あなろぐ懐古ログ 「テープ編集」

2014.05.21(Wed)

アナログ録音にまつわる懐かしい話題をピックアップする「あなろぐ懐古ログ」、今回はテープ編集についてお話ししようと思います。いわゆる音声の切り貼り編集の事で、現在のDAWや波形編集ソフトなどのデジタル音声技術を持ってすれば誰でもちょいちょいと簡単にできてしまうのですが、かつてはそれなりに経験と技術を要する作業でありました。

「切り貼り」という言葉通りに、まさに録音テープをハサミでちょん切って音声編集してしまうという力技(?)です。しかし細かな編集をカセットテープで行うのは無理があると言わざるを得ません。やはりテープ編集は、オープンリール式テープレコーダーならではの大きな利点であると言えるでしょう。

まずは、音声の切り貼り編集ってどんなもの? という所から、極々簡単な例を挙げて触れていきましょう。
このブログではすっかりお馴染みになったこの音声を聞いてみてください。







またこれかよ、という皆さんの声がはっきりと聞こえてきそうですねえ。前にも書いたと思いますが、誰が何と言おうと使えるものはバンバン使い回していきますので夜露死苦。あー、エコだね〜。
…じゃなくて、えーと、このナレーション(というにはあまりにも稚拙でお恥ずかしいモノですけど)の中の、いくつかの部分をカットして繋ぎ合わせたものが次の音声です。







え? 最近はCDレビューをやっていないから、その部分をばっさりカットしちゃったんだろうって?
うーん、返す言葉がございません。しょんぼり。…という自虐ネタを挟みつつ、話を続けていきますね。
カットした言葉の内容はともかく、これが切り貼り編集のもっとも簡単な例であります。他にも混入したノイズや言い間違いなどのNG部分をカットしたり、不自然な間(ま)を修正したり、言葉の順番を入れ替えたり、まったく別の所から音声を持って来てはさみ込むといった事もできます。また、ナレーションや会話だけでなく、たとえば音楽であればOKテイクとNGテイクの部分的な差し替えや、2コーラス目をカット(2番抜き)したり、構成を入れ替えたり等々、切り貼り編集は様々な場面で活用されます。


では、テープの切り貼り編集に使用する物品を見ていきましょう。
オープンリール式テープレコーダーと録音テープの他に必要なものは、ダーマトグラフとハサミ、そしてスプライシングテープです。

01_derma.jpg
スプライシングテープとダーマトグラフ


スプライシングテープはプラスチック製のテープ編集専用のもので、録音テープを接合するために使います。現在では入手困難かもしれませんが、粘着剤が違うのでセロハンテープなどで代用するのは厳禁です。
ダーマトグラフは街の文房具屋さんでも売っている油性の色鉛筆(?)で、録音テープの編集箇所をマーキングするために使います。録音テープのコーティングは茶色か黒の場合が多いので、目立つように白いものを使うのが普通です。録音や放送の業界では「デルマ」と呼んでいます。
ハサミは事務用でも構いませんが、スチール製のものは長期間使用すると録音テープの磁気によって磁化されて、切断部分にノイズが入ってしまうことがあるので、できればセラミック製のもの等が良いと思います。


さあ、いよいよ実際のテープ編集の手順です。
まずは録音テープ上の編集ポイントを決めます。オープンリールテープレコーダーを再生し、編集したい場所にきたら停止して、左右両方のリールを手でうにょうにょと動かし、再生音を頼りに正確な位置を探ります。

02_cue.jpg
うにょうにょ


編集ポイントは音アタマの立ち上がりが鋭い部分に設定するとわかりやすいでしょう。色々なケースがありますが、ナレーションであればサ行やカ行あるいは破裂音など、音楽であればドラムやパーカッションなどを目安にするのがセオリーです。
編集ポイントが正確に再生ヘッド上にきたら、ダーマトグラフでテープに目印をつけます。

03_mark.jpg
書き書き


同様にもう1カ所の編集ポイントに目印をつけたら、録音テープをぐいっと引き出してテープ上の2カ所の目印を重ね合わせます。テープ同士がずれないようにきっちり重ねたら目印のポイント(の直前部分)をハサミでカットします。多少の角度をつけたほうが失敗することが少なく、無難でしょう。

04_cut.jpg
ちょっきん


次にスプライシングテープで貼り合わせますが、ハサミを入れた時の角度の違いによってテープとテープの間に若干の隙間ができてしまっても、再生音にはほとんど影響しません。しかし、編集したテープが曲っているとはっきり音に影響が出てしまうので、とにかくきっちりまっすぐ貼り合わせるように心がけましょう。
スプライシングブロックという専用ガイドを使って丁寧に切り貼りをすれば仕上がりは奇麗になりますが、多くの編集をする作業現場では「そんな面倒臭いことはやっとれんわい」とばかりに、ハサミでちょっきん、テープでピッ、と素早く作業していました。作業台にテプラ用の少し厚めのプラスチックテープを貼り、それに録音テープを沿わせてまっすぐ繋ぐようにしていましたね。
貼り合わせたら、スプライシングテープを爪の背などで擦り、剥がれないようにしっかり固定します。そして録音テープからはみ出した両サイドのスプライシングテープをハサミできれいにカットします。
(なんだか色々なテープが出て来てややこしいですね)

05_tape.jpg
ぴたっ

06_side_cut.jpg
ちょっきん ちょっきん


出来上がりはこんな感じです。

07_finish.jpg
(ちょっとピンボケ、すみません)


さて、私のテープレコーダーのヘッドハウジングの上にスプライシングブロックがついているので、これについても少し触れておきましょう。下の写真の白い枠で囲んだ部分がスプライシングブロックです。

splicing_block.jpg


横方向に録音テープがぴったり収まる幅の溝があり、右寄りの部分に垂直と斜めの細いスリットがあります。このスリットに沿わせてカミソリ等の刃を入れてテープをカットします。これを使えば常に同じ角度で切ることができ、録音テープをきっちりまっすぐ繋ぐことができますね。非常に便利なアイテムですが、私は上記のような理由で使ったことがありません(笑)。白い三角形マークは、録音テープの長さの目安にするものだと思います、たぶん(だって使った事ないんだもん)。

ちなみにスプライシングテープによる接着は恒久的なものではありません。私の経験上、十数年で粘着剤の劣化がおきて剥がれてしまうことがあるようです。早送りや巻き戻し中に剥がれてしまうと、録音テープやレコーダーに重大なトラブルを引き起こす可能性があるので、大切な録音や長期間保存する必要のある場合は、編集終了後に新しいテープに複製(コピー)をとり、そちらをマスターテープとするのが良いと思います。


これまで、録音テープの切り貼り編集の手順をご紹介してきました。
録音テープにハサミを入れてしまうと、もう2度と元には戻せません。これはいわゆる「破壊編集」です。同じ場所にもう1度繋ぐことはできますが、テープには切れ目が入ったままになりますし、さらにスプライシングテープを貼ったり剥がしたりという作業による録音テープのダメージも無視できません。すなわち、一発勝負が前提の職人技と言えるでしょう。熟練するとかなり精密な編集ができるようになりますが、作業前に「ヤバいな、難しい編集だな」と思ったら、テープを複製(コピー)してバックアップをとっておく事もあります。しかし、その判断をするにも経験が必要となるのは言うまでもありません。

デジタルベースの非破壊編集が当たり前となった現在では、なんとも不便な作業に見えてしまうかもしれませんが、かつてはこんな風に音声の編集作業をしていたんだなあ、と、少しでも関心を持って頂けたら嬉しく思います。

以上、今となっては何の役にも立たない、「テープ編集」についてお話ししました。

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COMMENT

Ryoji Suzuki

てーぷぅ

メモリベースでは得られない、磁気テープによる利点が見直される時代、来るような気がしています。夢物語かもしれないけど、ボクはそう思いたい。AMPEXのMM-1000の1インチ16トラックマルチを友人が所持していて、かなり困難なことだけれど、死ぬまでになんとか、ランニングさせたい、という夢をみんなで模索しています。さはんじさん、こんな「馬鹿者たち」がまだ世にいるってことで、『何の役にも立たない、「テープ編集」』が『おどろくほどの知識の宝庫「サウンド・サイド」』となる、そんなボクらの夢、お付き合いくださいね~v-22

2014.05.22(Thu) 07:33 | URL | EDIT

さはんじ

Re: てーぷぅ

>Ryoji Suzukiさん
コメントありがとうございます。

磁気テープを使用した録音の音質を好む人はたくさんいますね。ハードルは高く数も多いですが、デジタルもアナログも同等の選択肢として共存できる時代が来たら素晴らしいと私も思います。

AMPEXのマルチとはまた凄いですね。是非稼働させてほしいです(無責任に言うだけなら簡単ですが、実際には大変でしょうね(^^;)。MM-1000はもしかしたら2インチテープだったような気が…、間違っているかもしれませんけど。

この「懐古ログ」の記事たちが役に立つ時がきたら、本当に嬉しいですね(^^)。

2014.05.22(Thu) 16:44 | URL | EDIT

Ryoji Suzuki

2インチ♪

あ。

MM-1000、2インチ♪
えへへ^^まちがえた^^
うれしいコメントお返事、
ありがと御座います<(_ _)>
さはんじさんの声大好きです♪
さはんじさんのデッキいじる楽しさ~
いろんな思い、ブログからいっぱい感じています。

2インチテープ、もう無いすよねo(ToT)o
スプライシングテープだってもう・・・。

マニュアルは手に入ったし。
でも、ローラはアウトだし。
手作りしなきゃなんないことも・・・
たくさんあるけども。
トランスも1モジュールにいくつもあって。
手巻きしなきゃなんないし。。。
(トランス屋さんに頼むのもあるけども)でも、
そんな楽しみいっぱい♪

Ryoji(^o^)♪

2014.05.23(Fri) 10:47 | URL | EDIT

さはんじ

Re: 2インチ♪

>Ryoji Suzukiさん

2インチテープの新品を入手するのはとても困難だと思われます。オークションなどで中古品が出品されることはあると思いますが、おそらく出品者もテープのコンディションは把握していないでしょうね。

16モジュール分の調整を行うのは大変ですね。
時間とお金をたっぷりかけることができるなら、楽しい作業ではあると思いますけど…(笑)

2014.05.23(Fri) 17:41 | URL | EDIT

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2014.05.29(Thu) 14:02 | | EDIT

さはんじ

>鍵コメさん
コメントありがとうございます。

当ブログでは相互リンクの申請を受け付けておりません。
ご希望に添うことができず大変申し訳ありませんが、何卒ご了承ください。

2014.05.30(Fri) 09:33 | URL | EDIT

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