コラボ「バードランドの子守唄」その3 ボーカルの調整

2013.07.15(Mon)

オケの音がだいたい決まったら、いよいよボーカルの調整に入ります。

私はあらかじめ決まったオケの中でボーカルの調整をしたほうがわかりやすいし、後で微調整する手間も少なくて済むと思うので、オケからボーカルへという順で作業を進めています。
人によっては一番最初に主役であるボーカルの音づくりをしてしまうケースもあるでしょうし、それもひとつの方法であって、どちらが間違いでも正解でもありません。その人なりのやりやすい手順がありますから、まずは決めつけずに色々と試してみるのが良いかと思います。

では、ボーカルトラックの調整を始めていきましょう。

当たり前ですが、ボーカルは人間の肉声をマイクで収音しています。まあボーカロイドは例外ですけど。
ですから、録音の状態はそれぞれみな違っています。マイクの種類、部屋の状態、歌手のコンディションなど色々な要素によって音質も変わってきますし、また雑音が入る場合もあるでしょう。人によって声の出やすい音域と出にくい音域が当然あるし、マイクと口の距離や角度を常に一定に保つことも難しいので、音量がまばらになるのも仕方のない事です。これは決してボーカリストのせいではありません。むしろボーカリストにはそんな事を気にせずに、最高のパフォーマンスをしてほしいものです。(本音を言えば、ちょっと気にしてもらえるとこちらの作業が楽になるし、仕上がりもきれいになるのですけどね、えへへ)
ということで、このあたりの録音状態をフォローするのもミックスダウン時の重要な仕事となります。

このボーカルトラックで一番気になるのはこもったような音質なのですが、それはちょっと我慢して、まずは音量の調整から始めます。音量が整っていれば、音質補正のエフェクターの効き具合もより均一になり、良い結果が得られるはずだからです。例えていうなら、お化粧前の下地づくりといったところでしょうか。

普通であればここでコンプレッサーを使うところなのだと思うのですが、曲調とオケの厚みなどを考慮して、フェーダー操作で音量を整えていくことにしました。手動コンプレッサー、略して「手コンプ」などと言われる手法です。実際にはフェーダーオートメーションを使うので、手動ではありませんけどね。コンプレッサーで音量の大きなところを均一に抑えるよりも、自然な感じになるだろうと判断したからです。

オケの中でボーカルが埋もれてしまうところのないように、極端に大きなところがないように、つまりは音量のばらつきがなく聴きやすいように、しかしながらボーカリストの抑揚表現を殺さないように細心の注意を払いながら、オートメーションのカーブを描いていきます。波形表示も大いに参考になりますが、耳で聴いた印象を何よりも最重要視するべきです。
根気の要る作業ですが、この曲のメインとなる大事なパートですから、慎重に慎重に、ちまちまと進めていきます。私はマウスを使っていますが、コントロールサーフェスを使って実際にフェーダーを手で操作したほうが楽かもしれません。

さすがは千坂さん、音量のバラつきはほとんどありませんね。基本的には微調整で済みました。強いて言えば、一番最初の歌い出しの部分の音量が安定していなかったのでそこをフォローしたのと、あとはアタックの強い部分を抑えるくらいです。1カ所だけリップノイズが気になるところがあったので、そこはフェーダーを大きく下げて聞こえないようにしました。

※画像をクリックすると拡大表示されます。

vocal_auto2.png


作業が終わったら、このボーカルトラックの出力をメインアウトからバスアウトに切り替え、新たなトラックに入力します。前回の「オケの調整」の最後にグループフェーダーを作ったときの要領ですね。ボーカルトラック単独ではオートメーションにフェーダーを支配されているのでトータルのボリュームコントロールができません。ですから、音量を整えたボーカルをさらにコントロールするために、新たなフェーダーに立ち上げ直した訳です。音質補正などのエフェクターもこちらのトラックにインサートしていきます。

さて、ボーカルを聴いて気になったのが数カ所で聞こえるポップノイズです。これはマイクに強い息が当たることで混入する「ボッ」という低いノイズで、「吹かれ」などと呼ばれます。ボーカルよりも低い周波数のノイズなのでイコライザー(以下EQと記します)で軽減できるはずです。
ただ、ナレーションや語りと違い、歌の場合は空気感というか、気配のようなものを感じることもあるので、低域をすべてバッサリとカットしたくはありません。ピンポイントでノイズの周波数を探ってみましょう。

気になるポップノイズの近辺を、数秒間ループ再生しておくと作業がしやすいと思います。EQの周波数帯(Q)をせばめてゲインを持ち上げ、周波数を動かしていき、ノイズが大きくなるポイントを探し出したら、その場で今度はゲインを下げます。あとは不自然にならないよう、ノイズがなるべく小さくなるように微調整してよりベターな設定を見つけます。
これで一番衝撃的な「ボッ」という低音はだいぶ目立たなくなりました。まだ「ガサッ」というやや高い音域のノイズは残っていますが、これをいじるとボーカルの音質に影響するので、仕方ありません、そのままにしておきます。

vocal_EQ1.png

さあ、いよいよこもった音質をクリアにする作業です。こもっているという事は、高音域の周波数成分が足りないということですから、新たにEQをインサートして高音域をどばっと持ち上げます。ピアノの時とは違い、ボーカルの音量は上限までまだまだ余裕がありそうなので、ここは引き算をする必要はないでしょう。
とはいっても高音域を持ち上げ過ぎると、音が薄くペラペラになったり耳障りな音になったりするので、音を聴きながら周波数やゲインを慎重に調節します。

前回のコメント欄で少し話題にのぼりましたが、音の調整をしているときに耳が慣れてくると、現在の音や、目指す音、良い音悪い音がわからなくなってしまいがちです。適度に休憩をとって、コーヒーを飲んだり、好きなCDを聴いたり、体操をしたりして、耳をリフレッシュしつつ作業を進めていくといいでしょうね。

vocal_EQ3.png

これでボーカルがだいぶクリアになりました。ところが高音域を強調したため、特に曲の後半でブレス(息継ぎ)の音が少し耳障りに聞こえるところがでてきたので、その部分だけ音量が下がるように先ほどのフェーダーオートメーションを少し描き加えます。ブレス音はカットしすぎると不自然になるので、程よいさじ加減で調整します。もしも手を加えて不自然になるのなら、そのままにしておくほうがマシだと私は思います。

vocal_breath.png

このあと、ディエッサーをインサートします。これは特定の高音域にだけかかるコンプレッサーで、耳障りな歯擦音を抑えてくれる便利なエフェクターです。歯擦音というのは主にサ行の子音で強調される高い音です。先ほどEQでだいぶ高音を強調してしまったので、ディエッサーもやや深めにかけました。
浦太さんお手製のエキサイター成分のトラックは、このディエッサーとのマッチングがよろしくないようなので、今回は使用しませんでした。浦太さん、すみません。

vocal_deEss.png


部分的に音質がザラついている箇所があって気になるのですが、残念ながらこれを補正するのは難しいようでした。でも、全体的にはクリアかつ自然な感じになったのではないかと思います。

以上でボーカルトラックのトリートメントは、とりあえず終了です。





次回はボーカルやオケにリバーブ(残響)を付加し、最終ミックスダウンを行います。


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COMMENT

浦太

手コンプ…手間のかかる作業をご苦労様でした。
さはんじさんらしい、そう思いました。

やはり、無精者の私とは一味も二味も違いますゎ。

エキサイター成分、気にしないでください。
元々、
「さはんじさんの音作りには不要だろう」
と思っていましたし、むしろ、
「私に義理立てして無理に使って頂く事」
の方を危惧しておりましたので。

2013.07.16(Tue) 23:05 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>浦太さん
コメントありがとうございます。

まあ、手間がかかると言っても、何時間もかかる訳ではありませんので。
ジャズやバラードなどの場合は特に手コンプがしっくりくるような気がするんです。

お気遣い、重ねてありがとうございます。

2013.07.17(Wed) 00:25 | URL | EDIT

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2013.07.17(Wed) 23:31 | | EDIT

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