Donald Fagen 『The Nightfly』

2010.06.09(Wed)


The NightflyThe Nightfly
(1993/04/21)
Donald Fagen

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サウンド・レビューに取り上げるには、あまりにもベタなアルバムで少し気が引けるのですが、今回は1982年に発表されたドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』です。非常に緻密に録音された作品で、その音質とバランスの良さから多くのレコーディングやPAのエンジニアが機材やシステムのチェックにこのアルバムを使用する、という話は有名です。時代的にはデジタル録音が始まったばかりで、多くのエンジニアが新たなデジタルレコーダーに四苦八苦していた頃だと思うのですが、そんな中でいきなりこんな頂点を極めてしまうような作品が発表されてしまった訳です。

スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーは莫大な費用と時間をかけてスタジオ作業をする完璧主義者として知られていました。このドナルド・フェイゲンの初ソロアルバムでも参加ミュージシャンの顔ぶれを見れば、その豪華さに驚かされます。さらにこの超一流ミュージシャン達を、曲ごとにオーディションをくり返し、厳選して起用していたというから驚きを通り越して呆然としてしまうくらいです。贅沢にも程がある、と言いたくなりますね。

さて、肝心のサウンドです。全ての曲に共通して、全体を包み込むように広がる柔らかいエレクトリック・ピアノの音が聴けますが、それ以外のサウンドはどれも皆非常にタイトです。今風の図太いサウンドや刺激的なサウンドは何処にも見当たりませんし、シンセサイザーの音色などはどれもチープと言っても良いくらいの音です。今の耳で聴くと、周波数レンジのローエンドもハイエンドも足りないし、音圧も標準以下でしょう。このアルバムがリリースされたのはまだCDが世に出たばかりの頃で、音楽媒体の主流はアナログレコードだった事を考えれば仕方がないとはいえ、現代の音楽に慣れた人には物足りないサウンドに聞こえるかもしれません。しかしながら、全ての音に圧倒的な存在感があり、それらが一体となったサウンドはまさに奇跡のような完成度です。これは超一流のミュージシャンの高度な演奏を適材適所に配置したアレンジと、1曲ごとに計算され尽くした緻密なミキシング、そして何よりも卓越した音楽的センスによって生み出されていることに間違いありません。
いや、時間と労力をたっぷりとかけて創り出された作品を奇跡と呼んではいけないのかもしれませんね。

この『ナイトフライ』を「オシャレなサウンド」と言っているレビューをよく見かけます。確かにジャズ/フュージョン系のミュージシャンが参加していて、そのカラーが色濃く出ているとは思いますが、私はオシャレというよりはもっとヒネクレたというか、あらゆるものを茶化したようなイタズラっぽさを感じてしまいます。でもカッコいいんですよね。今風に言うと「チョイ悪」かな(笑)。

余談ですが、15年ほど前にこの『ナイトフライ』の1曲目「I.G.Y.」が、IBMのノートパソコンThinkPadのTVCMに使用されました。時間の関係からか、ひどく強引な編集がされていましたが、アップルファンの私にとっては悔しいくらいにカッコいいと思った記憶があります。今、YouTubeなどで見るとそれほどでもないんですけどね。
しかし、この曲のあまりにも皮肉な歌詞が企業イメージに悪影響を与えるという懸念はなかったのでしょうか。それとも(裏に隠された皮肉な意味を理解せず)表面上の言葉だけを見ていたのでしょうか。いや、やっぱり歌詞のことなんて何も気にしていなかったのでしょうね。
そういうCMってたくさんあるし…。


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