Deep Purple『MACHINE HEAD』

2014.10.27(Mon)


マシン・ヘッドマシン・ヘッド
(1996/10/10)
ディープ・パープル

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いやいや、レビュー記事の更新が滞っているうちに、暑い夏が過ぎて秋も深まってきてしまいました。これまでこの時期には意識して秋らしい落ち着いた雰囲気のCDのレビューをする事が多かったのですが、今回は何を血迷ったのかバリバリに暑苦しい(笑)アルバムを取り上げちゃいました。(ホントは真夏の猛暑の中のほうが面白いかなと思って画策していたのですが、諸々の事情で大幅に遅れてしまったのです)

という訳で、今回のCDレビューは1972年に発表されたディープ・パープルの名盤『マシン・ヘッド』です。ハードロックのバイブルと言っても過言ではない名曲「ハイウェイ・スター」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を収録した、あまりにも有名なアルバムですね。

余談ですが、千葉県船橋市の非公認ゆるキャラ、ふなっしーが初めて買ったCDがこの『マシン・ヘッド』なんだそうですよ。ふなっしーのファンも要注目のアルバムということです。…違うか。
さあそれでは過ぎ去りし夏を偲んで、暑苦しさ全開のCDレビュー、いってみましょう!

このアルバム『マシン・ヘッド』のレコーディングにおけるアクシデントのエピソードは、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の歌詞にもなっているくらいに有名な話のようです。まあ簡単に言うと、レコーディングをするつもりだった場所がその直前に火事になってしまい、どうしようかと試行錯誤して結局は空いていたホテルの廊下で収録した、ということになります。このあたりはなかなかに面白いお話しなので、興味のある方はWikipediaなどをご覧になってください。

さて、「ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンのスタジオ盤アルバムは、音がショボくてどうも好きじゃないんだよねえ〜」という声をよく耳にします。昨今の住宅事情等を考えるとなかなか難しいとは思いますが、そういう感想をお持ちの方々にはぜひぜひ爆音で聞いてみる事をお薦めしたいですね。60〜70年代前半頃のレコーディングは良い音のものも沢山ありますが、小音量でも迫力のあるサウンド造りという点ではまだまだ未発達であったと思います。ここでは専門的な話は避けますが、当時のロックを楽しむならできるかぎり大音量で、というのが私の持論であります。

前作『ファイアボール』のレコーディングの際に、ドラマーのイアン・ペイスはスタジオ(たぶんドラムブースという意味だと思います)の音質が気に入らず、廊下でドラムの録音をやり直したのだそうです。この経験をふまえて『マシン・ヘッド』もレコーディングスタジオではない場所で録音することになったとの事(これもWikipediaに記載があります)なので、『ファイアボール』の前にスタジオで録音された『イン・ロック』の収録曲と、『マシン・ヘッド』のドラムサウンドを、聴き比べてみました。もちろん録音の時期や技術的な手法、方針なども違うでしょうから一概には言えませんが、『イン・ロック』のほうは太くつまったような音で、まあいわゆるクラシックロックによくあるサウンドという感じです。対して『マシン・ヘッド』のほうはよりナチュラルで生のドラムセットそのものに忠実な音、どちらかというとロックというよりはジャズ・フュージョンのドラムサウンドに近いように感じました。力強さを強調するロックでは、ドラムのサウンドをモノラルに近いくらいまで中央に寄せて迫力を出すのが常套手段だと思うのですが、『マシン・ヘッド』では(曲によりますが)ドラムの音像が本当にジャズのように左右に広がっています。これらの事から、イアン・ペイスは自分がプレイしている時に聞いている生のドラムセットに近いサウンドが好みだったのではないか、と推測できます。そしてこの迫力よりも忠実さを求めたドラムサウンドの傾向は、やっぱり大音量で聞くべきだよね、という事にもつながってくる訳です。

ということで、今度は『マシン・ヘッド』の全体のサウンドを見ていきたいと思います。この強力なリフとビートによるバンドサウンドの中で、一番目立っている楽器はギターではなく、ジョン・ロードがプレイする、より図太い音色のハモンドオルガンです。一聴するとギターと見まがう(聴きまがう?)ばかりのオーバードライブサウンドは、おそらくオルガンをギターアンプに入力して歪ませているのでしょう。元々の(クリーンな)音色がギターよりも太い訳ですから、このオルガンのプレイするリフは本当に強力です。このオルガンが右チャンネル側に、そして負けじと頑張っている(笑)リッチー・ブラックモアのギターが左チャンネル側に配置され、前述のステレオ感たっぷりのドラムサウンドと共に音場の広がりが作られています。中央にどっしりと定位しているのは、時には柔らかく時には硬くと多彩な音色の演奏を聴かせてくれるロジャー・グローヴァーの図太いベースと、ユニゾンやハモりが多重録音されたイアン・ギランのハイトーン・ボーカル、ということになり、以上がこのアルバムのベーシックなサウンドの配置となっています。ここに、曲によってソロや他の楽器が加わったり、様々なアレンジが施されていくのが基本的なパターンであると言えるでしょう。

さてさて、それでは1曲ずつ聴いていきましょう。もちろん可能な限り大音量で、ですよ。

1曲目は、言わずと知れたディープ・パープルの代表曲「ハイウェイ・スター」です。細かなビートとギターのコードの打ち鳴らしという導入から、ベースが入りオルガンとギターがユニゾンで力強くビートを刻み、やがてオルガンのみが印象的なシンコペーションのリフに移って、ボーカルのシャウトがステレオ音場のあちこちから沸き上がってくる…。アルバムのオープニングにふさわしい、このドラマチックなイントロはもの凄く計算されているのだろうと思います。パワフルなのに、ボーカルが入るまでバスドラムが一度も聞こえてこないのも面白いですね。ボーカルにはいい感じに劣化したディレイがかかっています。
車のエンジン音を思わせるグリッサンドが右から左へゆっくりとパンニングされた後は、オルガンが中央でバロック音楽風のフレーズを基調としたスピーディーなソロをとります。太く攻撃的でささくれ立ったようなサウンドの存在感は絶大です。
そしてボーカルパートを挟んで、ギター小僧がこぞってコピーをしたという(笑)ギターソロに突入します。このソロはツインギターになっているのですが、面白いのはメインとなるギターパートは右チャンネルよりに定位していて音量も大きく、もう片方は中央で音量やや小さめにミックスされているんですね。なので、さらに音量小さめの左チャンネルのギターのリズムもよく聞こえてきます。したがってこのギターソロのパートはサウンドバランスがかなり右側に片寄っているのですが、まあそんな事は気にしちゃいけないですね(笑)。
エンディングの一番最後、オルガン(たぶん)がギャーン!とものすごい音を出していますね。大迫力ではありますが、何か破壊的なニオイのする音で、機材は大丈夫なの?と心配になってしまったりして。

2曲目、「メイビー・アイム・ア・レオ」は、なんとスネアドラムが右寄りに、バスドラムが左寄りに振り分けられていて、リズムを刻むとサウンドが左右に揺らぐような、面白い効果が作り出されています。ギターとオルガンはベーシックな配置で力強いリフを刻んでいます。ドラムが中央にいないので、ベースの演奏がよく聞こえてきますね。間奏のギターソロはリバーブたっぷりのややこもったような音色で、ギターリフとは逆の右側に定位しています。と思ったら、続くエレキピアノのソロは左側に現れました。このエレキピアノもがっつり歪んでいて、極端にトレモロを伴っています。ソロの後は控えめに中央で演奏を続けていますね。ラストのギターソロは中央に定位しています。

いきなり連打のドラムソロから始まる3曲目は「ピクチャーズ・オブ・ホーム」です。イントロと間奏のフレーズだけは2本のギターが左右に振り分けられていますが、他はベーシックなサウンド配置になっています。気のせいでしょうか、ギターとオルガンのリフが他の曲よりもややぼんやりとしたような音色に聞こえて、その分スネアドラムの音が際立っているように思えます。歪んでいないオルガンのロングトーンも聞こえてきますね。ボーカルのディレイ成分のみに深めのリバーブがかけられているようで、残響は深めでもボーカルはくっきりと聞こえています。短くも前衛的で印象深いベースソロのサウンドも、荒々しく深みがあっていい感じです。ブレイク部分に残るギターのエコーがこれまたいいですね。エンディングのギターソロはなぜか右側から聞こえてきます。

4曲目の『ネヴァー・ビフォア』は、ステレオ感たっぷりのドラムから始まります。短くコードを刻むオルガンの音に対して、それよりもやや細かいフレーズをプレイするギターは音像こそ大きいものの、こもったような音質で残響もたっぷりしており、奥行きが感じられます。ぶりぶりとした質感の太いベースのフレーズが印象的ですね。サビからは中央にエレキピアノが現れます。途中、バラードのような雰囲気になるセクションではフレットレスベースのような音色も聞こえてきます。その後のフィルターのかかったような音色の、楽しげなギターソロもいい感じです。アルバム収録曲中で一番短い曲ですが、多彩な構成が楽しめる1曲だと思います。

そして5曲目は、ロック史上最も有名で印象的と称されるリフを持つ名曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」です。冒頭、あのリフをプレイするギターが左チャンネルから鳴り出すと、その音が録音現場の空間に響き渡るような雰囲気が、ヒスノイズの中から感じられます。また、演奏中にも度々ギターの音に共鳴して振動するスネアドラムの響き線の音がはっきりと聞こえています。この曲のレコーディング時、あまりにも大音量だった為に警察沙汰になったというエピソードが残っていますが、こういった部分からも相当な爆音で演奏していたことがわかりますね。
とりわけロックギターの名曲というイメージが強い曲ですが、オルガンのサウンドの多彩さにも注目したいところです。例のリフは図太いオーバードライブ・サウンド、ボーカルのバックになるとクリーン気味のサウンドから徐々に歪み量を増していき、サビの「♪ Smoke on the Water〜」の歌詞の部分では爆発的なディストーション・サウンドへと移り変わっていきます。この最高潮の部分では不協和音を鳴らしてより前衛的な演出をしているのかもしれません。
ドラムは他の収録曲と異なり、ほぼ中央に寄せられたモノラルに近い定位になっていて(タムは若干左右に振れる程度に広がっているようです)、太く存在感のあるベースと共に力強さを出しています。また、エンディングでは逆回転サウンドのようなハイハット(これ、どうやって演奏しているんでしょうね)が印象的で、なおかつフェードアウトする頃には位相がずれたようにウネり気味のサウンドになっていきます。
全体のアレンジ構成やサウンドは非常にシンプルですが、力強くキャッチーで、しかも至るところに小技が効いている、やっぱり納得の名曲です、はい。

続く6曲目、「レイジー」のイントロはオルガンのインプロビゼーションから始まります。静かな導入から徐々にエキサイトしていくその音像は複数に聞こえますが、オーバーダビングしている様子はなく、オーバードライブ等いくつかの異なるセッティングのスピーカーを別々に配置し、その入力を切替えたり、マイク収録したあとでボリュームやパンポットをミキシング操作して作っているのだと思います。このアイデアとテクニックには脱帽ですね。バンド全体が入ってくると、パワフルなブルース・セッションのような曲になっていきます。ベーシックなサウンド配置はそのままに、ソロ楽器が中央でプレイするというシンプルなサウンド構成です。インストゥルメンタルの曲かと思っていたら、4分過ぎの転調からようやくボーカルが入ってきました。ブルースハープのソロもあって、これは本当に7分におよぶブルース・セッションそのものですね。

ラスト7曲目はサビでのリフが非常に印象的な「スペース・トラッキン」です。ディレイとオーバーダブを組み合わせているようなボーカルの空間処理が見事ですね。まさに宇宙的(?)とでも言える、かな(笑)。サウンド配置は終始ベーシックなままで、この曲に関してはソロ楽器のオーバーダブによる追加はされていないようです。後半に右チャンネルのみで聞こえるカナモノ系のパーカッションだけが追加されているようですが、うーん、これが本当にわざわざ追加するほどに必要な音なのでしょうかねえ(笑)。
この曲はドラムの抑揚によるレンジ感が素晴らしく、後半のドラムソロに至ってはステレオ空間に目一杯広がった表現力豊かなプレイが堪能できます。また、ギターソロとドラムソロの後ろで(右チャンネルから聞こえるので、横と言ったほうがいいかな)オルガンのプレイする音に注目です。これ、たぶんオルガンだと思うのですが、ギターの空ピッキングみたいなサウンドですよね。一体どうやって演奏しているんでしょうか? 何か高域と低域のノイズを交互に出して歪ませているのでしょうね。このあたりのアイデアも秀逸です。って、もしギターだったらすみません(笑)。最後はイアン・ギランのシャウトと暴れまくるドラムを、ギター、オルガン、ベースがユニゾンのリフで後押ししつつフェードアウトして、このアルバムは幕を閉じます。


今回この『マシン・ヘッド』を改めて聴いてみて、実に隅々まで計算されているであろう事に驚かされました。楽曲やその構成、アレンジからエンジニアリングに至るまで、神経質なまでにきっちりと組み上げられていて、こう言っては失礼極まりないとは思いますが、ハードロックって元来ラフでパワフルでワイルドなものじゃないの?という気さえしてきます(笑)。もちろん演奏もサウンドもハードロックそのものなんですけどね。
音楽製作のあらゆる要素に様式美を追求したような(大袈裟かな?)このアルバムは、だからこそキャッチーでもあり、逆にベタで鼻につくという意見も聞かれるのでしょう。でも、これには優れた才能と多大な労力が必要である事は想像に難くありませんよね。

とまあ、小難しいことはさておいて、やっぱり出来得る限りの爆音で体感するというのが、この名盤のもっとも正しい楽しみ方なのではないかと思う訳です、はい。


   


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COMMENT

ジオヤー

お久しぶりです、こんばんは。

あえてこのアルバムを取り上げたさはんじさん、素晴らしいです。やはり良いものは良いってことですよね。
名盤たるもの、素人目では分らない隠された部分にいろいろ秘密があるようで、一見ワイルドな作品のようでも、緻密に作られてるんですね~。
「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は、ホント、バイブル的作品ですが、ただ、私は、もっぱら「ライヴ・イン・ジャパン」の方で聴いてました。

2014.10.30(Thu) 03:13 | URL | EDIT

さはんじ

>ジオヤーさん
コメントありがとうございます。

ホントに聴けば聴くほど、よくできているなあ〜と思うアルバムです。

「ライヴ・イン・ジャパン」も名盤ですね。
明瞭度は劣りますが、残響によって音に厚みと迫力があります。
そして何より、熱狂するオーディエンスの影響を受けているせいか、
演奏の気合いが段違いですよね〜。

2014.10.30(Thu) 23:52 | URL | EDIT

PATTI

爆音

ご無沙汰してます\(^o^)/
ちょうど1週間前、セッションでスモークオンザウォーターが演奏され、耳をつんざく大爆音にすっかりやられました。
次の日、クレッシェンドの耳栓買いました(^_^;)
ブログ更新しましたので、覗いてってくださいねm(__)m

2014.11.30(Sun) 23:59 | URL | EDIT

さはんじ

Re: 爆音

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

爆音はなかなかに気持ちがいいですけど、耳を壊さないように充分お気をつけくださいませ。
耳栓も有効なアイテムですよね〜。
ロックなPATTIさんの歌声、楽しみにしていますよ(^^)

2014.12.01(Mon) 23:09 | URL | EDIT

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