音の基礎講座4 音は何処から?

2010.05.05(Wed)

3時限目の講義を受けていない方は、こちらを先に読んでくださいませ。

日本人は諸外国人と比較して、ハッキリとモノを言えないという傾向がある、と言われて久しいですね。曖昧な表現の多い日本語ですが、それはそれでひとつの文化であり、伝統でもあるのだから、尊重していきたいものです。とは言っても、イエス・ノーをハッキリ言わなければならない場面も確かにありますね。
政治の世界でも、ナントカ基地問題とかナントカ道路割引問題で、気を使っているのか、各方面にイエスと言い続けて結局は身動きがとれなくなっているように見えます。時には曖昧なイエスよりもキッパリとしたノーが大切ではないでしょうか。

さて、音を聞くとき、耳はもちろん大切ですが、音を意識する「ノー」、もとい「脳」が大切なのは言うまでもありません。スグレモノの耳がキャッチした音の情報を、脳がきっちり分析して初めて「音を聞いた」と言えるのです。

では、4時限目の講義を始めます。
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例えば、どこかオシャレなカフェでお茶しているときに、店内のBGMを聞いて「あれ? このサックス、デビッド・サンボーンじゃない? うん、そうだよ、間違いない。何て曲だろ?」とか言ってる人がいたとします。あなたは「うわあ、イヤなヤツだなあ」なんて思うかもしれませんね。(ちなみにデビッド・サンボーンはフュージョンの代表的なサックス奏者です)
このイヤなヤツ、もとい、音楽ファンと思われる人は、何を手がかりに演奏者を特定したのでしょうか。
判断材料はそれほど多くありません。全体的な曲調や雰囲気もまあ多少はあるかもしれませんが、この場合は「音色」と「演奏フレーズ」が決め手になっていると考えられます。
サックスの音、といったらおそらく誰でも思い浮かべることができるでしょうが、演奏者による微妙な音色の違いなんて判別できるのでしょうか。また、この世に星の数ほどいるサックス奏者が、これまでにどれほど沢山のフレーズを演奏してきたか、想像するだけでめまいがしてきそうな、まさに天文学的なオタマジャクシの羅列の中から、いかに有名なプレーヤーとはいえ、たった一人の演奏者を特定できるものなのでしょうか。

できるんです。もちろんそれなりの訓練と経験が必要ですが、こういうイヤなヤツ、じゃなくて音楽ファンはそこらじゅうにいます。他にも警笛を聞いただけで列車の型式を言い当てる人や、排気音を聞いてスーパーカーの車種を当てる人、鳴き声で野鳥を特定できる人、アニメキャラの声から声優を特定できる人…はちょっと違うか。まあとにかく微妙な音の違いを聴き取れる人は沢山います。
うわあ、マニアだなあ、なんて思う人もいるかもしれませんが、実は誰でも本当に微妙な音色の違いを普段から聴き取って生活しているのです。音を認識・判断する私たちの脳は、それほど高性能なのです。

さて、突然ですが、人間に限らず、ほとんどの生物には耳が2つあります。
なぜでしょう?

音の方向を判断するため、ですね。外界からの危険を回避するためには絶対に必要な能力です。
右方向で音がしたら、音源から距離の近い右の耳にまず音が届いて、左右の耳の距離の分だけ遅れて、そして音量が減衰して、左の耳に音が届きます。この、ほんの少しの時間差と音量差を感じ取って、脳は右から音がしたと認識するのです。実際には音色とか位相なども関係していますが、いずれにしても非常に微妙な左右の音の違いを聴き取って、判断しています。

しかし、音がするのは横方向からばかりとは限りません。後ろから、とか、上から音がしても私たちは方向を判断することができます。なぜでしょう?

3時限目の耳の構造図を思い出してください。あ、わざわざ見直さなくてもいいですよ。
耳占いだのネコ耳だのと無駄話をした割りには、その機能についてさらっとスルーしてしまった「耳介」がここでやっと登場してきます。ね、前回の話なのに「耳介」(次回)とはこれいかに。…あれ?
え、えーと、人それぞれ色々で複雑な形をした「耳介」と、左右の耳の間に存在する「頭」にぶつかった時に音は、はね返ったり回り込んだり(2時限目、まっすぐな男の無駄話近辺参照)して微妙に音色が変化します。この音色変化の度合いによって、脳は音源の方向を判断しているのです。これはたぶん、後ろから来る音はこんな音色、上方向はこんな音色、と、視覚情報その他を重ねあわせた経験から判断しているのでしょう。

人間の感覚のうちで、一番最初に備わるのが聴覚だと聞いた事があります。もしもそうなら、私たちの一番経験豊富な感覚が聴覚なのだということになりますね。音の方向を感じ取るという事だけでも、こんなに微妙な聴き取りをしているのですから、さらに経験と訓練を積めば、私たちの聴覚の可能性はもっと広がっていくと思います。

さて、私たちはいつも体調万全とは限りません。咳や鼻水、発熱という症状が出たら。
かぜでしょう?

…すみません、言ってみたかっただけです。

こういう脱線をすると、話を元に戻すのが大変なんですが、そこはもう開き直ってさらっと戻します。

ふたつの耳によって音の方向を感じ取っている聴覚の特性を利用して、元の音場と同じような立体音場を再現しようと考えられたのがステレオ装置です。基本は2つのスピーカーで音の方向や空間を再現しますが、サラウンドなどもっとたくさんのスピーカーを用いることもあります。
例えば左右2つのスピーカーから同じ音量で同じ音を出すと、その音は2つのスピーカーの中央から出ているように聞こえます。ということは、ステレオの方向性(定位)というのは聴覚の錯覚を利用しているわけです。
微妙な音の違いを見事に判別する私たちの脳ですが、このように簡単にだまされてしまうこともあるんですね。

ところで、耳介と頭による音色変化で音の方向がわかるなら、マネキンの頭のようなものにリアルな耳の形をつけて、左右の耳の奥の鼓膜に相当する場所に小さな2つのマイクロホンをつけて録音したら、立体的な音が再現できるはずですね。これをバイノーラル録音といいます。再生するときは左右の音が混ざらないようにヘッドホンで聞くことが条件になります。普通、ヘッドホンで聞く音は頭の中に音が鳴るように感じられるのに対して、バイノーラル録音では見事に頭の外側に広がる音場を感じることができます。残念ながら完全に全ての方向を感じることはできませんが、この広がり感はかなり新鮮です。インターネットの動画サイトや専門のホームページにバイノーラル録音された音声ファイルがたくさんアップされていますので、興味のある方は検索してみてください。くれぐれも、ヘッドホンで聞く事をお忘れなく。


私たち生物は、音の方向性をしっかり聞き分けることができなければ、外界のさまざまな危険から身を守ることができません。それをほんのわずかな音の違いから読み取って(聴き取って?)いるのです。
政治の世界でも、ナントカ手当とか、ナントカポイント制度とか、方向性が定まらないなどと各方面から批判を受けていますね。方向性を見誤ると危険な状態に陥るのは、どの世界でも同じことですから、やはりキッチリとした方向性を決定するのは大切なことでアリマス。

4時限目の授業はここまでです。
次回もたぶん聴覚の話になると思います。って、いい加減ですねえ。

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そろそろ怒るぞ、というあなたは…やっぱり無視してください。

5時限目「聞こえる?聞こえない?」を読む


   


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COMMENT

まーる

φ(.. )

バイノーラル録音された音、っていうのが気になって
YouTubeで探して聴いてみました(°∀°)b
ヘッドホンして聞いてるのに
パソコンから音鳴ってるのに(あれ?これは関係なかったかな?)
この感じはなんだか不思議!ヽ(゚◇゚ )ノ
さはんじさんも書かれていますが
普通はヘッドホンをして音を聴くと頭の中に音が鳴るようで
その感じがあまり好きじゃないわたしは
音楽聴くときに
ヘッドホンやイヤホンを使わない派(?)
だったりします(;´▽`A``
けれど、音楽もこんな風に録音されたら
じゃんじゃんヘッドホンで聴きたくなっちゃうのになぁ、なんて♪
自分の外で音が広がる感じ、
音が外から自分の骨にぶつかってくる感じ(?)が
なんだかやみつきになりそうです(*´ω`*)
・・・わたし、またもや
おかしなこと言ってるかも( ̄ー ̄; www

音、って楽しいですね(ノ´▽`)ノ
音について知ることもまた
とても楽しいです( ´艸`)
・・・難しくなるとすぐ分からなくなっちゃうけど(涙)。

「音の基礎講座」続きも、これまでのおさらいも
引き続き楽しく読ませていただきますねっ(・∀・)┛”

2011.09.11(Sun) 20:39 | URL | EDIT

さはんじ

Re: φ(.. )

>まーるさん
コメントありがとうございます!

バイノーラル録音、楽しいですよね。ラジオドラマみたいなものはかなり臨場感を感じられると思います。
残念ながら音楽に関してはバイノーラル録音されたものはあまりありません。たぶん音の明瞭度に問題があるからじゃないかと思いますけど…。
でも、まったく存在しない訳ではありません。有名なところでは、コブクロの「STAY」というシングルのカップリング曲にバイノーラル録音されたものがあります。私は聞いた事がありませんが、2人が目の前で歌っているような感じに聞こえるのではないかな?

最近では電気的に立体音場を作り出すことができる機材もあるので、そういったものが部分的に使用された音楽は多いのかもしれません。

2011.09.11(Sun) 23:37 | URL | EDIT

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