あなろぐ懐古ログ 「ワウ・フラッター」
今回のあなろぐ懐古ログのお題は「ワウ・フラッター」です。
ちょっとオーディオに詳しい人などは、略して「ワウフラ」なんて言うこともありましたね。これは音響機器の回転ムラなどによって発生する周波数の変動を指す言葉です。
アナログ方式の録音/再生機器のカタログや取扱説明書には必ず、仕様としてワウ・フラッターが何パーセント以下という記載がありました。しかしCDプレーヤーなどのデジタル機器の場合、その記載は決まって「測定限界以下」となり、最近では記載自体がないこともあるようです。デジタル録音が常識となりつつある現代では、ワウ・フラッターという言葉はほぼ完全に駆逐されてしまったと言えるのではないでしょうか。
ちょっとオーディオに詳しい人などは、略して「ワウフラ」なんて言うこともありましたね。これは音響機器の回転ムラなどによって発生する周波数の変動を指す言葉です。
アナログ方式の録音/再生機器のカタログや取扱説明書には必ず、仕様としてワウ・フラッターが何パーセント以下という記載がありました。しかしCDプレーヤーなどのデジタル機器の場合、その記載は決まって「測定限界以下」となり、最近では記載自体がないこともあるようです。デジタル録音が常識となりつつある現代では、ワウ・フラッターという言葉はほぼ完全に駆逐されてしまったと言えるのではないでしょうか。
ちょっと前まで「録音」と「回転」は切っても切れない関係でありました。レコード盤やテープレコーダー(のリール)など、録音メディアはいつも回転していたんですね。ですから「録音する」という言葉と「テープを回す」という言葉は同じ意味合いを持っていました。録音現場では「はい、それでは録音しま〜す」というよりも「はい、それでは回していきま〜す」なんて言葉のほうが普通に使われていたように思います。よくよく考えると非常に曖昧な言葉ではありますねえ。
余談ですが、映像の録画にも「回す」という言葉が使われています。「カメラ回して」なんていうこともありますが、厳密に言えばカメラは回しません。回すのはVTR(ビデオテープレコーダー)ですよね(笑)。
…とまあ、そんな細かいことは置いといて。
録音と回転の蜜月(?)は、録音の歴史が始まったエジソンの頃から、実にデジタル録音の時代まで続いていきます。ハードディスクも回転メディアですから、おそらく初めてその関係が切れたのは、メモリーカード等に音声信号を記録するICレコーダーが登場した時ではないかと思います。将来的にこちらが録音の主流になるのかもしれませんが、その時にも「回す」という言葉が慣例的に使われ続けているのか、非常に興味深いところではありますね。
さてさて、本題のワウ・フラッターです。冒頭でちょっと触れましたが、これは主に音響機器(テープレコーダーやレコードプレーヤー)の回転ムラによって起こります。回転ムラというのは、機器(モーターや伝達ベルトなど)の回転が周期的に速くなったり遅くなったりする事です。つまり、録音テープやレコード盤の速度が速くなったり遅くなったりして、音が揺れたり濁って聞こえてしまうんですね。
この音揺れの周期が長いものを「ワウ」、短いものを「フラッター」といい、その総称が「ワウ・フラッター」です。ちなみにワウとフラッターの境は10Hz(1秒間に10回の変動)とされています。
回転ムラは電気的・機械的に起きる様々な原因によって発生し、一般ユーザーレベルで対処することは難しいでしょう。せいぜい走行系部品の掃除など日々のメンテナンスをきちんと行って、よりひどいワウ・フラッターが発生しないようにする事くらいでしょうか。
ところで、回転速度が速いほど回転ムラは少なくなります。ヒスノイズの時にお話ししたのと同じように、マイクロカセットよりもカセットテープ、カセットテープよりもオープンリールテープレコーダー、一般用オープンリールテープレコーダーよりも業務用マスターレコーダーのほうが走行速度が速いため、ワウ・フラッターは小さくなります。ここでも高級品のほうが高音質であるという図式は健在ですね。
ちなみにCDなどのデジタル音声にワウ・フラッターが起こらない(測定限界以下、ですね)のは、回転速度が充分に速いからだという記述を見たことがありますが、それはちょっと違うんじゃないかなと思います。1秒あたりに扱うデータが膨大になるデジタル音声は非常に高精度な時間管理がされていて、回転ムラがあってもその影響は無視できるほどに小さくできるそうです。もしもデータの読み取りに影響が出るほどの速度変化があればジッターノイズという雑音が発生し、ひどい時にはエラーが起きてしまうでしょう。デジタル音声は伝達速度が変化したからといって、音声の速度や音程がそれに応じて変化するような事はありません。
ということで、ワウ・フラッターはアナログ音声機器特有の現象であると言えるのではないでしょうか。
さて、ワウ・フラッターといえば思い出す事があります。
サイモン&ガーファンクルの名曲「明日に架ける橋」のエンディング、それも一番最後の部分は、ストリングスのロングトーン(10秒くらいある)なのですが、このストリングスが大きくうねって聞こえて気持ち悪かった、という人がいます。レコードでもラジオでも、どこで聞いても同じだったというんですね。私も言われてみればその通り、たしかにうねっていたなあと思いました。ところがCDになると、これがうねっていません。つまり、録音されたマスターテープは異常がなかったという事になります。
これ、アナログレコードのワウ・フラッターなのでしょうね。それも、モーターやベルトの回転ムラによるものではなく、たぶんレコード盤の偏心が原因なのではないかと想像します。偏心というのは中心から片寄っている事で、つまりレコード盤の真ん中に空いている穴はどれほどの精度で中心がとれているんだろうか、その微妙なずれによって周期的な速度変化が起きているのではないか、と思うのです。
ほとんど全てのレコードでこういったワウ・フラッターは起きていたのでしょうが、特にこの曲のような比較的高い音程のロングトーンでは目立ってしまったのでしょう。こういったエピソードも、アナログならではの話題ですね。
ちなみに高級オーディオでは、こういったレコード盤の偏心を補正するレコードプレーヤーなんて物も存在します。
以上、今となっては何の役にも立たない、「ワウ・フラッター」についてお話ししました。
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Category: あなろぐ懐古ログ
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