Lee Ritenour『RIO』

2014.06.25(Wed)


イン・リオイン・リオ
(1998/07/29)
リー・リトナー

商品詳細を見る


巷の話題はと言えば、やっぱりサッカーワールドカップということになるのでしょう。日本代表は残念な結果に終わりましたが、これからの決勝トーナメントも大いに盛り上がるのではないかと思います。さて、サウンド・サイドでは4年前にW杯開催国の南アフリカにちなんでポール・サイモンの『グレイスランド』をピックアップしたのですが、今回はブラジル大会ということで、1979年に発表されたリー・リトナーの『イン・リオ』をレビューに選んでみました。このアルバムのタイトルが『イン・リオ』なのか『リー・リトナー・イン・リオ』が正しいのか、CDのジャケットを見る限り微妙なところなのですが、まあここはAmazonの表記に倣って『イン・リオ』ということにしておきましょう。ちなみに海外盤では『RIO』だそうで、なんだかややこしいですなあ(笑)。

ブラジリアンテイストのCDは数限りなくありますが、そんな中でこのアルバムを選んだのはまったくの思いつきであります。日本代表の予選リーグ敗退の悔しさを胸に、そして何やら訳のわからない今年の梅雨空に、この爽やかな音楽を聴いて心を落ち着けてみるのもいいんじゃないでしょうか。
強引ですか? いや、いーんです!(笑)

リー・リトナーは言わずと知れたジャズ・フュージョン界のスーパーギタリストです。ブラジル音楽に多大な影響を受けた多くの楽曲を発表していますが、その先駆けとなったのがこのアルバム『イン・リオ』ということになるのだと思います。自らブラジルはリオ・デ・ジャネイロに渡り、現地のミュージシャンと共にベーシックトラックをレコーディングし、その後ニューヨークとカリフォルニアで超一流ミュージシャンを集めオーバーダビングを施し完成させたアルバム、という触れ込みになっていたはずですが、ライナーノーツ等を見るとリオで録音したのは全7曲中2曲のみのようです。しかしながら他の5曲に関してもその後ひと月ほどの間にレコーディングを終えているようなので、リオで得たフィーリングの鮮度を最大限保ちつつ完成させたアルバムなのだろうと想像できます。

レコーディングエンジニアは、GRPレコード創始者のひとりラリー・ローゼンと、後のGRPサウンドに大きく貢献したドン・マレーです。ジャケットにデジタルレコーディングとしっかり明記してあるところから、当時はまだ開発されたばかりのデジタル・マルチレコーダーを使用した(試用といってもいいのかもしれませんね)アルバムであることがわかります。(おそらくこれじゃないかと思います)
このレコーダーの特性によるものなのかどうかはわかりませんが、この『イン・リオ』のサウンドは、クリアでタイトという印象があります。分離の良い音ではあるのですが、低音が締まりすぎていて、特に小音量時には少し物足りないような気がしますね。ある程度大きな音量で聴くといい感じになると思います。

もうひとつ、このアルバムの大きな特徴として、リー・リトナーが全曲を通してナイロン弦のアコースティックギター、いわゆるガットギターをプレイしている事が挙げられます。これも全体のサウンドに大きく影響しているのではないでしょうか。ただし、ゲストのジェフ・ミロノフはエレキギターをプレイしていますし、ラスト7曲目は、えーと、ごにょごにょ・・・、詳しくは後ほど(笑)。

さてさて、それでは1曲ずつ聴いていきましょう。
まず1曲目はドン・グルーシン作曲による「レインボー」です。この曲はリオ・デ・ジャネイロでベーシックトラックを録音し、後日ニューヨークでストリングスをオーバーダビングしたようです。まずはガットギターの美しいアルペジオとハーモニクスで始まり、ストリングスやリズムが入ってくる、ゆったりとしたサンバ調の爽やかな曲ですね。表情豊かなリー・リトナーのギターはダイナミックレンジの広い演奏ですが、とてもクリアでピッキングのタッチもはっきりと聴き取ることができます。ベースはややブーミーな感じのする硬めの音で、締まってはいるもののしっかりと低音も出ています。右チャンネルからはスチール弦のアコギも聞こえていますね。終始聞こえているフロアタムはアタックの音が強めで、もう少し胴鳴りがあるといい感じかなと思います。サンバホイッスルやクイーカなど色々なパーカッションも大々的にフィーチャーされ、いかにもドン・グルーシンらしいユニークなコーラスもブラジリアンテイストを盛り上げるのに一役買っています。堅実なプレイのエレピもいい感じですよ。

2曲目は少しブルージーな香りのするギターで始まるミディアムナンバー「サン・ワン・サンセット」です。これはブラジル出身のキーボードプレーヤー、デオダートのカバー曲で、極端なアレンジを加えることなく原曲に近い雰囲気を出しています。バディ・ウィリアムスのメリハリの効いたドラムがいいですね。特に豊かな響きのタム類が気持ちよく、フロアタムの「ドゥーーン」という(村上ショージのギャグぢゃないですよ)胴鳴りの音は大好きです。まあ欲を言えばもう少し重量感があると完璧なんですけどね(笑)。ハイハットはやや潰れたような音ですが、シンバルやスネアドラムはクリアで実に生々しいサウンドです。ウッドブロックの深いリバーブがいい感じですね。ニューヨーク録音の参加ミュージシャンは他にマーカス・ミラー、ジェフ・ミロノフ、デイブ・グルーシン、ルーベンス・バッシーニという超豪華な布陣で、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ギターソロの終わりのあたりで唸り声(?)が聞こえていますが、これはリー・リトナーの声なのでしょうか。

続く3曲目はマーカス・ミラーのチョッパー・ベースを大々的にフィーチャーした「リオ・ファンク」です。この曲はライブなどでもよく聴くことのできる、リー・リトナーの代表曲ですね。そのほとんどがエレキギターでのプレイだと思うのですが、オリジナルであるこのアルバムではガットギターの演奏になっています。同じ日に録音された「サン・ワン・サンセット」のドラムが大きくステレオに広げられているのに対し、この「リオ・ファンク」ではモノラルに近い感じまでセンターに寄せられ、よりパワフルなサウンドになっています。左チャンネルから聞こえるカウベルの音が独特の雰囲気を作り、いい感じですね。エレキギターのカッティングは基本的に中央よりも少し左側に定位していますが、要所要所で右チャンネルにも現れてリズムを後押ししています。そして、何と言ってもこの曲最大の聴き所は素晴らしいベースソロなんですが、時には力強く、時には流れるように美しいデイブ・グルーシンのアコースティックピアノにも注目したいところです。途中から徐々に存在感が増してきて、エンディングをバッチリ決めるホーンセクションもカッコイイですね。

クルセイダーズのカバー曲、4曲目の「イット・ハプンズ・エヴリデイ」も情緒的な原曲の雰囲気を壊すことなくリー・リトナーらしさを聴かせてくれる曲です。この曲の主役はリー・リトナーのギターと、アーニー・ワッツの美しいソプラノ・サックスですね。この滑らかなソプラノ・サックスは完璧にコントロールされた素晴らしい音色だと思います。ゆったりとした美しいバラードですが、バスドラムの押し出しは強くメリハリが効いていて、後半ではスネアドラムも力強さを増し、徐々に盛り上がっていきます。ドン・グルーシンのエレピは何か他の音が重ねてあるような、独特のサウンドに感じますね。トレモロの効いたストリングスが何とも言えない哀しげで美しい雰囲気を作っています。ちなみにカリフォルニア録音の参加ミュージシャンは他に、アレックス・アクーニャ、エイブラハム・ラボリエル、スティーブ・フォアマンです。

5曲目「イパネマ・ソル」は、ガットギターのクラシカルなアルペジオから始まり、一転、アップテンポなサンバへと変わっていきます。マイナー調のテーマを今度はギターとフルートがプレイしています。このアーニー・ワッツのフルートもいい音してますね。速いパッセージのギターソロに続いてはエイブラハム・ラボリエルのベースソロです。爪で連続的にはじいたり、手のひらを叩き付けたりという奏法が粗めの音色と相まって、ラボリエル独特のベースサウンドになっていますね。先のマーカス・ミラーとは全く違う、しかしながらどちらも相変わらず素晴らしい演奏です、はい。ラストは変則的なリズムのドラムにブラジリアンテイストのパーカッションが絡みつつゆっくりとフェードアウトしていきます。

6曲目はリオ・デ・ジャネイロ録音の「シンプリシダード」です。味のあるカウントのかけ声に続いて始まるこの楽器は何と言う名前なのでしょう。勉強不足で申し訳ありませんが(汗)この楽器に呼応するようにゆったりとしたリズムが加わり、流れるようなガットギターのメロディーが始まります。柔らかい音色のエレピが絡んでいますね。この曲のストリングスは左右に大きく広がって存在感があります。時折ピチカートも聞こえてきますね。柔らかめのサウンドのベースはスラッピングも入りエレキベースであることは間違いないのでしょうが、時折ウッドベースのような音色も感じられ、ちょっと不思議な感じがします。ミディアムバアラードといった感じの曲調ですがパーカッション満載で、ブラジルっぽさがよく出ていますね。右チャンネルから聞こえるのはフィンガースナップでしょうか、それともウッドブロックでしょうか。最後はまたイントロの楽器に戻って終わります。

ラスト7曲目の「ア・リトル・ビット・オヴ・ジス・アンド・リトル・ビット・オヴ・ザット」は、まずスチール弦のアコギから始まり、おや? これまでと違うぞ? という感じがしますね。その後、軽いレゲエのリズムが入ってきて、やっぱりこれまでとは違うユーモラスな雰囲気の曲になっていきます。メインとなる楽器もガットギターではなくクリアなトーンのエレキギターで、これはどちらかというとオマケ的な扱いの曲なのかな、とも思えます。そういえばタイトルもちょっとそんな感じがしないでもないですね。明るくリラックスした雰囲気の中、「リオ・ファンク」を少しフェイクしたようなフレーズも顔を出し、ますますオマケ感が増してきました(笑)。ホーンセクションのアレンジも楽しいですね。こういう楽しさもブラジル音楽のひとつの側面なんだぞ、という事なのかもしれません。好意的に解釈しすぎでしょうか(笑)。


以上、アルバム『イン・リオ』の全7曲を聴いてきました。全体のサウンドとして、音の粒立ちや音質、ダイナミックレンジ等も申し分ありませんが、まあ欲を言えばもうひとつ何かドスンとインパクトのある音が感じられたらよかったかな、と思ってしまいます。さらに、それぞれの曲の楽器編成が似通っていることもあり、アルバム全体の色合いに少し物足りなさを感じてしまうのも残念なポイントですね。しかしながら、リー・リトナーのガットギターの音色の美しさ、演奏の素晴らしさをじっくりと堪能できるのはもちろん、バックを務める一流ミュージシャンの名演奏をも細部にわたって味わえる、非常にクリアな音質のアルバムであると言えるでしょう。過度なコンプレッションが施されておらず、全体の音量は低く感じられますが、こういう音楽はしっかりとしたオーディオ装置でボリュームを上げて楽しむのが最高だと思います。地球の裏側から、爽やかなブラジルの風が吹いてくるのを感じられるかもしれませんよ。
なーんちゃって(笑)。


   


  よろしければランキング投票をお願いします→ 

COMMENT

POST COMMENT


プロフィール

さはんじ

Author:さはんじ

FC2カウンター

ブログランキング参加中


にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村
ブログランキングならblogram

おきてがみ


足あとを残せます。

アーカイブ

 

検索フォーム

Amazon 特集情報



Google AdSense

まずは「知る」ことが大切


blogram

にほんブログ村ランキング

↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。