音の基礎講座9 音を保存する?

2012.09.14(Fri)

音の基礎講座、久々の開講であります。なんと今年になって初めてなんですね。ここまで気まぐれなペースだと皆さんにすっかり忘れ去られているのではないかと思います。ああ、まだやってるのね、なんて思った人も多いことでしょう。かく言う私もその一人、まだ続くのね(おいおい)。

さて、今回は音の保存方法についてのお話しをしたいと思います。もうお忘れでしょうが、かつてこの講座で「音とは、絶えず私たちの前にたち現れては時間とともに変化し消えてゆく、一期一会なヤツなのです」というような事を書きました。私たちの発する言葉や音はすぐに消えてなくなってしまいますよね。そんな一期一会なヤツと、自分の好きな時に再会したいと思ったとき、どうしたらいいのでしょうか。そう、現代ではそんなことカンタンにできてしまいますね。機械の力を借りて「録音」すればいいのです。

という訳で、今回の音の基礎講座は「録音」に、ロック・オン!

…えーと、ヘンな空気になったような気もしますが、早速始めましょう。
Ryoji Suzukiさんがこの基礎講座用に素晴らしいチャイム音を作ってくださいました。
左の三角形をクリックして、ぜひ聴いてみてくださいね。






空気の振動である音を捕えるにはどうしたらいいのでしょう。
そんなのカンタン、北海道に行けばいいのです。あちらはあまりに寒いので「おはよう」の挨拶さえも凍ってしまいます。こうしてできた「おはよう玉」を鍋にかければ溶けだしてまた「おはよう」が聞けるじゃないですか。

…ね。(…ね。ってなんだ?)

これは古典落語「弥次郎」に出てくるネタのひとつです。北海道の皆さん、ごめんなさい。これはいわゆるホラ話でありますが、こんな具合に音を保存する、つまり録音することに世界で初めて成功したのは、かの発明王トーマス・エジソンだと(諸説ありますが、一般的には)云われています。
空気の振動である音は、そのまま保存することはできません。もちろん冷凍保存もできません。空気の振動をなにか別の形に変換する必要があるのです。我らがエジソンはラッパ状の集音器の先に針を取り付けることで、音の振動を針の振動に変換し、円筒の表面に巻き付けた錫(すず)箔にその振動を直接刻み付けました。その針を再び戻して錫箔の上を擦らせることで、その音を再生することができたのです。
当時の人々はびっくりしたでしょうね。業界用語で言えば、クリビツテンギョウイタオドロ。一度消えてしまった言葉が再現されるなんて常識破り以外の何者でもなかったはずです。これが録音(レコード)の歴史の始まりであり、この装置を、音を蓄える機械、ということで蓄音機といいます。ちなみに、錫箔は音の刻みが弱いため、後にはより性能の良い「蝋管」の円筒が用いられるようになりました。

一期一会な音を捕える事に成功した画期的な大発明の蓄音機ですが、蝋管は耐久性に乏しく、何よりも同じものを複数個作成することができません。もしもこれが大量生産できたら儲かるんぢゃないのお〜? なんてイヤらしい事(?)を考えるのはいつの時代の人も同じでありまして(??)、やがて平面盤に音溝を刻み込み、そこから作った金型を用いて硬質ゴムに音溝をプレスするという方法が考案され、大量生産が可能になります。これはまさにアナログレコードの原型ですね。その後は主にレコードの素材に改良が加えられていきます。

さてさて、音の振動をそのまま針によって記録するエジソンの発明から50年近く経った頃、音を電気信号に変換して針を振動させ音溝を刻むという方法が開発され、その音質は飛躍的に向上しました。音を電気信号に変換する装置は、皆さんお馴染みのマイクロホンですね。蓄音機と同じ頃、すでに電話も発明されていたので、この頃のマイクロホンは改良が進み性能も上がっていたのではないかと思います。

という訳で、現代のマイクロホンの仕組みについて簡単にお話しします。
中学生のときに科学の授業で「フレミングの法則」というのを習った記憶がありませんか。ラッパーが「YO! YO!」ってやるときの手指の形をやってみると思い出すかもしれません。3本の指を違う方向に立てて、中指から電・磁・力、なんて覚えましたよね。磁石の近く(磁界内)で、ぐるぐる巻いた電線(コイル)を動かすと、電線に電流が発生するという現象の、それぞれの向きを示すのがフレミングの右手の法則というヤツです。
音によって振動する振動板(ダイアフラムといいます)にコイルを固定して、磁界内でコイルが動くようにしてあげれば、音波に応じた電流が発生する訳です。マイクロホンにはいくつかの方式がありますが、これは最も一般的なダイナミックマイクというマイクロホンの仕組みのひとつです。つまり、ダイナミックマイクの中には磁石が入っていますので、鉄粉の舞う環境での使用は避けましょう。って、そんな環境は滅多にないですね(笑)。
他にも、コンデンサという電子部品に電気をあらかじめ蓄えておいて、ダイアフラムの振動に応じてその電気をちょっとずつ放出するという仕組みのコンデンサマイクも有名です。これらの方式にはそれぞれに特徴があり、用途によって使い分けられています。体力自慢のマッチョ君や事務仕事が得意なインテリ君などを、適材適所に配置するようなもんですね。ちょっと違うかな?

でも、音の振動なんてとっても小さなものでしょ。そんな振動で発生する電気なんてほんのちょっとだけなんじゃないの? と思ったあなた、大正解です。だから「極小の」という意味の「Micro」という言葉がついてるんです(…だと思います)。英語では「Microphone」。私たちは省略して「マイク」(Mic)なんて呼んでいますね。
マイクロホンから発生した微弱な電流を、電気回路で扱いやすいくらいの大きな電流に変換してあげるのが「アンプ」といわれる増幅器です。

余談になりますが、電気信号を音に変換するスピーカーも、一般的にはダイナミックマイクと同じ構造をしています。磁界内のコイルに、音波に応じた電流(マイクロホンで発生した電流を増幅したもの)を流すと、コイルがもとの音と等しい振動をするので、そのコイルに振動板(コーン紙など)を付けて空気を振動させてあげれば、めでたく音が出るという訳です。こちらはより大きな振動を作り出さなければならないので、スピーカーを鳴らすための専用アンプ(パワーアンプ)を使用し、非常に大きな電気信号に変換する必要があります。
マイクロホンとは正反対の動作であるものの仕組みは同じなので、理論上はスピーカーを使って音を収録して電気信号に変換することも可能な訳です。実際には音で振動させるには、スピーカーのコーン紙は重すぎますけどね。しかし、かつてイエロー・マジック・オーケストラは、マイクロホンの代わりにヘッドホンを使って収録した音を楽曲に使用したというエピソードを残しています。まったく不可能ではないということですね。良い音だったとは思えませんが、個性的な音が録れたのではないでしょうか。

さて、当時の録音は(YMOの頃じゃありませんよ、電気録音が始まった頃です)一発勝負の作業でした。原盤に針で音溝を刻む途中で何らかの失敗があれば最初からやり直し。原盤も新しいものに交換しなければなりません。そこだけ見れば現在のCD-Rみたいなものですね。
そんな時代にまたもや画期的な製品が開発されます。電気による録音が始まって10数年後、テープレコーダーが登場したのです。テープレコーダーは何度でも(限度はありますが)録り直すことができるので、改良が進み品質の良い製品が販売されると、一旦テープレコーダーに録音し、完成したものを原盤に刻んで(カッティングといいます)レコードを作成するという方法があっという間に普及しました。この方法はデジタルメディア全盛の時代になるまで続くことになります。

ということで、テープレコーダーについて簡単にお話しします。
テープレコーダーは略して「テレコ」と呼ばれることがあります。一方、あべこべにするとか入れ違いにする事を「テレコにする」なんて言う事があるのをご存知でしょうか。主に関西方面で耳にする言葉のようですが、全国の色々な業界でも広く使われています。この2つの「テレコ」、実は由来的に非常に大きな接点が、・・・ありません! 
あっはっは、まったく別の言葉ですよん。あれ、笑っているのは私だけ? 失礼いたしました。

えーと、電磁石って覚えてますか。鉄芯に電線をぐるぐる巻いて(コイルですね)電気を流すと、そのときだけ鉄芯が磁石になる、という実験は、たしか小学校の理科の授業でやったという記憶があるような、ないような…(笑)。
コイルを巻いたリング状の芯(厳密には鉄芯じゃないです)の1カ所に狭〜い隙間をつくり、コイルに電気を流すと、その電流の強弱に応じて隙間の幅の部分だけが磁化されるのだそうです。これが磁気ヘッドです。
録音テープの表面には、磁化しやすい「磁性体」という物質が塗布されていて、磁気ヘッドに接触させたまま一定速度で走行させると、コイルに流れる電流(音声信号)に応じて磁性体が連続的に磁化されていく訳です。これがいわゆる磁気録音というやつですね。
再生する時は、録音時と同じ速度の記録済みテープで磁気ヘッドを擦ってやると、磁化された磁性体の変化に応じてコイルに電気が発生するのだそうです。ひょええ、誰が考えたのか知りませんが、なんて頭の良い人なんでしょうか。
ちなみにテープレコーダー以前にはワイヤーや紙を使った磁気録音の実験も行われていたそうです。多くの人々による試行錯誤の結果、プラスチックテープによる録音が実用化されたのですね。

そんなテープレコーダーには、録音ヘッドと再生ヘッド、そして録音済みのテープを消去する消去ヘッドの、合計3つの磁気ヘッドが備わっています。いわゆる完全分業です(笑)。3つの中では一番地味な存在ですが、消去ヘッドがあるからこそ、同じ録音テープに何度も録音し直すことができるんですね。また、民生用カセットデッキなどの中には、録音と再生を兼用した録再ヘッドと消去ヘッドの、2つのヘッドしか備えていない機種もあります。
職場に複数のヘッドがいると意見が食い違ったときに部下は困りますね。テープレコーダーのように、複数のヘッドには完全分業をお願いしたいものです。…カンケイナイカ(笑)

そして録音テープには幅あり、その幅が許す限りいくつかの録音トラックを設けることも可能になるのです。ここで言うトラックとは、陸上競技場にあるトラックと同じで、音声を記録するレーンのようなものです。
2つのトラックがあればステレオ音声を記録することができますし、4つのトラックがあれば、テープをひっくり返してセットすることでA・B面それぞれにステレオ録音ができます。さらに複数のトラックのそれぞれが独立して録音できるようにすれば、トラック数に応じた多重録音(いくつもの音を重ねて録音すること)も可能になります。テープレコーダーの登場によって録音の自由度が格段にアップしたわけですね。
ちなみに、カセットテープレコーダーやオープンリールテープレコーダー、多重録音に使われる高価なマルチトラックテープレコーダーなども、走行速度やテープ幅、トラック数に違いはあるものの、基本的な録音の仕組みはみな同じです。

こんなに便利なテープレコーダーは一般家庭にも普及していきますが、音楽ソフトなどの商品としては、メディアの耐久性を含めた信頼性や音質、複製にかかるコストなどを比較すると、録音テープよりもレコード盤のほうが有利でした。したがって、録音製作過程ではより自由度の高いテープレコーダーを使用し、完成品の配布や販売は主にレコード盤で、というシステムはその後も長く続いていくことになります。

さて、最後に余談をもうひとつ。ステレオ音声には、左チャンネル用と右チャンネル用の、2つの音源が必要ですよね。テープレコーダーでは2つのトラックがあればステレオ音声を扱うことが可能ですが、アナログレコードは1本の針で再生するのになぜステレオ音声になるのか、不思議に思ったことはありませんか。そう、アナログレコードでは1本の音溝に2つの音声信号が入っているのです。
溝の断面はV字になっていますね。ということは、\の面と/の面の2つに分解できる訳です。なんとこの2つの面にそれぞれ別々の信号が記録されているのです。こんな事を考えつくなんて、ほんと、頭の良い人がいたものですね。より詳しく知りたいという人は「45/45方式」で検索してみてください。


以上、録音についての主立ったお話しをしてきました。アナログ録音の方法はこれでひとまず完成形に至ったと言えるでしょう。この後はデジタル録音の時代へと突入していくのですが、デジタル音声はアナログ音声を模倣したものですから、私たちユーザーとしてはアナログの基礎をおさえておけば、いくつかの違いはあるもののさほど難しいことはありません。デジタルのほうが取り扱いはむしろ簡単になったと思いますよ。
デジタル音声についてはまた次の機会にお話しすることにしましょう。

ということで、今回の「音の基礎講座」は終了です。皆さん、おつかれさまでした。

チャイムをどうぞ→ 






※この記事を書くにあたって、Wikipediaとその他、たくさんのサイトを参考にさせていただきました。





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COMMENT

Ryoji Suzuki

ちゃいむぅ♪

こんばんは~♪
まだ記事よんでないすけども、
ちゃいむうれすぃ~です♪

明日はちと、
現場にでかけてまいります、
帰ったらゆっくりおはなし(記事)お伺いしますね。
ボクのブログにあすのLive中継載せておきました~♪

乱コメですんませんm(_ _)m
Ryoji Suzuki(^o^)♪

2012.09.14(Fri) 23:45 | URL | EDIT

さはんじ

Re: ちゃいむぅ♪

>Ryoji Suzukiさん
コメントありがとうございます。

チャイム音源をいただいて、なんと9ヶ月も経ってしまいましたね(^^;
やっと使わせていただくことができました。
ありがとうございました。
Live出演、頑張ってくださいね〜 (^^)/"

2012.09.15(Sat) 13:16 | URL | EDIT

cyah

これがあの有名な

噂には聞いていましたが、これがあの有名なさはんじさんの「オヤジギャグ」というものですか?

チャイム音は郷愁誘いますね。学生時代に戻った気分・・・

2012.09.16(Sun) 23:05 | URL | EDIT

さはんじ

Re: これがあの有名な

>cyahさん
コメントありがとうございます。

噂? 有名? どこで?(^^;

んー、自分の口から言うのは少々抵抗がありますが、たぶんそうです。
ただ、この記事すべてがギャグだと言われると寂しいものがありますので、
記事のあちこちに散りばめられた、宝石のごとくキラキラ光るハイセンスなジョークのことを
「オヤジギャグ」と呼ばれることに、まったく異存はございません。(^^;

チャイム音、ステキですよね。
よく聴くと、かなり複雑な合成音じゃないかという気がします。

2012.09.17(Mon) 15:57 | URL | EDIT

PATTI

さはんじさん、こんばんわ。

私など、「録音する」という動作はただ、
録音ボタンをポチッとする。これだけ。

アナログも、デジタルも、
やってることはそれだけで、なんにも
変わった気がしません。

今回のライヴ録音も、MP3でとってあるから、
デジタル?
・・・さぁ、お風呂入ってこよっと(#^.^#)

2012.09.17(Mon) 22:07 | URL | EDIT

さはんじ

Re: タイトルなし

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

あはは、ほとんどの人にとっては、その通りなんでしょうね。
多くの人が長い時間をかけて、一般の人にとって面倒な操作をできるだけしなくて済むように
努力を重ねてきた結果、ボタンをポチッとするだけで事足りるようになった訳です。
その恩恵にあずかる事は、決して悪いことじゃありません。

この基礎講座は、ざっとアウトラインを紹介して、興味を持ってくださる人がいればうれしいな、
という程度のスタンスでやっていますので、気軽に読み流してくださいね〜(^^)

2012.09.17(Mon) 22:46 | URL | EDIT

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