あなろぐ懐古ログ 「クロストーク」

2012.10.17(Wed)

アナログ録音にまつわる懐かしい話題をピックアップする「あなろぐ懐古ログ」、今回は「クロストーク」を取り上げてみようと思います。
「クロストーク」という言葉は様々なジャンルで、様々な意味を持つ言葉として使われていますね。アナログ録音でいう「クロストーク」は、日本語にすると「漏話」が一番近いでしょうか。「漏話」とは普通、電話の混線などを指すことが多い言葉ですが、つまりは伝送信号が他の伝送路に漏れることです。ここではアナログテープに記録された音声が同一テープ上の別トラックに漏れ聞こえてしまう現象についてお話しします。

ちなみに、デジタル録音では理論的にクロストークは発生しません。

テープレコーダーの録音の仕組みについては音の基礎講座9でお話しをしました。簡単に言うと、録音テープの表面に塗布された磁性体を磁化させることで音を記録していくのです。つまり、音を再生するときは、テープに記録された微弱な磁力から電気信号(音声信号)を発生させるわけですね。

さて、録音テープには複数の録音トラックを設けることができます。トラック数は録音機によって違ってきますが、一般的なカセットテープの場合はステレオ音声(2トラック)がA・B面に記録されるので、合計4つのトラックが存在します。モノラルレコーダーの場合は片面1トラックで合計2トラックということになります。ちなみに業務用マルチトラックレコーダーでは幅の広いテープを使用して24トラック、あるいはそれ以上記録できるものもあります。

そこで今回のテーマ「クロストーク」ですが、アナログテープ上でおきるクロストークは主に再生ヘッドが再生するべきトラックの「隣のトラック」の磁気を感知してしまうことで発生します。厳密にいえば、非常に微小なクロストークはいつも起きているのでしょうが、テープのヒスノイズ等に埋もれてしまったり、録音目的の音とくらべて非常に小さい音だったりして聞こえないことがほとんどです。しかし、録音レベルを大きく設定してしまったり、そうでなくても突発的に大きな音を録音してしまった場合にクロストークが目立つことがあります。

でもさ、たとえばステレオ音声の右チャンネルの音が左チャンネルに漏れたとしても、同時に両方の音を聞いているんだから、別に問題ないんじゃないの? と思いますよね。その通りです。
通常のステレオ再生の場合にクロストークがあっても、多少は音に濁りのようなものが感じ取れるかもしれませんが(分離が悪いなんていう事もあります)、それが問題になることはまずありません。
普通、きちんと整音された音楽や音声プログラムを録音・再生する際にはクロストークが気になる事はないでしょう。極端に録音レベルをオーバーしてしまった場合には、カセットテープのA面に録音した音がB面の音声トラックに漏れ聞こえてしまうなんて事もあり得なくはありませんが、まあそれは滅多に起きないでしょうね。

問題となるのは、都合があって再生したくないトラックの音が、別の再生したいトラックから聞こえてきてしまう場合です。音楽製作などを目的とした多重録音(マルチトラック録音)をしている時などは瞬間的な大音量を録音することもあるので、注意が必要です。

例えば、1トラックにギター、2トラックにベース、3トラックにドラム、4トラックにボーカルを録音したとします。満足のいく録音ができたのでミックスダウンの作業にとりかかった時、2コーラス目の最初はベースとドラムを使用しないでギターとボーカルだけにしたほうがカッコいいのでは? というアイデアが浮かびました。さっそくベースとドラムの再生音量をゼロにして聞いてみると・・・、ありゃりゃ、ドラムの音がうっすらと聞こえてるよ…。
なんてことが起きてしまうわけですね。
ドラムなどの打楽器は瞬間的に大きな音(ピーク)を含んでいるので、特にクロストークに気をつけなければなりません。ボーカルのようなメインとなるパートの隣のトラックには録音しないほうが無難ですね。アナログ録音ではこういった工夫も必要になります。

さらに大問題となるのは、少々特殊なケースではありますが、同期信号を記録している場合です。マルチトラックレコーダーの1つのトラックに同期信号を録音し、ミキシングオートメーションに使用したり、シンクロナイザーという機器を接続することによって、他のテープレコーダーやビデオデッキ、あるいはmidi演奏をするコンピュータ等と同期走行させることが可能になるのですが、この同期信号が隣のトラックに漏れ聞こえてしまう(クロストークする)事がよくあるのです。
同期信号にはいくつかの種類がありますが、普通はタイムコードと呼ばれるデジタル信号で、非常に耳につくウルサイ周波数の音だったりします。つまりはクロストークした際に聞こえやすい訳ですね。音楽やビデオ作品の音声等に、まったく関係のない信号音が漏れ聞こえては一大事なので、通常は同期信号を記録したトラックの隣のトラックを使用しない事でクロストークを避けています。

例として業務用によく用いられるSMPTEタイムコードの音をUPしておきます。本当に耳につくウルサイ音なので、お聞きの際にはくれぐれも音量にご注意ください。


さて、「ヒスノイズ」のお話しをしたときに、ヒスノイズ対策の最も有効な方法は「可能な限り大きな音で録音する」ことだと書きましたが、クロストーク対策の最も有効な方法は「過度に大きな音を録音しない」という事になります。それじゃいったいどうせいっちゅうんじゃ! と文句を言いたくなる気持ちもわかりますが、それほどアナログ録音においては、適正な録音レベルを守ることが重要なんですね。
また、多重録音の際にはどのトラックに何の音を録音するか、という計画をしっかり立てることでクロストークによる被害(?)を最小限に抑えることもできるのです。

以上、今となっては何の役にも立たない、「クロストーク」についてお話ししました。


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COMMENT

cyah

こんばんは。

blogram見ていたら、トラックが頻繁に出てくるためか、
「ダンプトラック」がヒットしていました。(ぉぃ
ここのランキングはかなり怪しいのですが、
オーディオ機器のトラックはそれほどまでマイナーに・・・?

2012.10.17(Wed) 23:20 | URL | EDIT

浦太

クロストークが原因で、ギターだけにかけたディレイがドラムにも薄くかかっちゃった、なんて事も有りましたね。
ん?
アレはマイクにカブってたからでクロストークじゃなかったかな??
チョッと記憶が曖昧ですが…

2012.10.18(Thu) 00:50 | URL | EDIT

PATTI

さはんじさん、おはようございます^ ^

そんな苦労があったのね。
こちらはなんにも知らずに
ノーテンキなことでした。

cyahさんの発見、ナイス!
今度、ミキサー云々って書いたら、
コンクリートミキサー車に
ヒットするかも(≧∇≦)

2012.10.18(Thu) 07:09 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
コメントありがとうございます。

あはは、ホントだ。「ダンプトラック」って表示されてますね(^^)

以前、blogramに「格闘技」というワードが表示されていて、そんな記事を書いた覚えはないな〜と思って確かめてみたら、サイモン&ガーファンクルの曲名「ボクサー」が原因だったようです。

2012.10.18(Thu) 09:40 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>浦太さん
コメントありがとうございます。

マイクのカブりも広い意味でとらえればクロストークの一種といえると思います。
その漏れ具合(?)は電気信号のクロストークとは比較にならないくらい大きいので、さらに厄介ですけど。

確かにエフェクトをかける時にもクロストークは問題になりますね。
リバーブくらいなら大した影響はないでしょうけど、ギターのディレイがドラムにかかるのはいただけませんねえ〜(^^;

2012.10.18(Thu) 09:48 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

録音レベルに付随する問題は100%エンジニアの責任ですから、演奏者側のみなさんはあまり気にすることはないでしょうね。すべてを自分で賄う自宅録音・DTM派の人は結構苦労していたと思います。

録音の、特にミキサーに関連する用語には、バスとかパンとかポスト等々、誤認識されそうなワードがたくさんあります。
もしも録音用語集みたいな記事を書いたら、blogramは面白いことになるかもしれませんね(^^)

2012.10.18(Thu) 10:00 | URL | EDIT

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