あなろぐ懐古ログ 「スクラッチノイズ」

2013.03.15(Fri)

今回は「スクラッチノイズ」についてあれこれとお話ししようかと思います。

スクラッチ(scratch)には「引っ掻く」とか「こすり取る」などという意味があり、「スクラッチノイズ」という言葉も様々な分野でそれぞれ違った意味で使われていたりします。が、ここは音をテーマにしたブログの「あなろぐ懐古ログ」というコーナーですから、もちろんここでいう「スクラッチノイズ」とは、アナログレコードを再生する際に発生する「チリチリ」「パチパチ」「プチプチ」などといった雑音の事であります。

恐ろしい事にアナログレコードの音を聞いた事がないという世代も増えてきていますが、実際に聞いた事のある人ならば「ああ、あの音のことね」と、必ず思い当たるのではないでしょうか。

アナログレコード鑑賞時に避ける事ができないこのスクラッチノイズは、かつて音楽やオーディオのファンから忌み嫌われていたように思います。少しでもノイズを軽減しようと各種クリーナーや対策グッズを駆使し、日々メンテナンスに精を出していた人も多いことでしょう。
ところが音楽のメディアがCDに移行し、スクラッチノイズが撲滅されてしまうと「いやいや、あのプチプチノイズこそが気持ちよかったのだ」などという人が多く現れてくるんですね。レトロな雰囲気を出すために、わざとスクラッチノイズを加えた楽曲が製作されCDになっていたりします。ほんと、人間って勝手な生き物だなあと、ちょっと嬉しくなってしまったりします(笑)。

さて、スクラッチノイズは、静電気や傷、そしてホコリやカビなどの汚れが主な原因とされています。
という訳で有効な対策は、やはり掃除でしょう。

思い返してみれば様々なレコードクリーナーがありました。スプレー式の物や、クリーナー液を注入して拭き取るタイプの物、粘着ローラーのようなダストクリーナー、さらにはトーンアーム状のブラシやローラーを使っている人もいました。それぞれの愛用者には、それぞれの持論やこだわりがあったのでしょうね。
私はスプレー式クリーナーでレコード盤を拭いた後の、あのほのかな匂いが結構好きでした。なつかしいですねえ。でも、鼻に向けて直接スプレーしちゃあいけませんよ。って、そんな奴はいないか(笑)。

ちょっと変わったグッズとしては、レコード盤にパックをしてホコリなどの汚れを一気にとってしまうという物もあり、中には(木工用?の)ボンドなどを使ってパックしてしまう強者もいたようです。また、ジャブジャブ水洗いしちゃうという話も聞いたことがあります。なんでもスポンジで洗うと効果抜群なんだとか…。

レコード針の掃除も大切です。レコード盤を丁寧に掃除してもすべてのホコリを除去できる訳ではありませんし、プレーヤーのフタを閉じていても、再生中に部屋のホコリが付着する可能性はゼロではありません。そしてレコード針はそんな盤面の溝をすべてトレースするのですから、再生後にはホコリがびっしり付着していたりします。で、こちらも専用のクリーナー液をつけたブラシで慎重に掃除する訳です。掃除する際にはプレーヤーの電源を切るか、アンプのボリュームを絞っておかないと「ボッ」という大きな音が出てびっくりするばかりでなく、スピーカーを傷めてしまう事もあるので注意が必要ですね。

また、レコード盤が直接触れる内袋も、劣化したりホコリやカビが付着するという事で、定期的に交換するという人もいたようです。まあここまでくるとかなりのマニアなのでしょうけどね。

思い返せば、私たちはレコードをなるべく良い音で楽しむために、傷つけないようにいつも慎重に取り扱い、愛情をこめて丁寧に掃除していた訳です。音楽があまりにも手軽になってしまった今から思えば、当時の音楽はとても貴重で大切な物だったようにも思えますね。どちらが良いのかを議論するのも楽しいとは思いますが、まあ答えは出ないでしょうし、ここではあえて触れないでおくことにしましょう。


さて、ここで私が録音スタジオに就職した頃のお話をひとつ。

たしか当時はCDが発表されたばかりで、音楽メディアはまだまだアナログレコードが主流でありました。
映像作品やラジオ放送で使われる音楽も例外なく、メディアはアナログレコードです。そんな録音現場でのスクラッチノイズ対策は、さぞ高級なクリーナーや、もしかしたら大掛かりなマシンを使っているのではないか、などと思っていた若き日の私が目撃したとんでもない衝撃の光景とは…!!!
(軽薄なテレビ番組調でお送りしています)

録音スタジオのターンテーブル(レコードプレーヤー)の横には、水の入ったマグカップと小さく折り畳んだガーゼが置いてありました。水は何の変哲も無い普通の水道水です。これがスクラッチノイズ対策のすべてでありました。

再生時にはレコード針がトレースする溝のあたりに、ビチャビチャに濡らしたガーゼを当てるのです。もちろんレコード盤は水でビチャビチャになります。つまり、大量の水でホコリを浮かせてしまうんですね。で、浮いたホコリをガーゼで受け止めるという訳です。再生中は時々マグカップの水にガーゼを浸けて、盤面はいつもたっぷりの水が乗っている状態を保ちます。これならもちろん静電気もおきませんし、なんと再生音にも影響は出ないのです。(厳密には多少の影響はあるのでしょうが)
なんともワイルドな、しかも効果的な方法で、いやはや本当にびっくりしましたね。

ただし再生中は常に手でガーゼを当て、水を供給しなければならないので、ソファに腰掛けてお茶でも飲みながらゆっくり音楽を鑑賞する、などといったことはできません。あくまでお仕事としてノイズの少ない再生をするための方法です。しかも、再生後には水が乾いてホコリが固まり、盤面はそれはそれはヒドい状態になります。次に再生する時にも必ず同じ方法でホコリを浮かせなければなりません。一度やってしまうと、二度と戻れない禁断のスクラッチノイズ対策なのです。試してみたい方は、あくまで自己責任でお願いしますね。私は一切の責任を負いませんのであしからず。まあ、ひとつのエピソードとして軽く読み流していただければ幸いです。


という訳で、以上、今となっては何の役にも立たない「スクラッチノイズ」について、個人的な思い出話も含めてお話しいたしました。


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COMMENT

ももPAPA

こんばんわ♪

アナログレコードのスクラッチノイズ
懐かしいです。
あの針を落としたときのジャリ・・パチ っていう独特の音

レコードクリーナーの あのほのかな匂いも好きでしたね。
CDになっていって便利になった反面 あの感覚を味わえなくなったことにちょっと寂しさを感じたりも・・

ところで、録音スタジオのスクラッチノイズ対策 そうだったんですね。
ちょっとした驚きです。

2013.03.16(Sat) 22:53 | URL | EDIT

cyah

こんばんは。

レコードの水洗いというのは聞いたことがありますが、
水つけて再生というのは初めて聞きました。
皆様苦労されていたんですねぇ。

私が使ったことがあるのは自走式クリーナー
(盤面に置いてスイッチ入れると、
ターンテーブルセンターを軸にしてブラシ付きのクリーナーが回るタイプ)と、
こちらでも出てきたトーンアーム状のブラシやローラー
(レコード針の前にセットして、連動するヤツ)ですね。

2013.03.16(Sat) 23:11 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

かつてスクラッチノイズは、お気に入りの音楽といつも一緒にいた相棒みたいなものだと言ったら言い過ぎでしょうか。でしょうね(笑)

スタジオでのスクラッチノイズ対策、私も相当びっくりしたのですが、たまたま私の入ったスタジオがそういう事をやっていただけなのか、業界全体(ってこともないでしょうけど)がそうだったのか、定かなことはわかりません。

2013.03.17(Sun) 07:13 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
コメントありがとうございます。

水洗いも相当なパワープレイだと思っていたのですが、ほんと、水びしゃびしゃの再生には驚きました。

ああ、自走式クリーナーもありましたね。色んなアイデアのグッズがあったんだなあと、今更ながらに感心してしまいます。
トーンアーム状のやつは高校生の頃に友達が使っていて、とてもうらやましく思っていました。こちらも懐かしい記憶のひとつです(^^)

2013.03.17(Sun) 07:19 | URL | EDIT

ももPAPA

さはんじさん こんばんわ

そうですね。
針を置いたときのあのスクラッチノイズの何ともいえない感覚は好きでした。

それと、8トラオープンデッキのテープをスリットに差し入れて それが回ってテープがピン と張る瞬間
あれも好きでしたね♪

2013.03.19(Tue) 22:24 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん

そういえばアナログ機器は動作する部分が見えたり、直接手で触れることができましたね。
レコード針を盤面にそーっと下ろすとか、オープンリールテープを手早くデッキにセットするというテクニックが身に付いたものです。
デジタル機器はほとんど何も見えないし、手も触れる事ができません。ちょっと寂しい気がします。

2013.03.20(Wed) 00:05 | URL | EDIT

PATTI

遅まきながら

さはんじさん、こんにちわ!

kikiさんと一緒で、スクラッチノイズに愛です。
無音だと不安が募り、何か音がある方が、まってる時の期待感は大きいと思います。
スプレーの香り、私も大好きでした。
あの香りのファブリーズかダウニーのような柔軟剤が出たら、絶対買う*\(^o^)/*

2013.03.24(Sun) 08:46 | URL | EDIT

さはんじ

Re: 遅まきながら

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

たしかにあのチリチリが聞こえると、これから音楽が始まるという期待感が高まりますね。

ファブリーズ「レコードスプレーの香り」ですか。それはスゴい。
身体にはあまり良くなさそうな気もしますが(^^;

2013.03.24(Sun) 22:37 | URL | EDIT

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