど、カラオケで歌ったこともあります、ははは。

スキマスイッチは歌詞もヒネリが効いてて面白いですよ。
オヤジギャグと紙一重じゃないの?ってな語呂合わせもよくあります。

PATTIさんもお部屋のスキマスイッチで手をヒネッたりしないようにお気をつけください。

通信簿、おかしいですね。私は問題なくできるんですが。
Livedoor blog はpingの送信数が10個までに制限されているそうですが、
それが原因ってことはないですかねえ。

2012.08.07(Tue) 22:14 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>プリンセス・ハナさん
コメントありがとうございます。

「ガラナ」も歌詞がリズムにばっちりハマッた、スキマスイッチらしい曲ですね。
「全力少年」よりもパワフルなところが、ハナさん好みなのでしょうか。

スキマスイッチだってチャットモンチーだって知ってますよ〜。
(なぜチャットモンチー?(^^;)

2012.08.07(Tue) 22:27 | URL | EDIT

PATTI

音、取れた!

さはんじさん、改めてYouTubeで曲を聴きながらレビュー読んでみました。
いつもしてみて思うのですが、レビュー書くの、ものすごく時間かかるんじゃないですか?私、聞いてるだけでも書いてあることちゃんと確認しながらだと、4曲で音を上げました。上がってない曲もありますが、後日また続きをトライしますね。

カラオケで「全力少年」歌うさはんじさんを 前に聞いた相葉君似の声で想像してみたら・・・(「相葉君似」の変換ミス、おっそろしいことになりましたが、幸い気づいたので事なきを得ましたm( __ __ )m)
ちょっと、キー的に苦しい?その、ギリギリのところがうまくいく日はすごくいい感じに歌えるでしょうね。
サビ頭
ドラドソ↑ファミド ソ↓・ファ↓ミ・シ↓だけをとってみても、
もしかしたらこの「ソ↓・ファ↓」はもともとその1オクターブ上で頭に浮かんだものを 敢えて1オクターブ下げてみたんじゃないかな?上げて歌うと自然。でも、面白みがない、インパクトがないから下げてみた・・・とか。あくまで妄想です、妄想。今日は妄想が冴えるなぁ(^。^)

2012.08.08(Wed) 18:02 | URL | EDIT

さはんじ

Re: 音、取れた!

>PATTIさん
うわうわ、手間のかかる聴き方&読み方をしてくださったのですね。ありがとうございます。
おっしゃる通り、CDレビューの記事はめちゃめちゃ時間がかかります。何日もかけて書いているので、前半と後半で整合性がなくなり苦労することもあります。時には今回のように修正不能のまま開き直って放り出してしまうこともあったりして…(^^;

>ちょっと、キー的に苦しい?

うわうわ、お見通しですね。おっしゃる通り、ギリギリな感じです。十数年前はもっと高い声が出たのでスピッツも小田和正も歌えた(クオリティはともかく、ですよ)のですけどね。
ほんの10秒ほどの話し声を聞いて、そこまでわかっちゃうんですか。恐れ入りました。

>敢えて1オクターブ下げてみたんじゃないかな?

なるほど、おっしゃる通り、オクターブ上のほうが自然ですね。でもメロディが不自然にぴょんぴょん跳びはねたほうが全力の少年っぽいですよねえ。やっぱこのサビはスゴいです。

>変換ミス、おっそろしいことになりましたが

ピピーーッ 教育的指導入りまーすv-222 でも、変換候補って、使用頻度の高い、普段よく使ってる言葉から優先的に出てくるものですよ。
普段からよく使ってる・・んですかあ?(笑)

2012.08.08(Wed) 21:31 | URL | EDIT

PATTI

 <ピー!ピー!ピー!>○×△□※!!

2012.08.08(Wed) 22:24 | URL | EDIT

さはんじ

Re:


ありゃりゃ、PATTIさん、壊れちゃいましたね…。

2012.08.08(Wed) 23:36 | URL | EDIT

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