Perfume『GAME』

2015.04.27(Mon)


GAMEGAME
(2008/04/16)
Perfume

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キャッチーでキュートな楽曲と、感情を抑えたエフェクティブなボーカルをハードなテクノ・ハウス・サウンドに乗せ、洗練された独特なダンスでパフォーマンスするパフュームのオリジナリティには強烈なインパクトがあります。J-POPの新たなスタイルを築いたアーティストと言っても過言ではないでしょう。
ということで、今回のCDレビューは2008年にリリースされたパフューム初のオリジナルアルバム『GAME』を取り上げてみたいと思います。ヒット曲「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」等を収録している、まさにパフュームの出世作と言えるアルバムですね。

サウンド・サイドでレビューに取り上げるCDとしてはやや異色のアルバムということになると思いますが、はてさて、どうなることやら。お楽しみに…?(笑)

パフュームのサウンドを語る上で、プロデューサーである中田ヤスタカ氏を無視するわけにはいきません。というよりも、このアルバム『GAME』の、プロデュース、全楽曲の作詞・作曲・編曲・演奏、プログラミング、エンジニアリング、さらにはマスタリングまで、ボーカルを除く全てのサウンドに関する工程を中田ヤスタカ氏ひとりがおこなっているというから驚きです。もはや中田ヤスタカ名義のアルバムとしてリリースたとしても不思議ではない、と思ってしまうのは私だけではないはずです。音楽製作の全てのプロセスがパソコンでできるようになったからこそ、こういった事も可能になったのだと言えるでしょう。すんごい時代になったものです、はい。

さて、パフュームのサウンドの中で最も特徴的なのは、何と言ってもそのエフェクティブなボーカルでしょう。ケロケロボイスなどと言われるこのサウンドは、本来は音程補正用ソフトウェアであるオートチューン (Auto-Tune) 等のパラメータを、極端に設定することで作られているようです。感情表現の重要な要素となる微妙な音程感を平坦化し、さらに非人間的な音質に加工されたボーカルは、中田ヤスタカ氏によるハードなテクノサウンドによくマッチしています。今となってはさほど珍しくもないこのボーカルエフェクトですが、当時はアイドルグループの曲の全編にこのような加工をするというのは相当に思い切った決断だったのではないかと想像します。しかしながら、ボコーダー等のように人間の声とはかけ離れたようないわゆるロボットボイスではなく、ボーカリストのキュートなキャラクターがきちんと感じ取れるところがミソなのでしょうね。

このアルバム『GAME』も全編に渡ってこのボーカルエフェクトがかけられています。が、よく聴くと、ボーカルの音程変化が滑らかにスライドする部分と、不自然に段階的に変化する部分があり、また、音色も様々に異なって聞こえることなどから、各種エフェクトのかかり具合はその場その場に応じて細かく調整されているようです。また、非常に印象的なのはブレス音(息継ぎの音)が目立つことです。無表情で非人間的なボーカルキャラクターを目指すかのような加工がなされている一方で、肉声のうちで最も人間的で生々しいブレス音をカットせずに活かしている、そして時にはそれを殊更に強調しているように感じられる部分もあり、むしろブレス音を重要視しているように思えます。この相反するような方向性、そして大胆かつ緻密で柔軟なサウンドメイキングも、パフュームの音楽の魅力のひとつなのかもしれませんね。

ボーカルアレンジも凝っています。3人組であることを最大限に活かした、ボーカルのフレーズごとのパート分けや、合いの手のような掛け合い、そしてハーモニーなど、これでもかというほどに多彩なアイデアを駆使してリスナーを飽きさせません。各パートの定位も臨機応変に、1点にまとめたり左右に振り分けたりと、まさにサービス満点といった感じです(笑)。私にはどの声が誰のものなのかを聞き分ける事はできませんが、特にメンバーごとに決められた定位がある訳ではなく、ケースバイケースで組み替えているようです。このあたりもセンスなのでしょうね。

強烈な音圧感を持つオケに関しては、バスドラムの4つ打ちを強調したハウス・ミュージックの形態を基本形として、様々なソフトウェア音源を自由に組み上げて作られているようです。この4つ打ちのビートが生み出す陶酔感こそがパフュームの世界観を作り出す大きなポイントになっているのではないでしょうか。テクノでは割と敬遠されがちなシンバル系の音も相当に多用されて派手さを演出していますね。


さてさて、それではいよいよ1曲ずつ聴いていきましょう。

まず1曲目はパフュームの出世作にして代表曲といっても過言ではないでしょう「ポリリズム」です。CMソングとしてもお馴染みで、アニメーション映画「カーズ2」の挿入歌に採用されたことも話題になりましたね。冒頭、シンセサイザーのノイズで作ったリバースサウンドから始まり、一瞬のブレイク部分には先述のブレス音がはっきりと聞こえています。無表情に徹したようなハーモニーと、ドラムのフィルに相当する部分の派手さがとても印象的ですね。間奏部分では異なる拍子のリズムがいくつも重なり、タイトルそのものといった感じの、めまいのするような複合リズムを体感することができます。フィルターのかかり具合が異なるボーカルパートや、多彩な音色のシンセ音源がいくつも重なり、意表をついたブレイクやトーキングドラムのようなリズム音が出て来たりと、本当にアイデアの宝庫のような曲ですね。後半に出てくるバグパイプのような音は、もしかしたらボーカルのサウンドを加工して作ったものなのかな、という気もします。

2曲目「plastic smile」もブレス音から始まりますが、この音アタマは少々強引な波形編集をしたかのような不自然さがあります。が、これもアクセントとして狙ったものなんでしょうね。シンセサイザーのシーケンスと単純なベースライン、そしてハイハットの代替音として使われている金属的な音色のリズムが作り出すグルーヴが面白い楽曲です。「何か外れた」という歌詞がなぜか非常に印象に残りました。

アルバムタイトルにもなっている3曲目「GAME」は、ハードな音色のシンセベースを強調した、このアルバムの中で最もインパクトのある楽曲です。エレキギターの音も聞こえていますが、中田ヤスタカ氏がギターを弾いているというクレジットはないので、これはやっぱりバーチャルギターのようなソフトウェア音源を使用しているのでしょうね。なかなかそれらしいサウンドです。曲中に聞こえるロングトーンのシンセは相当に逆相成分が含まれているらしく、ステレオスピーカーから飛び出してくるように感じられました。この曲のボーカルは音程変化が滑らかなので、オートチューンのエフェクトは使われていないのかな、と思います。

4曲目「Baby cruising Love」は、全編に渡ってアコースティックピアノの伴奏が聞こえています。とは言っても、これもソフト音源なのでしょうが、実にリアルなサウンドですね。このピアノの音が楽曲全体にダイナミックな印象を与えているように思いました。この曲もブレス音から始まっていますが、最後もブレス音で締め括られているのが面白いですね。楽曲が終わった後もその気持ちは続いていく、という暗示なのでしょうか。

印象的なシーケンスのリフから始まる5曲目は、もはやバレンタインソングの定番となった感のある「チョコレイト・ディスコ」です。硬い音色のシンセベースの細かく動くフレーズと、何度も繰り返される “チョコレイト・ディスコ” というボーカルがとてもキャッチーで印象に残ります。アコースティックギターのストロークも聞こえていますが、これもソフト音源なのでしょうね。一番最後は少しテンポダウンしているようにも聞こえますが、これは私の気のせいなのかもしれません。爆発音のようなSEで終わるラストはインパクトがありますね。

6曲目の「マカロニ」は、重たいリズムと可愛らしい歌詞の対比が面白い楽曲です。コードを弾く柔らかい音色のエレキピアノが、レトロな雰囲気でいい感じですね。逆回転サウンド風のロングトーンは不思議で不安定な感じを出していて、これが歌詞の心情によくマッチしていると思います。

7曲目「セラミックガール」は、いかにもテクノらしい細かい符割りで無機的とさえ思えるメロディーに、キャッチーなサビを組み合わせた、ノリの良い曲です。時おり不自然なほどに長いリリースを持つシンバルの音が聞こえてきますね。2拍目と4拍目のスネアドラムの位置に鳴っている硬質なリズム音源はなかなかに強力です。途中に “ガール” というフレーズを加工したコラージュが挿入されていますね。スパッと途切れるように終わるエンディングもグッドです。

ほとんどすべてのボーカルが “take me tonight” という歌詞だけで構成されている8曲目「Take me Take me」も面白い曲ですね。比較的シンプルともいえるようなテクノらしいオケに、何度も繰り返されるボーカルのフレーズが見事に融合して、キュートでセクシーで不思議な浮遊感を伴う楽曲に仕上がっています。5分以上ある曲なのですが、飽きる事無く聴き終えてしまいました。まあ若い女の子にウィスパー気味に “take me” と繰り返されたら、男は(おじさんは、かな?)誰だってドキドキしてしまいますよねえ、あははは〜。

9曲目「シークレットシークレット」は、可愛らしい “ランランラン…” というスキャットから始まり、シンセサーザーによるドラマチックな展開から、ハードなテクノ・ハウスサウンドへと移っていきます。力強い4つ打ちがビートの基本になっていますが、時折ふっと抜いたりシンコペートしたりと、細かいワザが効いていますね。イントロや間奏のキャッチーなリフやシンセベースが目立ちますが、他にもたくさんの音色やフレーズのシンセサイザーが目一杯盛り込まれていますので、そちらにも注目したいところです。

バーチャルなジャングルを思わせる、シンセによるたくさんの鳥や虫の効果音から始まる10曲目「Butterfly」は、まさに蝶が舞うような上昇・下降フレーズのシーケンスが印象的です。ボーカルの長い語尾はビブラートどころか少しの音程の揺れさえも無く、その部分だけ聞くとまるでシンセのロングトーンのようで、オリエンタルな雰囲気のある細かなシンセサイザーのシーケンスと対照的でありながら、うまくマッチしているように思います。

11曲目の「Twinkle Snow Powdery Snow」は歌詞のさりげない韻の踏み方がいいですね。ヒップホップ系J-POPによくある強引な体言止めは嫌いですが、こういう感じは心地良くて好きです、はい。
重低音のベースとドラムが抜けると全体がラジオボイスのようなサウンドになるのは、ベースとドラム以外のオケおよびボーカルはフィルターで低音をばっさりカットしているからなのでしょう。全編通して聞こえている少しざらつき気味のエレキピアノも例外ではありません。こういったサウンド的な変化の付け方も面白いですね。部分的にボーカルのオートチューン系エフェクトが強くかけられていて、音程変化がはっきりと段階的に聞こえるところがあります。不自然なんですけど、なんだかもう慣れちゃいました(笑)。

ラスト12曲目の「Puppy love」は他の曲と違って、生ドラムに近い音色のドラム音源が使われています。力強いサウンドではあるものの、バスドラムとスネアドラムのコンビネーションによるビートは、ヘビーな4つ打ちよりもやっぱり軽快なノリになりますね。しかしながら絶妙なリズムアレンジに加えてスピード感のあるシーケンスや、サビや間奏で多用されるシンバルなどが派手さを盛り上げていて、この曲だけが軽く聞こえてしまうような事はありません。ベースもエレキベースに近い音色が使われていますが、生っぽく聞かせようなどという意図は微塵も感じられず(笑)、アルバム全体のコンセプトは保たれているように思います。控えめに聞こえているボーカルのハーモニーパートは、ボコーダーっぽいサウンドに加工されていますね。


この『GAME』というアルバムには、これまでレビューしてきたように、非常に多くの要素が盛り込まれています。細部にまで気を配られた楽曲、既成概念に捕われない自由で刺激的なサウンド、その中にありながらも愛らしいキャラクターを失わないボーカル、などなど、一言では言い表せない魅力が詰まっていて、これが時代のニーズに一致したのなら、大ヒットした事も大いに頷けるというものです。そしてライブパフォーマンスではこれらのサウンドに大音量の迫力が加わり、ダンスや衣装、照明といったビジュアルの効果も相まって、より多くの人々を魅了していくのでしょうね。
今では超売れっ子プロデューサーとなった中田ヤスタカ氏の才能とセンスには脱帽するしかありません。


    


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COMMENT

ももPAPA

さはんじさん こんばんわ♪

今回は、異色の曲をピックアップされましたね。
パフュームはほんとに不思議な魅力を持ったユニットで、彼女たちがメジャーになる前、CMソングデビューした頃から気になってました。
テクノな味付けを前面に出すことや、その振り付けがパフュームだけが持つオリジナルなキュートさをいっそう際立たせてて 私もいつしかはまってしまいました;^^

2015.04.28(Tue) 21:09 | URL | EDIT

さはんじ

Re:

>ももPAPAさん
コメントありがとうございます。

パフュームのレビューはずっとやってみたいと思っていたんです。
でも、実際に記事を書くのはとても大変で、かなり時間がかかってしまいました(^^;

パフュームは、強力なサウンドと独特なビジュアル、そして三人のキャラクターに、
思わず引き込まれてしまうような、魅力にあふれたグループですね。

2015.04.28(Tue) 23:25 | URL | EDIT

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