ミニディスクの終焉に思う

2013.10.03(Thu)

先月くらいでしょうか、哀しいほどにひっそりと、MDプレーヤー生産終了のニュースが聞こえてきました。ハードウエアに関しては全てのメーカーが完全に撤退したようです。

MDの正式名称はミニディスクで、デジタルオーディオを広く普及したCDが発表されてから約10年後の1992年に、カセットテープに代わるメディアとして発表されました。テープではなくディスクを用いたデジタル録音の利便性を、初めて一般に教えてくれたのがこのMDであったと記憶しています。やがては皆さんご存知のように、iPodに代表されるメモリータイプのデジタルオーディオプレーヤーに対抗できずに消滅してしまうのですが、今回はそんなMDについての個人的な思い出話をしてみようかな〜なんて思います。

新たなメディアが開発されると、なぜか決まって2つの規格が勢力争いを繰り広げるもので、例えばVHSとベータマックス、レーザーディスクとVHD、ブルーレイとHD DVDなどが思い浮かびますね。プロ用機器ではもっとたくさんあったりしますが、それはまあ置いといて、カセットテープに代わるデジタルメディアとして発表されたMDも、対抗するDCC(デジタルコンパクトカセット)という規格がほぼ同時に発表されていました。DCCの売りは、従来のアナログカセットテープを再生できるという事で、たくさんのカセットテープ音源を所有する人はこちらに魅力を感じたのではないでしょうか。しかしながらテープメディアのDCCに対して、ディスクメディアを用いたMDは、そのランダムアクセス性を活かした編集機能の利便性を大きな武器として、やがては主流となっていきました。

MDが発表された当時、私はとある録音スタジオに勤めていました。その関係から、とある有名メーカーの新製品内覧会に行ったときに、初めてMDの音を聴く機会を得たのです。「おお、これが噂のMDか、どれどれ」とばかりにヘッドホンで聴いたMDの音は・・・最悪でした。今から思えばヘッドホンや録音ソースにも問題があったのかもしれませんが、周波数バランスは悪く、ボコボコでパサパサの音に聞こえ(うーん、我ながら抽象的な表現だなあ。でもホントにその時、そう思ったのです)、その印象があまりにも悪かったため、私はその後しばらくMDにまったく興味を持つ事ができませんでした。
MDには再生専用ディスクもあり、音楽ソフトも存在していました。が、その音質の評判はあまりよろしくなく、アーティストによっては自分の作品をMDでリリースする事を拒否した、などという噂もちらほらと耳にしたことがあります。定かな記憶ではないのですが、たしかマーク・ノップラーあたりじゃなかったかな…?

一般的にMDが普及してきたのはそれから数年後だったように思います。その頃になってようやく再びMDの音を聴いてみたところ、あれ、そんなに悪くないじゃん、というか、なかなか良い音だったので驚きました。どうやら音声圧縮技術の進歩により、大幅な音質改善がされていたらしいです。

MD_disk.jpg

CDよりも小さく、カラフルで多彩なデザインのカートリッジに封入されたMDはファッショナブルかつ取扱いも容易で、2000年頃には価格もこなれてきたこともあり、学生を中心に大流行したようです。
録音した後に曲順を入れ替えたり、1曲だけを消去したり、曲を分割・結合したりといった編集機能や、頭出しの容易さは、カセットテープに慣れた私たちには驚きの機能でした。さらにアルバムタイトルや曲名を入力して、再生時に表示させるなんてこともできました。一文字ずつ入力するのは大変面倒な作業でしたが、できるとできないでは大違いで、一生懸命打ち込んでいた記憶があります。まあ喜んでやっていたのは最初のうちだけで、段々面倒になってやらなくなったんですけどね(笑)。デッキによってはアルファベットだけでなくカタカナも扱えたり、パソコンのキーボードをつないで文字入力ができるものもありました。

MD_panel.jpg


私だけではないと思うのですが(思いたいのですが)、初めてMDを使ったとき、試しにほんの少しだけ録音してみて、「よしよし、録音できてるぞ。それじゃちゃんと録音しよう」なんて言いつつ、「あれ、巻き戻しができないよ。今録音した部分が消せないじゃん」と、アナログ概念からまったく脱却できていない自分を恨めしく思ったりしたものです(笑)。

私が知る限り、MDはイベントや舞台などのBGMや効果音を再生する場面でも重宝されていたようです。頭出しが容易で、狙ったタイミングで的確に再生できる(ポン出し、なんて言われます)のは、テープメディアに比べて大きな利点でありました。私も何度かそういう用途に使用したことがあります。

また、デジタル録音ならではの機能は編集や頭出しだけではありませんでした。モノラル録音モードを選択すると、通常のステレオ録音の2倍の時間録音することができましたし、後には音質を落として2倍、4倍の長時間録音ができるモードも搭載されました。
さらには高音質化を図ったHi-MD(ハイエムディー)や、パソコンなどのデータを扱うことのできるMD DATAなどの新しい規格が次々に開発され、デジタルの可能性を大いに感じたものです。特に、MD DATAを使用して4トラックまたは8トラック(!)の多重録音ができるマシンが登場した時にはとても驚きましたね。まさにカセットテープで出来る事はすべてMDで賄えるようになったと思える事件(私にとっては)でした。


ところが、デジタルオーディオの進化はあまりにも目覚ましく、MDは急速に廃れていきます。パソコンで音楽が扱えるようになった事が大きいのでしょうね。専用ディスクメディアを使用しなくてもよいハードディスクやメモリータイプの携帯音楽プレーヤーが普及し、パソコンと連携して管理のできるその利便性は、MDのそれを大きく上回ってしまいました。

カセットテープに代わるメディアとして開発されたMDでしたが、生産終了のニュースを耳にした今から見ると、その目標を果たせたとは言い難いものがあります。なぜなら今でもカセットテープは使われ続けていますからね。
しかしながら、私たちにデジタルオーディオの便利さや、バージョンアップなどによる発展性を最初に感じさせてくれたのはMDであると言えるでしょう。短い寿命ではありましたが、その存在意義は確かにあったのだと、感謝を込めて、そう思いたいものです。

ウチにもMDデッキはありますが(しかも2台)、しばらく使ってないですねえ。
もう録音することはないだろうけど、たまには昔のディスクを聴いてみようかな…。


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COMMENT

PATTI

さはんじさん、そのニュース知りませんでした。
MD、私にも思い出があります。
感慨深いので、後日、記事にさせていただきます^ ^

2013.10.03(Thu) 16:53 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

発表時は大々的にやりますが、終わるときは各メーカーが少しずつ撤退していき、気付くといつの間にか無くなっている、という寂しい状況になりがちです。ニュースにもなりにくいでしょうね。
PATTIさんの記事も楽しみにしていますね〜(^^)

2013.10.03(Thu) 18:43 | URL | EDIT

pipco1980

こんばんわ

今後ともヨロシクです。

私はMDより少し前にDATを購入してしまっていたので、
結局MDとは縁がないまま....でありました。

主に生録用、あるいは当時は私もDTMしていたので、
そのマスターテープとしての用途に限られました。

生録に関しては、結局キモはマイク!...。
そちらの購入に随分と散在しました。
懐かしいです。

2013.10.03(Thu) 23:05 | URL | EDIT

cyah

こんばんは。

結局MDは使わずに終わりましたねぇ。
私の場合いきなりCD-Rでした。
MD-DATAなどという規格があったのですが、
こちらも普及せずに終わりましたね。

ところで何か忘れていませんか?
(いや無理に思い出さなくてもいいですけど)

2013.10.03(Thu) 23:11 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>pipco1980さん
コメントありがとうございます。

DATは私もよく使いました。始めの頃はテープがデッキ内部に絡み付きやすくて大変でしたね。
DTMのマスターテープとしても使いましたし、ポータブルのデッキを手に入れてからは友人のバンドの音を録ったり、あとホントはイケナイのですが、コンサートの隠し録りをやったこともあった…かな?(笑)

DATの音質はMDよりも数段優れていましたから、本格的な録音を目指す人はDATでしたよね。

こちらこそ、よろしくお願いします。

2013.10.03(Thu) 23:30 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
コメントありがとうございます。

CD-Rが手軽に扱えるようになった事も、MDが廃れた要因のひとつと言えるでしょうね。
デジタルの急速な進歩のために、MDは(MD-DATAも含めて)質も容量も中途半端なモノになってしまったのではないでしょうか。

忘れてはいないのですけど、どういう形で記事にしようか悩んでいたりします。
さらっとやっちゃえばいいのかもしれませんが、解り難くないかな〜とか思っちゃったりして…。

2013.10.03(Thu) 23:38 | URL | EDIT

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