Richard Tee 『Inside You』

2010.08.04(Wed)


インサイド・ユーインサイド・ユー
(2008/05/21)
リチャード・ティー

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リチャード・ティーほど個性的なキーボード・プレーヤーはいなかったでしょう。と、過去形で書かざるを得ない事はとても悲しいのですが、もう彼が亡くなってから17年が過ぎました。400枚を越えるアルバムに参加し、自身のリーダー・アルバムは5枚発表しています。
今回はその中から1989年にリリースされた『Inside You』をピックアップしてみました。このアルバムはファンの間ではあまり歓迎されなかったように記憶しています。私もあまり気に入ったとは言えないアルバムでしたが、サウンド的にはリチャード・ティーの個性が最も表れているように思います。

タッパン・ジー・レーベルからリリースされた2枚のアルバム『STROKIN'』と『NATURAL INGREDIENTS』は名盤ですが、サウンド的には良くも悪くも70年代フュージョンによくあるデッドな音で、まあさほど特筆できるようなサウンドではありませんでした。が、1985年に発表された『The Bottom Line』は、それまでとは全く違うサウンドで、以降のリチャード・ティーのアルバムに共通する、彼独特のサウンドが確立したアルバムだと言えるでしょう。このアルバムは楽曲的にもバラエティーに富んでいて、ファンも大満足だったのではないでしょうか。
そしてその4年後に発表されたのが、この『Inside You』です。全体的にパンチのないメロウな雰囲気で統一されていて、リチャード・ティーの大きな魅力のひとつである、軽快かつ力強い、リズミカルなアコースティックピアノの聴けるような曲は見当たりませんでした。これが多くの人をがっかりさせた原因のひとつになったのだろうと思います。

さて、このアルバムに代表される独特なリチャード・ティー・サウンドを、言葉でどう表現したら良いのか、実は今でも少し悩んでいます(汗)。
充分に太い(体型の事ではありませんよ)のですが、密度感が希薄といったらいいのでしょうか、全体にふわりとしたような印象のサウンドです。マーカス・ミラーのベースやスティーブ・ガッドとデイブ・ウェックルのバスドラムにはどっしりとした重量感があるのに、トータルのサウンドはまるでウレタン素材であるかのように、太さの割に軽く感じます。いや、軽いという表現は間違っているような気がしますね…、こんな時に私のボキャブラリーの貧困さが恨めしく思えてしまうのですが、太く密度感のない(こればっかりだなあ)このサウンドは、決して悪い訳ではなく、むしろリチャード・ティーの音楽性にぴったりとマッチしているように思います。おそらく本人も意図してこのサウンドを作り上げているのでしょう。

少し細かく見ていきます。リチャード・ティーのサウンドで非常に大きなウェイトを占めるのは、やはりあのフェイザーがたっぷりかかったフェンダー・ローズの音でしょう。アルバムの中でもほとんどの曲でそのサウンドを聴くことができます。そしてリチャード・ティーが好んで起用するベーシストはマーカス・ミラーやウィル・リー(この『Inside You』には参加していませんが)といった、重心が低く、しかもスラッピングを多用する人達が多いように思います。この組み合わせこそが、この不思議な(?)サウンドの核になっているような気がします。
さらに、しっかりと胴鳴りのした深みのあるドラム、たっぷりとリバーブがかかったストリングスやギター、サックス、そしてキュート(?)なボーカル等々、これらが一体となって構成されたのが、優しく暖かみのある、リチャード・ティー・サウンドなのでしょう。

このアルバムにおけるアコースティックピアノは音楽的には非常に重要な位置を占めていると思いますが、サウンド的には柔らかい雰囲気の中に置かれた硬質なアクセントといった印象です。ラスト11曲目、生ピアノのソロ曲である「Wishing」も、アルバム全体の中のアクセントのような位置づけに感じます。改めて聴き返してみても残念な気がしますが、きっと本人はこういうメロウな感じが好きだったんでしょうね。

この『Inside You』の3年後にリリースされ、遺作となったアルバム『REAL TIME』は、この特徴的なサウンドがやや薄れています。おそらくフェンダー・ローズの割合が減っている事が大きく影響しているのでしょう。しかし、このアルバムのほうが嬉しかったりする私は、やっぱりリチャード・ティーの力強いアコースティックピアノが聴きたかったのでしょうね。もちろん、リチャード・ティーの人柄を反映したかのような、優しく暖かい雰囲気はすべてのアルバムを通して健在です。


   


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