真保裕一「真夜中の神話」

2013.06.21(Fri)


真夜中の神話 (文春文庫)真夜中の神話 (文春文庫)
(2007/08)
真保 裕一

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本のレビューも久しぶりですね。今回は真保裕一の長編ミステリ小説「真夜中の神話」をご紹介しようと思います。とある少女の歌声が持つ奇跡的な能力を巡って展開するこの物語は、真保裕一らしいエンターテインメント性に富んだ作品で私は大好きなのですが、綿密な取材の上に構築されたリアルな物語に定評のある作者にしては、現実離れしたテーマを扱っている等の理由によるのか、残念ながらネット上の評判はあまりよろしくないようです。

仕事に没頭するあまり、自らの不注意により家族を失った過去を持つ薬学の研究者・栂原晃子(つがはらあきこ)は、新たな研究テーマのためにインドネシアへ向かう途中で飛行機の墜落事故に巻き込まれる。ただひとり命を取り留めた晃子を助けたのは、山奥の村の原住民だった。村には神秘的な歌声で毎夜人々を癒す少女がいて、その歌を聞いた晃子は重傷を負ったにもかかわらず驚異的な早さで回復する。
村について一切口外しないことを約束させられ山を下りた晃子は、奇跡の生還者として世間の注目を浴びることとなった。あの村は昔から吸血鬼の住む村として伝えられていたのである。
その頃、町では吸血鬼退治を模した連続猟奇殺人事件が発生していた。その被害者はいずれもあの村に関係があるらしいと知った晃子は、再び山奥の村へ向かう決意をする…。


この緻密な作品のあらすじをたった数行で表すという事自体、無理があると始めから解っていましたが、数々の重要な要素を泣く泣く削ぎ落とした結果、こんなざっくりとした文章になってしまいました、すみません。って、誰に謝っているのかわかりませんけど、なんだか本当にすみません(笑)。

冒頭にミステリ小説と書きましたが、ミステリの要素が強い冒険小説といったほうが近いのかもしれません。特に終盤の追跡・救出劇は圧巻で、このままハリウッド映画にできるのではないかと思ってしまうほどに読み応えたっぷりです(実際に映像化されたらきっと文句を言っちゃうと思いますけどね)。しかも、それまでに張り巡らされたいくつもの伏線が収斂し、数々の人物や事件にまつわる謎が、この追跡劇の中で次々と明らかになっていくというオマケつきです。したがって、ラストはくどくどと説明をせずにスパッと終わる、この潔さもいいと思いますよ。

さて、この作品の核となる少女の歌声について、です。
あまり詳しく書くとネタバレになりかねないので、ざっくりと。
インドネシアはカリマンタン島(ボルネオ島)の山奥で、定住せずに移動を繰り返す部族の村にこの少女はいました。その歌声には不思議な力があり、人々の心を癒すだけでなく、治癒能力までをも促進してしまうのです。飛んでいるコウモリでさえも羽を休め、少女の歌に聞き入ってしまう…。
この奇跡のような現象を身をもって体験した主人公・晃子は、少女の歌声には人間の可聴範囲外の音、つまりは超音波が含まれているのではないかとの仮説をたてます。
イルカの発する声や、インドネシアのガムラン音楽に含まれる超音波に癒しの効果がある、という話はよく聞きますね。実際にそういった研究も進んでいるようですから、ここまでは無理のない話です。

しかしさらに、少女の歌声に含まれる超音波によって脳内の覚醒系ホルモンの分泌が促され、ひいては治癒能力が…などと展開してくると、そこに信憑性があるのかないのか、私なんぞには判断できません。現実離れした夢物語だと突き放してしまうのは簡単ですが、そこは作品の世界を受け入れて、ストーリーを楽しむべきなのではないかと私は思います。まあ、感じ方は人それぞれで良いと思いますけどね。
実は、この仮説はさらに発展して、もっともっと大きなテーマに関連してくるのですが、そこまでいくと完全にネタバレになってしまうので、ここから先はごにょごにょ…本を読んでください、ということでご勘弁いただきたいと思います。

さてさて、少し話を戻しますが、晃子の仮説が正しいかどうかの裏付けをとるために、村へ向かう彼女に同行する人物がバット・ディテクターという興味深い観測機材を持参します。これはコウモリの発するような超音波を人間の可聴域の音声に変換する装置とのことで、少女の歌声に超音波が含まれているかどうかを調べるというのです。
私はまったく知らなかったのですが、これは実在する装置で市販もされています。コウモリの観測の他に、空気やガス漏れの場所を特定するなどの用途に(エア漏れ時にも超音波が発生するらしいです)使用されているとか。いやいや、まだまだ知らないことがたくさんありますね(私だけ?)。
はたして仮説の通りに、このバット・ディテクターが大活躍する場面がやってくるのか? という事も楽しみに読み進めていただきたいと思います。


なんだかよくわからないレビューになってしまいました。実は、歌声に関する不思議な現象を扱ったミステリ小説がもうひとつあって、近いうちにその本もご紹介するつもりなのです。この中途半端な記事の続きは、そちらで書きたいなと思っている次第です。ネタバレ回避のために、また中途半端に終わってしまう可能性も高いのですけどね(汗)。





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COMMENT

PATTI

パチパチ!
すごく読みたくなりました。
人間の可聴範囲外の超音波、興味ありますもん^ ^あと、秘境、バンパイア、他言無用などの要素となると、
ほんと、映画化されそうな感じですね。
ジョディ•フォスターあたりに主演して欲しいな*\(^o^)/*

2013.06.24(Mon) 06:33 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

読み応えありますよ〜。敵か味方かわからない人物がたくさん出てくるし、終盤には銃撃戦もあったりして、本当に映画のようです。
女性の場合、主人公の晃子に感情移入できるかどうかが、この作品の評価に大きく関わってしまうのかな〜、という気がします。

2013.06.24(Mon) 17:14 | URL | EDIT

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