あなろぐ懐古ログ 「キューイング」

2014.03.12(Wed)

今回のあなろぐ懐古ログのお題は「キューイング」です。コンピュータなどのデータ処理に用いられる用語にも同音のものがありますが、あちらは「queuing」、これからお話しするのは「cueing」のほうです。

「cue」という単語には「合図」や「きっかけ」などの意味がありますが、録音作業では実に様々な意味合いを持つ言葉なんですね。で、ここで言う「キューイング」とは、録音テープの早送りもしくは巻き戻しをする際に「キュルキュルキュル・・・」という音を発生させることです(デッキによっては「サーチ」という名称を使っていたります)。これはアナログ特有の便利な機能のひとつで、その便利さゆえにデジタル機器でもアナログを模倣した、いわば「キューイング・サウンド」を出すものがあります。
しかし、最近では純然たるアナログのキューイングの音って聞かなくなったなあ〜、と思うので、この「あなろぐ懐古ログ」で取り上げてみることにしました。

おそらくほとんどの人は「キュルキュル・・・」の音、という説明だけで思い当たるでしょうが、まあ一応念のためにキューイングの音を聞いていただきましょう。こんな音です。







ちなみに、アナログを模倣したデジタル機器のキューイング音はこんな感じです。これは私のCDプレーヤーを使って出した音です。







ブツ切れの不自然な音で、なんとも情緒(?)がありませんねえ。なんだか無理矢理作った音という感じがします。

さて、アナログテープに話を戻します。このキューイング音の何がそんなに便利なのか、というと、まあ言わずもがなでしょうけど、テープの早送り/巻き戻しの際に録音内容を耳で聞いて確認できる、ということですね。例えばミュージックテープの場合、今聞いている曲の、次の曲が聞きたいと思ったときに、キューイングで早送りをすれば曲の変わり目がすぐにわかります。また、今聞いている曲のサビが聞きたい、などというときも、キューイングすれば大体どのくらいテープが進んだか(戻ったか)を感覚的に把握することができます。さらには、やや特殊な例かもしれませんが、インタビューなどの録音テープを聞きながら内容を文字に書き出していく「テープ起こし」という作業をする人の場合は、再生と巻き戻しを頻繁に繰り返すため、どのくらい巻き戻したかを把握できるキューイング機能つきテープレコーダーは必須アイテムであると言えるでしょう。キューイングできなければ、つまり、巻き戻し時に音が出なければ、録音テープ上の目的の地点を見失いやすくなり、作業効率は著しく低下するはずです。

キューイングの仕組みは単純です。通常、早送り/巻き戻しの動作時には録音テープが非常に高速で走行するので、録音や再生のための磁気ヘッドの摩耗を防ぐために、テープと磁気ヘッドが離れるようになっています。この状態だと録音された音は聞けないので、キューイングするためには、摩耗は覚悟の上で(笑)磁気ヘッドとテープと接触させるのです。考えてみればかなり強引な方法なのかもしれません。
カセットテープの場合はその構造上、磁気ヘッドが動いて録音テープに押し当てられます。オープンリール式テープレコーダーは磁気ヘッドが固定されているため、ヘッドとテープが密着しているのが普通の状態です。早送りや巻き戻しをする際には、磁気ヘッドの近くにある「テープリフター」という金属の棒が持ち上がってヘッドとテープを離しているので、キューイング時にはこのテープリフターを引っ込める事によって両者を接触させます。

tapelifter.jpg



キューイングの操作方法ですが、これはそれぞれのテープレコーダーによって色々です。ラジカセなどの、操作ボタンをガシャコンと押し込むタイプの場合には、再生ボタンと早送り/巻き戻しボタンの両方を同時に押し込む事が多かったようですね。テープ起こし専用のカセットプレーヤーには、再生や巻き戻しの操作が足でおこなえるフットペダルを装備したものもあります。
オーディオコンポのカセットデッキは、ラジカセ同様に再生と早送り/巻き戻しボタンの同時押しタイプのものや、早送り/巻き戻しの動作中にもう一度早送り/巻き戻しボタンを押すとキューイングができるものなど、メーカーや機種などによって様々な方法が採用されていました。もっとも、こういった高級デッキは用途が音楽専用であることが多いためキューイング機能は無く、早送り/巻き戻し中に曲間の無音部分(ブランク)を探して停止・再生を開始する自動選曲機能のついたものが多かったと記憶しています。

一方、オープンリール式テープレコーダーの場合は、前述のテープリフターを引っ込めるためのキューボタンがついている事が多いようです。古い機種では専用ボタンが無く、テープリフターを手で動かせるようになっているものもありました。慣れている人にとってはこちらのほうが使い勝手が良かったみたいです。テープリフターの操作ができない場合は(実際そういう機種もありました)、親指の腹で直接テープを押してヘッドに接触させるというとんでもなく強引な方法も行われていました(私もやったことがあります)。

cue_switch.jpg
キューボタン


さて、オープンリール式テープレコーダーでは、テープの巻かれた2つのリールを手で動かして「ウニョ・ウニョ・・」というような音を出す場合があります。これもキューイングの一種だと思うので、少しだけ触れておきましょう。これは、再生開始地点を探す「アタマ出し」という作業をする時や、テープの切り貼り編集をする際の編集ポイントを探す時などに必要な操作です。
オープンリール式は通常の状態でヘッドとテープが密着しているので、テープを動かすだけで音が出ます。手でリールを動かすという事は、超低速で再生する事ですから、テープのどの場所にどの音が録音されているかをより厳密に探すことができる訳です。もちろんそれには多少の慣れが必要になります。

これは、クラブDJなどがアナログレコードのターンテーブルを手で操作して曲のアタマ出しをする時や、効果音的に「ブギュ・ブギョ・・」という音を出す「スクラッチ」(scratch)という操作に似ていますね。
また、パソコンのDAWや波形編集ソフトなどでも、マウスその他のポインティングデバイスを使用して同様の音を出すことができたりします。その目的も同様に編集点を探すことが主だと思います。が、こういったデジタルベースでの操作はキューイングではなく「スクラブ」(scrub)と呼ばれています。どちらも「こする」というような意味の言葉です。

はじめのほうでCDプレーヤーのブツ切れキューイング音を聞いていただきましたが、デジタルオーディオの場合は曲のアタマ出しや、あらかじめ指定した位置への移動が簡単にできることもあり、実はあまりキューイングを活用する機会はないのではないかと思います。
また、最近のDAWや波形編集ソフトでは早送り等の操作時にキューイングの音を発することのできるものがあります。技術の進歩は目覚ましく、ほとんどアナログテープレコーダーのキューイングと変わらないような、スムーズな音がします。が、しかし、こういった環境では音の状態が波形表示等で確認できるため、目的の位置に移動するとか、編集ポイントを探す場合でさえも、ほとんどキューイングの音が必要になることはないでしょう。

ということで、結論としては、キューイングの音って最近はあまり聞かなくなったよなあ〜、です。

以上、今となっては何の役にも立たない「キューイング」についてお話しいたしました。


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COMMENT

Ryoji Suzuki

うっとり♪

こんばんは。
さはんじさん♪
うっとりですわぁ。
黒のフラッシュプレイヤーから流れる、
きゅるる~んv-238
ぶっきゅるりる~んv-238
しゅるりるりる~んv-238
あぁ、きゅーいんぐの音が
こんなに愛おしく聴こえる時代が来るとは
予想もしませんでしたv-22
すっきやで~きゅるるりるりる~v-238
Ryoji suzuki(^o^)♪

2014.03.13(Thu) 01:26 | URL | EDIT

さはんじ

Re: うっとり♪

>Ryoji Suzukiさん
コメントありがとうございます。

身近にあるけど普段は意識していない音って、結構あるんでしょうね。知らないうちに耳にしなくなってしまって、やがて久しぶりに聞いた時、懐かしさに愛おしく聞こえるのかもしれません。
懐かしのメロディーじゃなくて、懐かしの「音」というのも、たしかに存在しますよね。

2014.03.13(Thu) 17:05 | URL | EDIT

ジオヤー

こんばんは

ギターをコピーするのによく使ってたの思い出しました。
だんだん、ラジカセが可哀相になってくるんですよね^^
逆に、オーディオ用のカセットでは、テープの劣化を恐れて、できるだけ使わない様にしてましたね~。

2014.03.14(Fri) 00:52 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ジオヤーさん
コメントありがとうございます。

楽器の練習など、反復してテープを聞く必要がある場合には特に便利でしたね。
しかしながら、おっしゃる通りにテープにもデッキにも負担がかかっているように感じてしまいます。
キューイングが高音なので、余計につらそうに聞こえるのかもしれませんね。

2014.03.14(Fri) 22:22 | URL | EDIT

ももPAPA

懐かしいです!
ギターフレーズのコピーにオープンリールデッキを使ってましたね。
速いパッセージなんかのときは回転を落として耳コピするわけですが、音程が下がるので変調しながら(フレットポジションをその分下げて)コピー それも楽しかったです。

2014.03.15(Sat) 21:25 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

オープンリールデッキはカセットに比べて高機能でしかも細かな操作が可能でしたね。
私たちユーザーが色々な工夫をする余地がたくさんありました。
デジタル音声はパソコンを使えばピッチシフトやタイムストレッチなど、昔から考えると夢のような機能が使えるのですが、オジサンとしては昔のほうが楽しかったかな〜と思ってしまうのでした(^^;

2014.03.16(Sun) 07:24 | URL | EDIT

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