ラウドネスって、ナンだねス?

2013.10.15(Tue)

苦しい、苦しすぎる…。このサウンド・サイド始まって以来、これが最大級に苦しいタイトルであることは間違いないでしょう。でもね、思いついちゃったんだもん、仕方ないぢゃないですか。はっはっは。

えーと、今回のお題は「ラウドネス」です。といっても、放送音声の運用規準に関するお話しではありませんし、ましてや日本が世界に誇るハードロックバンドの事でもありません。
かつてオーディオアンプには「LOUDNESS」と表記されたスイッチがついていました。オーディオ機器の簡略化が進んでしまった現在でも存在するのかどうか、ちょっとわからないのですが、今回はこのスイッチに関連するお話しをしようと思う訳です。これは「ラウドネスコントロール・スイッチ」というもので、何だか意味がわからないけど押すと低音が大きくなるスイッチだよね、という認識の人がもしかしたら多いのかもしれません。
さらに、パソコンで音楽を再生するアプリケーションとして有名な「iTunes」のイコライザ設定にも「LOUDNESS」というプリセットがあったりします。

これって、一体ナンだねス? もとい、ナンだろうね? というのが今回のテーマだす。じゃない、です。

まずは言葉の分析です(お、なんだかカッコイイぞ)。「ラウドネス」の「ラウド(LOUD)」を辞書でひいてみると【うるさい、やかましい、騒々しい】などと怒濤のツッコミのような事が書いてあり、思わず「すみません」と謝りたくなってしまいますね(笑)。この「ラウド」に「ネス(ness)」が付くと名詞になって【うるささ、騒がしさ】のような意味になります。つまりは「人間が感じる音の強さ」の事なんですね。

かつて「音の基礎講座」の中で少しだけ触れましたが、人間の聴覚には特徴があって、すべての音が均一に聞こえている訳ではないのです。じゃあどんな風に聞こえているのか、というのを実験によってグラフ化したのが「等ラウドネス曲線」(とうラウドネスきょくせん)というものです。
有名なのは「フレッチャー/マンソンの等ラウドネス曲線」というもので、1930年代にフレッチャーさんとマンソンさんが測定して作ったグラフです。ま、言ってみれば「ますだおかだのオールナイトニッポン」みたいなネーミングですね。違うか(笑)。その後、ロビンソン/ダットソンの測定によるものなど(なぜかこれも2人なんですね)、様々な修正が加えられて、現在はこんな風になっているようです。

loud_equal.jpg
等ラウドネス曲線


このグラフは、横軸が音の高さ、縦軸が音の大きさを示しています。なにやらウネウネと線がひいてありますが、これは「人間の耳で、同じ大きさに聞こえる音」を表しているんですね。左側に行くに従って値が高くなっているのは「低い音ほど大きく鳴らさないと、同じ大きさの音には聞こえないよ」という事です。言うなれば、この曲線は「人間の耳の感度の悪さ」を周波数(音の高さ)ごとに表したものと言えるかもしれません。

何本か線がひいてありますが、上にいくほど大きな音のときの聞こえ方を示しています。上の線の方が角度が緩く、下の線ほど角度が急になっていますね。これは「小さい音ほど、音の高さによる聞こえ方の差が大きくなる」ということです。高音もそうですが、特に低音の側の角度に大きな違いがあるので「小さい音ほど低音が聞こえにくくなる」という事がわかると思います。

さて、例えば部屋でお気に入りの音楽をガンガン鳴らして楽しんでいたとします。と、隣人から「ウルサイぞ!」と苦情がきてしまいました。アッという間にテンションはガタ落ちです。仕方なくオーディオの音量を下げました。ああ、なんて迫力のないサウンドになってしまったのでしょう…。

そうなんです。音量が下がると低音と高音が聞こえにくくなるんです。そりゃあ迫力のない音になりますよね。さあ、そこで「ラウドネスコントロール・スイッチ」をオンにしましょう。このスイッチは単なる低音増強スイッチではありません。等ラウドネス曲線をもとにして、小音量時に聞こえにくくなった周波数の音量を補正するためのスイッチなのです。全体の音量を下げてしまっても、周波数ごとの聞こえ方は変わらずに済む訳ですね。

loud_amp.jpg


これは私のオーディオアンプのラウドネスコントロール・スイッチです。ブラックフェイスの上に小さいスイッチなので見にくいですね。スミマセン。
で、このスイッチは、音量によって等ラウドネス曲線の角度の違いを補正していくものなのですが、実を言うとその恩恵にあずかっている人は少ないのです。というのは、ほとんどの場合、アンプのボリュームツマミがある程度上がっていないと、音量の変化に伴って周波数特性が変化するという効果が表れないらしいのです。定かなことはわかりませんが聞く所によると、ツマミが11時以上の位置にないと特性の可変は無いとか。私なんぞは9時以上になることがないので(一般家庭では普通そんなもんでしょう)、その効果は固定されたものでしかないようです。という事は、単なる低音増強スイッチと考えてもあながち間違いではないのかもしれませんね。ちゃんちゃん(苦笑)。


さてさて、お次は「iTunes」のイコライザ設定です。この画面は10バンドのグラフィックイコライザを模しているので、ツマミの位置がそのまま周波数特性を表していると言って良いと思います。たくさんのプリセット設定の中に「LOUDNESS」もありますね。

loud_EQ2.png


先ほどの等ラウドネス曲線と見比べてみてください。よく似てますよね〜。
つまり、このイコライザ設定も、小音量時の聴覚特性を補正するためのものと考えてよさそうです。でも私が思うに、等ラウドネス曲線に似過ぎていて、逆に胡散臭い気もします(笑)。聴覚特性の補正はあくまでも曲線の角度の違いを補正するもので、曲線そのものをなぞったものではありません。もちろん縦軸の目盛りの刻み方が違うので一概には言えませんが、見た目にも、また実際に音を聴いてみた感じでも、高音が強調され過ぎているように思いました。私がこの設定を使うとしたら、8kHzのツマミをもう少し下げたくなりますね。
iTunesのイコライザ設定のプリセットはどれも厳密なものではありませんから、自分の好みでどんどん変えてもいいと思いますよ。

余談ですが、この記事を書くにあたってネット検索をしてみたところ、この「LOUDNESS」はラウドロックに合うイコライザ設定だと誤解している人がいました(笑)。プリセットの中には音楽ジャンルの名前と周波数特性を表す名前が混在しているので、まあ仕方ないのかもしれませんが。
まあ、プリセットの名前に捕われず、自由に音の変化を楽しむのも良い事だと思います。ただ、音楽製作をしている人は、極端なイコライザ設定に耳が慣れてしまわないように気をつけてくださいね。

P.S. cyahさん、大変お待たせいたしました。


  よろしければランキング投票をお願いします→ 

COMMENT

浦太

「低域が上がる」
って認識しかしてなかった人の一人ですので、
大変勉強になりました。

ところで、曲線の逆のイコライジングをすれば、
ラウドレスなんでしょうかね?

2013.10.15(Tue) 19:22 | URL | EDIT

Keith

今晩わんこ  コチラでは初めまして さはんじさん

昔のアンプでは、ラウドネス・スイッチは低音だけじゃなく
高音域も上がっていたと思います。

いわゆる「ドンシャリ」サウンド。これで下手なRockも、
そこそこ聞こえると言う、変なスイッチだと認識してましたがぁ。

2013.10.15(Tue) 19:35 | URL | EDIT

ももPAPA

こんばんわ

ラウドネス・スイッチ
音量を下げても 音がしっかり(はっきり)聴き取れる
そんな感じのものだと思ってました。

で それをオンにすると ちょっと音がこもったような感じで太く聴こえる感じ
低音部だけ増強されるからってことなんですね。

ギターアンプなどにもついていますよね。

2013.10.15(Tue) 21:08 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>浦太さん
コメントありがとうございます。

詳しい説明を目にする機会が案外少ないので、低音増強スイッチだと思っている人は多いと思います。

あははっ、ラウドレスってネーミングは面白いですね〜。
でも、この曲線の状態で人間にはフラットに聞こえる訳ですから、逆曲線のイコライジングをしても低域と高域が削られたラジオボイスみたいな音に聞こえるだけだと思います。
ただ、物理的にフラットな状態で音が出ている状態ならば、全体に音量が下がって聞こえそうですね。
それはラウドレスといえるのかもしれません(笑)。

2013.10.15(Tue) 22:23 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>Keithさん
コメントありがとうございます。

おっしゃる通り、高音域も上がっています。ただそれ以上に低音域が上がっているので、そちらのほうが目立ってしまうのでしょうね。
なんとなく迫力が出るスイッチ、と認識している人も多いかもしれませんね。

2013.10.15(Tue) 22:28 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

音量を下げても 音がしっかり(はっきり)聴き取れる 、というのは大正解です。
ただ、ちょっと誤解を招きやすい文章だったかもしれません。
Keithさんへのレスにも書きましたが、ラウドネスコントロール・スイッチは低音だけでなく高音も増強されています。その割合が低音のほうが大きい、という事ですね。

なるほど、ギターアンプにもついていますか。たしかにそういった用途にも有効ですよね。

2013.10.15(Tue) 22:38 | URL | EDIT

cyah

こんばんは。

質問者cyahです。今回はどうもありがとうございました。

私としての認識は「オンにすると低音と高音が持ち上がって、
小さい音の時にまともに聞くことが出来る」程度だったのですが、
こんなに奥深い意味があるとは思っても見ませんでした。

ちなみにディスクマンで音が小さい時に
低音持ち上げるスイッチがあったのですが、
やはりラウドネスとは別物何でしょうかね?
(BASS BOOSTと書いていますね。シャカシャカ音防止?みたいな)

それにしてもなんと食いつきのいいネタ!
また何か分からないことがありましたら、
さはんじ先生にお願いすることに致しましょう。<(_ _)>

2013.10.15(Tue) 23:47 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん
コメントありがとうございます。

長い事ご質問を放置してすみませんでした。
BASS BOOSTスイッチは、ラウドネスとは別物ですね。こちらは単に低音域を増強するだけです。
シャカシャカ音防止とも違うんじゃないかと思いますよ。イヤホンでは周囲の雑音に負けて低音が聞きにくくなることがあるから、その対策なのではないでしょうか。低音の迫力を好む人も多いですしね。

2013.10.16(Wed) 00:54 | URL | EDIT

cyah

こんばんは。

それでは次のお題は「SM」もとい「SN比」ということで、
もし既出でなければお願いします。

それと今のデジタルオーディオでもコレって使うのか?ですね。

2013.10.20(Sun) 23:46 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>cyahさん

ははあ、「S/N比」ですか。そういえば取り上げたことないですね。
そのままだと何の面白味もない記事になりそうなネタですから、何らかの切り口がひらめいたら(まあオヤジギャグでもいいんですけどね)書いてみるかもしれません。
でも「SM」と絡めるのはやめとこうかな〜(^^;
毎度の事で恐縮ですが、気長にお待ちくださいませ。m(_ _)m

2013.10.21(Mon) 10:04 | URL | EDIT

Keith

再び今晩わんこ   さはんじさん

SM比ですか?それなら分かりますです。

Keith=S100%、cyahさん=M100%。

但しこれは一説によるものでありんす。

2013.10.21(Mon) 18:14 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>Keithさん

喰いついてきますねえ。
私には、cyahさんがまいた餌で見事にKeithさんが釣り上げられたように見えますが(^^;
ま、これも一説によるものであります。

2013.10.21(Mon) 23:13 | URL | EDIT

白坂 進

低音は音圧が大きくないと聴こえない

 興味深く拝見しました。
ラウドネス曲線では100Hzでさえ80dBで聴いている時に92dBほどの音圧が無いと音としては聴こえないと理解しているので、
大音量でモニターしている80dBでも聴こえないままミキシングした音楽が作られていると思っています。
 URLには80dB大音量で聴けば音楽作成者が感じた音で聴けるが、60dB位小音量では低音を増強しないと同じ音が聴けないと思っています。

 ラウドネスの記事がほとんどないので探しています、ご意見が欲しいのでよろしくお願いします。
 
 昔はHiFi機器にはラウドネススイッチが在りましたが最近はジャンル別にイコライズする不十分な簡易形で代用していると思います。

2015.05.11(Mon) 11:05 | URL | EDIT

さはんじ

Re: 低音は音圧が大きくないと聴こえない

>白坂 進さん
コメントありがとうございます。

ラウドネス曲線の解釈ですが、白坂さんの挙げた例の場合、100Hzの音が、1000Hz・80dBの音と同等の音量に聞こえるためには、92dB必要だという意味で、92dBの音圧がないと音として聞こえないという事ではありません。

爆音でミキシングするエンジニアもいますし、小音量でのミキシングを好むエンジニアもいます。が、いずれにしても100Hzの音が聞こえないような状態でミキシングをしているような事はありません。

また、エンジニアは様々な再生環境でもなるべく同じような周波数バランスに聞こえるように気を配ってミキシングをしているので、リスナーはやみくもに低音を増強する必要はないのではないでしょうか。

このあたりの解釈は人それぞれでしょうが、私は、ラウドネススイッチはミキシング現場での音を再現するためのものではなく、一般的な試聴時よりもさらに小音量になった時に不足する周波数を補うためのものだと思っています。


2015.05.12(Tue) 09:31 | URL | EDIT

白坂 進

済みません間違っていましたので更新しました。
1kHzの音圧と比較して100Hzは80dBと同じ音量に感じるには92dB必要であり、音として聴こえないのは間違いでした。

普通CDなど作成する時は80dB位、映画では100dB位で編集されているのではないでしょうか?
ただし、小音量(60dB)で聴いたりする場合を考慮して編集されたりするらしいのですね。
それでソフトによってはラウドネスコントロールが不要なものが多くなっていると感じますがどうなんでしょうか?
でも深夜40dBほど超小音量で聴くときにはラウドネスコントロールの効果が発揮されると思います。

2015.05.12(Tue) 09:54 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>白坂 進さん

映画の音声に関しては、再生される環境が映画館にほぼ限定されるので、それと同等の大音量でミキシング作業がされていると思います。それは理想的な整音作業と言えると思います。
音楽CDなどに関しては再生環境が限定できないので、作業時の音量はエンジニアによって各々違っているようです。スタジオの大きなモニタースピーカーだけでなく、人によってはラジカセのような再生機器を使用して小音量時のバランスをチェックしたり、仮ミックスをカーステレオでチェックして修正を行うなんてこともあるようです。

最近のオーディオにラウドネスコントロールスイッチが装備されなくなってきたのは、おそらく単純にコストダウンの結果だろうと私は思っています。裏を返せば、ユーザーにあまり必要とされていないということにもなるでしょうね。

おっしゃる通り、超小音量で聴くときにはラウドネスコントロールが大いに有効だと思います。

2015.05.12(Tue) 22:57 | URL | EDIT

白坂 進

 最近はラウドネスコントロールスイッチがなくなってきたのは、コストダウン目的が原因と思いますが、フラット化でHiFiになる利点があります。
低音にこだわる人も減っていると感じます。

 本格的オーディオは大音量フラットで聴くことが多いと思います。
ミキサーが作ったのと同じ音圧で聴けるので昔から必要ない機能で超高級品には付いてなかったと思います。

 超小音量で聴くときだけ必要でもそれほどこだわる人は僅少でしょう。
普通音量では全く必要無いと思いますし、ラウドネスコントロールは簡易形イコライズですのでラウドネスカーブとピッタリ合わないし、音質が悪化する傾向になり、嫌う人も多いと思います。

2015.05.15(Fri) 09:43 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>白坂 進さん

おっしゃる通りですね。
高級オーディオや業務用音響機器には装備されていません。必要ないですもんね。
やはり一般ユーザーのリスニング環境や住宅事情を鑑みて付けられたものなのでしょう。

音楽のジャンルや、その録音状態にもよりますが、私もラウドネススイッチをオンした音は
不自然な感じがしてあまり好きではありません。

自分の耳で聴いて心地良いと感じることが、一番大切なのでしょうね。

2015.05.15(Fri) 22:01 | URL | EDIT

POST COMMENT


プロフィール

さはんじ

Author:さはんじ

FC2カウンター

ブログランキング参加中


にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村
ブログランキングならblogram

おきてがみ


足あとを残せます。

アーカイブ

 

検索フォーム

Amazon 特集情報



Google AdSense

まずは「知る」ことが大切


blogram

にほんブログ村ランキング

↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。