Steve Gadd Band『GADDITUDE』

2013.09.13(Fri)


ガッドの流儀ガッドの流儀
(2013/08/07)
スティーヴ・ガッド

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先月のことですが、なんとなんと、世界的トップドラマー、スティーヴ・ガッドのリーダーアルバムが発売されました。スタジオ録音としては1988年に発表されたザ・ガッド・ギャング名義のアルバム『ヒア・アンド・ナウ』以来、25年ぶりとのことです。アルバムタイトルは『GADDITUDE』、もちろんこんな言葉は存在しない訳で、本人の名前「GADD」と、姿勢や態度を意味する「ATTITUDE」を組み合わせた造語なのでしょう。
かつてソロ名義で『GADDABOUT』というアルバムを発表(1984年)していますし、ガッドさんはこういった言葉遊びが好きなのかもしれませんね。日本語では『ガッドの流儀』という少々大仰なタイトルが付けられています。
最近ではあまりCDを購入しなくなった私ですが、スティーヴ・ガッドの新譜とあっては気にならないはずがありません。発売を知ったその場で即ポチしちゃいました。という訳で(発売から1ヶ月ほど経っていますが)緊急レビューといきましょう。

参加ミュージシャンは、ジェームス・テイラーのバンドメンバーのようですね。ギターはマイケル・ランドウ、キーボードはラリー・ゴールディングス、ベースはジミー・ジョンソン、そしてトランペット&フリューゲルホルンにウォルト・ファウラーという布陣です。これらのメンバーがスタジオセッションを重ねて作り上げたアルバムなのでしょう。

音楽的には前作(と言っていいのでしょうか)『ヒア・アンド・ナウ』のような、キャッチーでノリの良いR&Bを期待すると裏切られます。今回はもっとジャズ寄りの落ち着いた曲に、少しR&Bの味付けをしたようなアルバムだと私は感じました。もちろんこれだけの凄腕ミュージシャンが揃っている訳ですから、その変幻自在な演奏は聴き応え充分です。

サウンドの全体的な印象としては、音圧たっぷりの太く柔らかく存在感のあるリアルなサウンド、という感じですね。バシッとシャープな演奏とサウンドが聴けないのは至極残念ですが、どっしりと落ち着いた余裕のある演奏は実に心地良く、聴けば聴くほど味のあるアルバムです。

世界最高峰ドラマーのリーダーアルバムということで、まさにドラムが主役といった感じにミキシングされています。ギターは常に左チャンネルに定位し、キーボードは基本的に中央から右チャンネルに広がった感じでソロをとり、ロングトーンのオルガンやシンセパッド等は音量控えめに左右に大きく広げられています。ベースとホーンは中央に定位していますが、重心の低い太く柔らかいベース、ハイトーンのミュートトランペット、柔らかなフリューゲルホルンと、それぞれの楽器はまったくドラムのサウンドを邪魔していません。そのドラムサウンドのリアルさは驚異的といっても過言ではないでしょう。演奏の細かいニュアンスだけでなく、ドラムセットの材質感までもがばっちり聴き取れるかのようです。
文字通り、スティーヴ・ガッド・ファン必聴のアルバムと言えるでしょうね。

それではそれぞれの曲を聴いていきましょう。

1曲目「アフリカ」は、マイケル・ランドウのオリジナル曲で、TOTOのカバーではありません(笑)。ちょっとアンビエントミュージック風なテイストも感じられ、神秘的な雰囲気をも持つこの曲は、重低音のベース、ボリュームを自在に使いこなすワイルドなオルガン、豊かな音色のギター、圧倒的な存在感のミュートトランペットが独特の緊張感を作り上げています。各楽器のフレーズに応じてエフェクトが変化するなどの凝った処理もされているようですね。全体に聞こえているブラシワークはオーバーダブでしょうか。終盤のとてつもなく地味なドラムソロ(笑)は、手数ではなくトータルの雰囲気で盛り上げていくという、まさに熟練の技といった感じです。
ゆったりとした曲調の割に非常に音圧感があり(ギターやトランペットは部分的にリミッター臭さが感じられるほどです)、この曲以上に音量を上げることは不可能のはずなので、私はこの1曲目の序盤でもう、このアルバムでは若々しく歯切れの良い曲を聴く事はできないなと、ちょっと残念に思ってしまいました。

さらにスローテンポな2曲目「アスク・ミー」は、音数が少なく、各ミュージシャンの演奏のニュアンスがよく聴き取れます。特にシンバルワークやスネアドラムの繊細なロール、バスドラムの強弱などを聴いていると、スティーヴ・ガッドのドラミングがどれだけ凄いかを思い知らされますね。フリューゲルホルンやエレキピアノの音色も心地良いです。

3曲目はキース・ジャレットのカバー曲「カントリー」です。原曲にR&Bのテイストを加えたかのような曲調で、だいぶゆったりとしていますが、ちょっとザ・ガッド・ギャングのような雰囲気も感じられます。グラスハープのような音色のパッド系シンセの音がバックにうっすらと聞こえていて、後半になるとオルガンが被さってきます。さらに非常に控えめなバックグラウンドボーカルが「Uh-」と歌っていて、これらが実に郷愁を感じさせるいい味を出しています。でも、よーく聴かないと聞こえてきませんよ(笑)。

4曲目の「カヴァリエ」は、少し重たいラテン系リズムで、ガッドさんお得意のマーチングドラム風スネアロールが印象的な曲です。オーバードライブさせたギターのメロディーと、淡々とリズムを刻むオルガンが程よい緊張感を作っていて、やがて突き抜けるようなトランペットのフレーズが入ってくるのが実に良い感じです。バスドラムやフロアタムの力強さも注目ポイントですね。後半になると、これまで名前通りに地味〜な演奏をしていたジミー・ジョンソンのベースがやっとソロをとります。これは幅広い音域を使った素晴らしいソロですね。

5曲目はバンド全員の共作となる「グリーン・フォーム」です。シンプルなリフで構成されたブルース調の曲で、ここへきてようやくややキャッチーな曲調が出てきたかなと思いきや、途中でリズムパターンがガラッと変わったり、変拍子が挿み込まれたり、4ビートのブルースになったりと、実はかなりトリッキーな曲だったりします。こんな曲を事も無げに演奏してしまうとは、さすが世界の一流ミュージシャンですね。ラストはテーマに戻らず、混沌とした雰囲気の中でそれぞれが自由にインプロビゼーションを繰り広げながらフェードアウトしていきます。

6曲目「ザ・マウンテン」はアフリカのピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒム の曲なのだそうです。リラックスしたカントリー調の中にオリエンタルな雰囲気もありますね。ハイハットとスネアドラムのヌケが良く、実にいい音してると思います。少しだけステレオイメージが狭くなったかな?という気がしたのはタムやシンバルをあまり叩いていないからでしょうか。と思ったら、これまで左だったギターソロが中央から聞こえてきました。このあたりの音づくりにも何か意図があるのかもしれませんね。

7曲目、ああ、やっと待ち望んでいた曲調が出てきたぞと、少しホッとしました。遅っ。「アフリカ」と同じくマイケル・ランドウの曲「フー・ノウズ・ブルース」です。これぞスティーヴ・ガッドのドラム、という感じですね。ギターソロにはワウがかかっていて懐かしいと思いきや、ギターの音色自体は実に現代的で、これはこれで新鮮に聞こえます。多彩な表現力のオルガンソロも素晴らしいし、そのバックで音色の違う2本のギター(もちろんオーバーダブでしょう)がプレイする掛け合いもいい感じです。

さあ、アルバム前半のフラストレーション(笑)を払拭するかのごとく、ゴキゲンな曲が続きますよ。8曲目はこれまたキース・ジャレットのカバー曲「ザ・ワインドアップ」です。ユーモラスでトリッキーなこの曲をしっかりと支えているベースが聴き所でしょうか。さらに、ガッドがスティックをブラシに持ち替えてからのスピード感・グルーヴ感が特に素晴らしいです。こういった曲調なのに、ギターよりもオルガンのほうが目立っているのも面白いですね。演奏終わりに聞こえる笑い声も、楽しいセッションの雰囲気が伝わってきてグッドです。

ラスト9曲目は、なんとイギリスのロックバンド、レディオヘッドのカバー曲「スキャッターブレイン」です。楽曲自体はとても地味ですし、ヒット曲という訳でもなさそうなので(このあたり、私は完全に守備範囲外です)なぜこの曲を選んだのか、まったくもって謎です。この曲にも「Uh-」というバックグラウンドボーカルが入っていて、哀しげなギターのフレーズと、残響たっぷりの柔らかいサウンドのエレピが静かな雰囲気を作っているのですが、なぜかドラムだけが場違いに騒々しく暴れているような印象を受けます。原曲の歌詞には反戦的な意味合いがあるとの事なので、もしかしたらそちらに同調した選曲・演奏なのかもしれませんね。スティーヴ・ガッドが自らの音楽にこういったメッセージを込めるのは珍しいように思いますが、現在の彼にとってそれほどに関心の高い事柄であるという事なのかもしれません。


さてさて、25年ぶりに発表されたスティーヴ・ガッドのリーダーアルバム『ガッドの流儀』は、実に色々な思いの去来する(笑)アルバムでしたが、こうして聴き終えてみると本当にバラエティーに富んだ内容であった事に気付きます。ジャンルを超えて想像を絶するほど多くのセッションをこなしてきた、スーパードラマーのスティーヴ・ガッド68歳。彼が今興味のある音楽、演奏スタイル、そして様々な関心事などなど、色々な要素が盛り込まれた、現在のスティーヴ・ガッドならではのアルバムなのでしょう。
何度も聴いて、何度も新しい発見のできる、そんな嬉しいアルバムだと思います。
『ガッドの流儀』というタイトルも、それほど大仰なものではないような気がしてきました(笑)。


  


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COMMENT

PATTI

さはんじさん、待ってました〜

がっどのしんぷ、ききたーい^ ^
特に、8、9曲目辺りが。
レビューはそれからの方が
面白く読めますね。

2013.09.13(Fri) 19:33 | URL | EDIT

ももPAPA

ガッドおじさんの25年ぶりの新譜

非常に興味あります。

2013.09.13(Fri) 21:22 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

そうそう、ガッドの新譜と聞けば気にならない訳はないですよね(^^)
後半になるにしたがって気持ちが盛り上がってくるアルバムです。
少なくとも私にとっては、ですが(^^;


2013.09.13(Fri) 22:10 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

好みは分かれるかもしれませんが、ガッドおじさんのドラミングが堪能できるアルバムです。
しかし、これといったドラムソロが実はないんですよね。
そのあたりもドラマーのアルバムとしては勇気があるというか、画期的といえるかもしれません。

2013.09.13(Fri) 22:13 | URL | EDIT

PATTI

Africaが、YouTubeに上がってました。好きなリズム!
ガッドが6/8でとって、全体のグルーヴが、3連。
ソロよりもこういうトリッキーな遊びが私は好きです。
激しいのも、恋しくなりますが。

2013.09.14(Sat) 10:52 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん

目先の派手さよりも奥深い所で勝負しているんですね。
まさに熟練の技といったところでしょうか。

2013.09.14(Sat) 23:02 | URL | EDIT

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