The Ventures『KNOCK ME OUT』

2013.05.10(Fri)


ノック・ミー・アウト(紙ジャケット仕様)ノック・ミー・アウト(紙ジャケット仕様)
(2004/07/14)
ベンチャーズ

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久しぶりのCDレビュー、今回は1965年に発表されたザ・ベンチャーズの『ノック・ミー・アウト』です。通算15枚目となるこのアルバムは、最強メンバーによる最高傑作であるという人もいるくらいの名盤で、ベンチャーズの代表曲ともいえる「10番街の殺人」など、カバー曲を中心に収録した構成になっています。キーボード・プレイヤーとしてレオン・ラッセルも参加しているらしいですね。
1965年2月発売ということは、ちょうど私が生まれた頃です。恐れ多くもこの名盤を、またもやサウンド・サイドなりにレビューしていきたいと思います。

ベンチャーズといえば何といっても、高出力ピックアップを持つモズライトギターのナチュラルに歪んだ硬めのギターサウンドが特長ですね。これ、好きな人にはたまらないのでしょうねえ。もちろんこの『ノック・ミー・アウト』も、まさにそのベンチャーズ・サウンドが満載のアルバムです。

アルバム全体を通して、各楽器が左・中央・右にはっきりと配置された「三点定位」です。左チャンネルにリズムギターとベース、中央にリードギター、右チャンネルにドラムス、という実に潔い定位が基本パターンで、曲によってギターやキーボードなどの楽器が追加されるという形になっています。私はドラムやベースが左右どちらかに振り分けられた定位はあまり好きではないのですが、勢いのあるドラムとリズムギターのバランスがうまくとれていて、さほど違和感を感じませんでした。この左右のリズムのバランスは、かなり綿密に計算されているのかもしれませんね。

周波数帯域はさほど広くない感じです。ハイエンドもローエンドもそんなに出ていないし、全体にやや詰まったような音という印象ですが、シンバルなどは生々しい音がしてます。主役のギターは少し耳に痛いくらい硬いサウンドに思えますが、これはアナログレコードではもうちょっとマイルドに聞こえていたのかもしれません。

さて、1曲目はビートルズのカバー曲「アイ・フィール・ファイン」です。イントロのフィードバック音も忠実に再現されていますね。基本パターンの楽器構成に、エレキピアノとリフを弾くギターがプラスされ、どちらも中央に定位しているようです。ベースの音色はとても柔らかく、バスドラムも控えめなので低音が目立たず、全体にギターが際立って聞こえます。シンバルもかなり強調されていますね。各楽器の定位は、リバーブも含めて完全に分離しているようです。

2曲目の「ラヴ・ポーション No.9」も、基本の楽器構成にエレキピアノが入っていますが、この曲ではドラムと同じ右チャンネルに定位しています。1曲目とは対照的にベースの音量が大きめにミックスされているので、それとのバランスを考えたのかもしれません。リードギターには軽くファズがかかっているようで、独特の音色をしていますね。

シンセサイザーらしきリフが印象的な3曲目「トゥモロウズ・ラヴ」は、左チャンネルにアコースティックギターが聞こえていますね。サビ部分ではシンセの音色に似た高音のコードを鳴らすギターが中央にオーバーダブされているので、ギターは全部で4本使われているでしょうか。ドラムにはリバーブが深くかけられていますが、このリバーブも右チャンネルのみから聞こえてくるので、ちょっと不思議な空間を感じてしまいます。

4曲目はロイ・オービソンのヒット曲「オー・プリティ・ウーマン」です。この曲ではドラムのリバーブが左チャンネルからも聞こえて、正常な空間が戻ってきたようでホッとしました(笑)。中央にギターが2本、さらにアコースティックギターも聞こえているかな。エレキピアノも鳴っているでしょうか。印象的なあのリフのハーモニーが心地良いですね。他の曲ではシンバルが強調されがちなドラムが、この曲はいいバランスで聞こえています。マイクのセッティングが違うのかな、という気がします。

5曲目「夢のマリナー号」は、メロディをとるシンセサイザーとトレモロを伴ったエフェクティブなリードギター、そして全体に深くかけられたリバーブがスペイシーな雰囲気を作っています。おそらくモノラル収録であろうドラムセットも、エフェクトの影響でしょうか、若干の広がりが感じられます。リズムギターもベースもやや歪んだゴリゴリと硬めのサウンドで、元気いっぱいのプレイを聴かせてくれます。

6曲目の「ホエン・ユー・ウォーク・イン・ザ・ルーム」のイントロでは、ハムノイズが聞こえていますね。リードギターのピックアップが拾ったノイズが、浅めにかけたられたファズによって強調されたのかもしれません。あるいはアンプのノイズでしょうか。これも楽器の音のうちである、という事なんでしょうね、きっと。中央にはリードギターとエレキピアノ、そして控えめですがもう1本コードを弾くギターがあるようです。右チャンネルにはハイハットと一緒に、マラカスかシェイカーのような音が聞こえています。

このアルバムにはいくつかのバージョンが存在していて、それによって曲順や、場合によっては曲目も違っているようですが、私の手元にあるCDでは、次の7曲目はエヴァリー・ブラザーズのカバー曲「ゴーン・ゴーン・ゴーン」です。ファンキーなエレキピアノのリフがいい感じですね。リードギターはかなり歪んでいます。中央にはもう1本、ギターがいるようですね。サイドギターはアコギのようですが、これも少し割れ気味で独特の音色をしています。右チャンネルのドラムに重なって、タンバリンのような音も聞こえています。

さあ、お次の8曲目はこのアルバムのハイライトとも言える「10番街の殺人」です。おそらく当時のマルチトラックレコーダーは最大で8トラックだと思うのですが、様々な工夫をして多くの楽器をオーバーダブしているようです。中央にリードギターとリフを弾くギター、それとリズムを後押しする高音のチョーキングも別のギターかもしれません。左チャンネルにはクリーンなトーンのカッティングと、歪んだミュートギターが聞こえます。深いリバーブのかかったドラム、ベース、さらにオルガン、エレキピアノ、カスタネットのような軽い音色のパーカッションも入っています。ライナーノーツの解説によると、ブリッジ部分のソロはシンセサイザーではなく、なんとサックスをレズリースピーカーに通したものらしいです。こういう実験的な試みは素晴らしいですね。
さらにさらに、よく聴くとオルガンの音もオルガンらしからぬポルタメントのようなベンド気味に聞こえる部分があって、これは何かやってるな、と思えてきます。シンセあるいは先ほどのサックスか何かが重ねられているのではないでしょうか。そういえば、イントロの唐突なベースのグリッサンドもオーバーダブっぽい気がします。
アレンジも録音も、凝りに凝った大作ですね。

9曲目「シーズ・ノット・ゼア」は、ファズのかかったリードギターの、トレモロアームを使ったプレイが印象的な曲です。広がりの感じられるエレキピアアノのソロがいい感じですね。太い音色のベースが弾くフレーズもなかなかに印象的で、他の曲に比べてバスドラムがしっかりと目立っています。低音楽器がしっかりと前に出ているので、全体に重い雰囲気を作っていますね。その代わりと言ってはナンですが、リズムギターは可哀想なくらい控えめにミックスされています。それにしてもシンバルの音はデカすぎませんか?(笑)

10曲目「ロンリー・ガール」はオーバーダブなしの、基本的な楽器構成のようです。楽器が4つしかないのは、このアルバムの中でこの曲だけだと思います。曲調はバラードっぽいのですが、ギターはがっつり歪んでいるし、ドラムも深いリバーブがかかっているものの、非常に力強い演奏になっていますね。バスドラムの押し出しがとくに強力です。それに対してベースは芯のないような、ふんわりとした柔らかい音色です。それぞれの楽器は残響も含めて完全に三点定位に分離していて、各楽器の演奏をはっきりと聴き取ることができます。

一転して、次の11曲目はノリの良いロックチューン「バード・ロッカーズ」です。リードギターにファズが深めにかかっていて、ロングトーン(解放弦なのかな?)がいい感じにうねっていますね。この曲のギターをコピーするなら、このエフェクトのうねり具合までしっかりコピーしないと間延びした演奏になってしまいそうです。バスドラムの音色がやや硬く、独特の響きを持っています。中央のオルガンが部分的に細かいスタッカートのプレイをしていて、ちょっとエレキピアノのように聞こえるのが面白いと思います。あるいは本当にエレキピアノだったりして?(笑) この曲も定位は完全にセパレートしているようです。

ラスト12曲目は、ボーカルというか、スキャットをフィーチャーした「シャ・ラ・ラ」です。ボーカルはサイドギター担当のドン・ウィルソンだそうですが、いい感じにラフな、味のある声で「♪シャ・ラ・ラ〜」と歌っていますね。リードギターのプレイするリフは、どうやらダブリング(同じ演奏を2回重ねている)のようです。さらに中央にはコードを弾くギターもありますね。各楽器のリバーブは深めで、包み込むような広がりと厚みが感じられます。そもそも曲調が違いますが「夢のマリナー号」とは対象的に、ベースはふんわりと柔らかな音色です。そしてこの曲でもドラムは元気いっぱい、非常に勢いがあり、このメル・テイラーのドライブ感あふれるドラムもベンチャーズ・サウンドの特徴のひとつといえるでしょう。


ベンチャーズのCDレビューといえば、ギターのプレイを中心にしたものが一般的だと思いますが、そういった内容は他のサイトにお任せして、ここではこのブログらしく全体のサウンド傾向をメインに記事を書いてみました。時代性もあり、決して良い音であるとは言えませんが、サウンドも音楽の雰囲気をつくる重要な要素であることを考えると、やっぱりこのアルバムはこの音でなければいけないのかもしれませんね。
とは言うものの、おそらくこれが当時の最先端サウンドだったであろう事も容易に想像できます。さらにそのアレンジやレコーディングの緻密さも含めて、ほとんどの人は、こんなサウンドを聞いた事がなかったのではないでしょうか。その後のポピュラーミュージックに多大な影響を与えているのは間違いないと思います。

そして、このアルバム『ノック・ミー・アウト』を聴いて特に印象に残ったのは、各楽器の演奏の勢いの良さです。たとえスローテンポな曲であっても、どの音からも「行くぞ〜!」というような気合いが感じられ、そのぶつかり合いがトータルなバランスの良さに繋がっているのかな、と思いました。
オーディオ的な音質の善し悪しよりも、演奏の力強さとその一体感、それこそが黄金時代のベンチャーズ・サウンドの魅力なのでしょう。
1曲の長さが2分そこそこという潔さもいいですね(笑)。


   


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COMMENT

ももPAPA

こんばんわ♪
いつもありがとうございます。

ベンチャーズ 大好きでした。
ノーキーエドワーズの繰り出すあのフレーズに魅せられ、初めてコピーにチャレンジした曲が "朝日のあたる家" でした。懐かしいです♪

2013.05.29(Wed) 00:17 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

かつてのエレキ小僧(今は立派なオヤジ世代)がこぞってコピーしたのがこのベンチャーズなんですよね。とは言うものの、私はほとんどベンチャーズを聞いた事がありませんでした。「パイプライン」や「ダイアモンド・ヘッド」などの有名曲しか知らなかったのです、恥ずかしながら。

実は最近になって、とある事情からベンチャーズを聴く機会があり、その中からこの名盤のレビューを書いてみたくなったのであります。
ということで、私にとっては懐かしい訳ではないのですが、いいアルバムであることは間違いありません。

…なんだかファンの人におこられそうなコメントだなあ(汗)



2013.05.29(Wed) 22:10 | URL | EDIT

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