Marilyn Scott『DREAMS OF TOMORROW』

2012.10.12(Fri)


ドリームズ・オブ・トゥモロウドリームズ・オブ・トゥモロウ
(1999/10/27)
マリリン・スコット

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今回のCDレビューは1979年に発表されたマリリン・スコットのファーストアルバム『ドリームズ・オブ・トゥモロウ』を選んでみました。このアルバムは当時(もちろんアナログレコードです)、日本国内では発売されなかったため入手困難な幻の(?)名盤とされていましたが、1999年になってようやくCD化されました。
マリリン・スコットといえばコンテンポラリー・ジャズ・シンガーということになるのでしょうが、 後にリリースされるアルバムに比べて、よりパワフルでソウルフルなボーカルを聴かせてくれるこのアルバムはAORに分類するのが一般的なようなので、ここでもROCK/POPSにカテゴリ分けしてみました。

いきなり私事で恐縮ですが、私がこのアルバムの存在を知ったのは1997年の夏でした。パソコン通信のオフ会に参加したとき、ひとりのメンバーが中古レコードでやっと手に入れたと自慢げに(?)聴かせてくれたのです。といっても場所は新宿の居酒屋、じっくりと聴く訳にもいきませんから、MDウォークマンのイヤホンで1曲目「レッツ・ビー・フレンズ」の前半部分をちらりと聴いただけだったのですが、センスの良い楽曲の気持ち良さが強く印象に残りました。その2年後にCD化された際には飛びつくように入手したのを覚えています。

さてその1曲目「レッツ・ビー・フレンズ」です。冒頭のスネアドラム一発、直後に始まるイントロはタイトなリズムにキーボードを基調としたシンプルで爽やかな演奏です。過剰なほどにタイトなドラムはノイズゲート等を使って余韻をカットしているのかもしれません。全体にとても柔らかいサウンドで、シンバルやハイハットはかなり控えめ、よく動き回るベースもあまり輪郭のはっきりしないふわっとした音色です。そこに入ってくるボーカルは低域を絞ったような音像小さめのやや硬いサウンドで、リバーブがとてもきれいに乗っています。ボーカルが主役というよりは、ボーカルを含めた全体のサウンドで勝負しているような、どちらかと言えばロック寄りなサウンドバランスに聞こえますね。パワフルなボーカルに絡むコーラスやシンセサイザーのフレーズもいい感じで、バックで堅実にカッティングを続けるギターもカッコいいのですが、特筆すべきはラッセル・フェランテによるエレキピアノでしょう。バッキングも間奏のソロプレイも、豊かな音色とフレーズが本当に素晴らしいです。シンコペーションの効いたリズムアクセントが連続するエンディングもいいし、最後に残るギターもちょっとユーモラスでいい感じです。

2曲目はこのアルバムの表題曲「ドリームズ・オブ・トゥモロウ」です。この曲はデクスター・ワンゼルのカバーなのですが、ソフトな印象の原曲とはまるで違うリズムの立ったアレンジになっています。唸るような低音のシンセサイザーが印象的な、重くドラマチックなイントロで聞こえるスネアドラムのロールは軽くダブリングしているのでしょうか、左右に不思議な広がり方をしているように感じます。オンビートになると、相変わらずドラムはタイトですがタムは重く豊かな音色で、楽曲にアクセントを加えています。ベースの音はやや大きめでしょうか。要所要所にタワー・オブ・パワーのホーンセクションが入ってきますがこちらは音量控えめで、やや遠くで鳴っているかのようにミキシングされていますね。ラストは充分に盛り上がったところでイントロのフレーズに戻ってきますが、ミュートトランペットが追加されて少し違った雰囲気になっています。この曲では最後にミュージックボックス風の可愛らしいアルペジオが残るんですね。

続く3曲目はアイズリー・ブラザーズのカバー曲「ハイウェイズ・オブ・マイ・ライフ」です。こちらも原曲よりもかなりリズムを強調したアレンジになっています。他の曲よりもドラムが大きめにミキシングされているでしょうか。しかし他の楽器のサウンドはやや薄めで、結果的にボーカルが前面に出てきているように感じます。ジャジーなクリアトーンのギターとエレキピアノがオシャレな感じですがこちらはだいぶ控えめで、オーバードライブ気味のエフェクティブなギターとリバーブたっぷりで広がりのあるコーラスが印象的です。ホーンセクションも地味な感じですね。短いフルートソロの後はボーカルとコーラスがゴスペル風に絡んで盛り上がりますが、ホーンセクションが入っているためか泥臭さはなく、オシャレで洗練された印象のままフェードアウトしていきます。

力強いアコースティックピアノが印象的な4曲目「Y-O-U」は、リズムセクションとホーンセクションが大活躍といったグルービーなナンバーで、まるでスタッフの曲を聴いているかのようなサウンドで嬉しくなってしまいます。そういえばピアノはちょっとリチャード・ティーっぽい感じもしますね。もちろん弾いているのはラッセル・フェランテなんですが、多分に意識しているのでしょう(笑)。サックスソロの最後は超ハイトーンになりますから、これはレニー・ピケットでしょうね。

イントロのスキャットがクールな印象の5曲目「レッツ・ノット・トーク・アバウト・ラヴ」は前曲からのノリはそのままに、渋くファンキーなテイストが追加されたかのような曲です。スキャットの後ろに聞こえる擦れたようなオルガンのサウンドがまた渋いですね。キレの良いコーラスがカッコいいです。細かいことを言えば、これまでの4曲はハイハットが右側から聞こえていたのに、この曲では突然左側になってしまいました。この意図やいかに? 単に雰囲気を変えたかっただけかもしれませんね(笑)。

アナログレコードではここからB面ということになりますが、6曲目「ユー・アー・オール・アイ・ニード」はこれまでと雰囲気が変わって、ミディアム・スローなナンバーとなります。後のマリリン・スコットの楽曲に近い雰囲気かもしれませんが、若さゆえか(笑)こちらのほうが力の入った、ややトンガッたボーカルに聞こえますね。バスドラムの音量に比べてスネアのリムショットはかなり小さめです。そのせいか右チャンネルから聞こえるカバサのようなパーカッションの音が突出して浮き立って聞こえます。ちなみにハイハットは右側に戻りました(笑)。間奏では倍テンポになってピアノソロになりますが、その途中で音量がカクッと変化している部分があって気になります。マスターテープの状態が悪くドロップアウトが起きていたのかもしれません。
エンディングではまた倍テンポになって、長〜いギターソロが展開されます。が、もちろんまったく退屈な感じはしませんよ。バックの楽器がソロを盛り上げるようにアクセントやフレーズを挟み込みながらグルーヴしていき、とても聴き応えのある演奏になっています。

7曲目は重いリズムのイントロで始まる「ユー・メイド・ミー・ビリーヴ」です。シリアスな雰囲気がサビで一転、メジャーに変わる展開は見事ですね。ギター、ピアノ、パーカッション等が実に効果的に使われていて、まさにアレンジの勝利といった感じの曲なのですが、とりわけ印象的なのは全体にわたって聞こえているシンセドラムのサウンドです。フィルターを効かせたようなこもった音色で決して目立ちませんが、曲全体にユニークな色合いを加えています。こういうアイデアは一体どこから生まれてくるのでしょうね。

左右に広がったアコースティックギターとゆったりした重いドラムがフォークロック的なフィーリングを醸し出す(なにこの表現?)8曲目の「ザ・ビーチ」は、このアルバムの中で最もロックテイストの強いナンバーです。決して激しくはないものの、オーバードライブ・ギターとファンキーなコーラスが大活躍する非常にドラマチックな展開の楽曲ですね。充分に盛り上がったエンディングで聞けるマリリン・スコットのパワフルなアドリブスキャットがいい感じで、もうちょっと聴きたいなと思うところでフェードアウトしていきます。

ラスト9曲目「イエス・アイ・キャン」は、なかなかにフィナーレ感のあるイントロで始まる、ソウルフルなバラードナンバーです。こういった曲調でもドラムはタイトなサウンドを貫いていますね。後半の盛り上がる部分では、スネアにハデなリバーブがバーンとかかってもいいような気もしますが(それが王道じゃないかとも思いますが)変に大袈裟にしないのがセンスなのかもしれません。エンディングのリフレインで出てくるギターもずいぶん控えな音量ですが、ボーカルとコーラスで充分に盛り上がりは表現できているということなのでしょう。


この『ドリームズ・オブ・トゥモロウ』は、1979年に発表されたのだから当たり前なのかもしれませんが、全体的に耳にやさしい柔らかいサウンドのアルバムです。2000年代のサウンドを聞き慣れた耳には物足りなく感じるかもしれませんが、それはたぶん最初だけのことで、この素晴らしい楽曲や演奏に引き込まれていけばまったく気にならなくなることでしょう。むしろこのサウンドだからこそこの世界観が表現できているのかもしれません。
特筆すべきはやはり緻密なアレンジでしょうね。特にアレンジャーはクレジットされていないようなので、マリリン・スコット本人が手がけているのかもしれませんが、シンセ・ストリングスのアレンジとしてラッセル・フェランテとスティーブ・ポーカロの名前が記載されています。

そしてこの不思議なアルバムジャケットです。めちゃめちゃシュールな世界観のイラストですが、解説によるとこれがマリリン・スコットの考える「明日の夢」(Dreams of Tomorrow)なのだそうです。
もしかしてマリリン・スコットってヘンな人なの? と思ってしまうのは私だけ?(笑)

なお、2010年?に、アルバム未収録のシングル2曲を追加した高音質盤CD『ドリームス・オブ・トゥモロウ +2』が発売されているようです。私としては悔しい事この上ない出来事です(笑)。





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COMMENT

大木凛悟

すごく良さそうですね。
柔らかいサウンド、好きです^^

2012.10.13(Sat) 18:34 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>大木凛悟さん
コメントありがとうございます。

サウンドは柔らかく耳にやさしいですが、演奏や歌唱はとても刺激的だと思います。
もちろん人それぞれに好みがありますがら絶対ではないですが、このテの音楽が好きな人には是非おすすめしたいアルバムです。

2012.10.13(Sat) 22:13 | URL | EDIT

PATTI

さはんじさん、昨日はお疲れ様でした~

私も、往復2回、娘とダイエット方々歩いたので
そのうえ夜、少し離れた薬局まで
これも歩いたので、今日はちょっと疲れ気味です。

さてさて。きのう、それでもマリリンスコット数曲聞きました。YouTubeで。Let's be friendsと、You are all I need
そしてHighways of my life です。

Patti Austinをすこし尖らせたような歌ですね。Jazzまで幅広く歌える声・・・誰かに例えるのはとっても失礼だけど、Dee Dee Bridgewaterととてもよく似てるなと思いました。
演奏もハンコックみたいだったり、リトナーみたいだったり、とても好きな感じです。

もうちょっと引くとこ引いて歌ったら・・・なんて、残念に思ったりもして。

You Are All I Needという曲をすごく歌いたくなりました。個性的な歌ですよね。そう。引くとこ引いて歌ってみたくなったのです(笑)






2012.10.14(Sun) 12:39 | URL | EDIT

hide

こんにちは。マリリン大好き人間の私も当時、飛びついて買いました!ボビーコールドウェルの女版といった感がある彼女、実際デュエットもあったような。そうですか、リマスター出てますか。お金、いくらあっても足らないし(泣)

2012.10.14(Sun) 13:42 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

昨日の運動会に加えて、今日はJRのスタンプラリーに付き合わされてぐったりしています(^^;
子どもは本当に元気ですね…。

この時、彼女は30歳。初めてのアルバムですから気負いもあったのでしょう。
後のアルバムではだいぶまろやかな歌声になっています。
私はこの尖った感じも捨て難いと思いますけど(^^;

2012.10.14(Sun) 18:00 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>hideさん
コメントありがとうございます。

詳しくないですが、たしかボビー・コールドウェルとの共演もあったはずだと…。
好きなアルバムはだいたい入手していることが多いですが、高音質版とか未発表曲追加版なんてのが後になってから発売されると悔しいですよね。私はほとんど買えません…(泣)。

2012.10.14(Sun) 18:05 | URL | EDIT

ななし

デュエット

これですね

Bobby Caldwell and Marilyn Scott "Back To You", Live in Tokyo
http://www.youtube.com/watch?v=LW3vFDJ3aO0

2013.07.16(Tue) 14:59 | URL | EDIT

さはんじ

Re: デュエット

>ななしさん
そうですね、ありがとうございます。
ぴったり息の合ったデュエット、やっぱりイイですね〜。

2013.07.16(Tue) 15:12 | URL | EDIT

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