John Tropea 『LIVE AT MIKELL'S』

2010.08.25(Wed)


ライヴ・アット・ミケルズライヴ・アット・ミケルズ
(1997/12/17)
ジョン・トロペイ

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日本ではあまり知名度が高くないのかもしれませんが、ジョン・トロペイは70年代フュージョン・シーンで大活躍したギタリストです。スタジオ・ミュージシャンとして世界的ビッグネームのアーティストのアルバムにも多数参加していますし、90年代後半からはまた自身のアルバムもコンスタントに発表しているようです。
このライブアルバム『ライブ・アット・ミケルズ』は、1980年にニューヨークのライブハウス「ミケルズ」で収録されたものの、長い間発表されることなくオクラ入りしていたのだそうです。この幻の音源がCDとして発表されるには1994年まで待たなければなりませんでした。
参加ミュージシャンの豪華さはもちろん、色々な意味でスケールの大きなアルバムです。

ライブレコーディングの雰囲気を出すために、曲間などにはライブハウス内のガヤガヤ音や歓声が聞こえてきますが、演奏と客席との一体感はまるで感じられません。強いて言えば1曲目が始まる部分はそれらしいかな、と思えるくらいです。もしかしたらオーディエンスの音は後から付けたのかもしれません。
演奏には全体にたっぷりとリバーブがかかりライブ感を演出していますが、それぞれの音は非常にクリアで、ほとんどスタジオ録音と変わらないようなクオリティです。一発勝負であるライブの緊張感を出すためにライブハウスを録音場所に選んだ、というだけで、レコーディングはとてもしっかりとされていると思います。ただしドラムのサウンドだけはスタジオでのレコーディングに比べて条件が良くないのでしょう、アタック音はしっかりとしていますが、深みのある胴鳴りの音がしないのはイマイチ残念なところです。

それにしても、これはライブハウスで演奏・収録する規模のバンド編成ではありません。ツイン・ドラムに11人のホーン・セクションが入り、曲によってはゲストも迎えているのですから、ライブハウスの小さなステージ上にいったい何本のマイクが立っているのでしょう。普通に考えれば30本近い数のマイクが必要になるのではないでしょうか。
どうやら会場にはレコード・プラント・スタジオの録音車両が横付けされ、3日間に渡って収録が行われたようです。それにしたって1980年ですから、マルチトラック・レコーダーはせいぜい24トラックくらいだったはずです。どうやってレコーディングされたのかとても興味深い所ですが、残念ながらCDのライナーノーツにもあまり詳しい情報は記載されていません。
いずれにしても当時最高峰の技術を結集して録音されたであろう音源が、15年近くもオクラ入りしていたとはとても信じられません。まあ原因はよくあるレコード会社との契約の問題か何かなのでしょうけど、本当にもったいない話です。

そしてもうひとつ注目したい点は、3曲目「CAN'T HIDE LOVE」のみ、リチャード・ティーによるアコースティックピアノが後からオーバーダビングされている事です。これがリチャード・ティーのラスト・レコーディングとの記載があるので、このオーバーダブは1992~3年のはずです。収録から10年以上経ってから重ねられたとは思えないくらいに自然に馴染んでいて、オーバーダブだと言われなければ収録当時のバンドメンバーにリチャード・ティーがいたと思ってしまいそうです。これも当時のレコーディングのクオリティが高かったからこそ、なのでしょう。
また、この曲には、ベーシストのウィル・リーを含む4人のボーカルが入っています。情報が少なくてよくわかりませんが、これもおそらくオーバーダビングされたものだと思います。
さらにストリングス系などのシンセサイザーも後からオーバーダビングされているようです。

ところで、このアルバム全8曲は、なんと5人のエンジニアによって(それぞれ1~3曲ずつ)ミキシングされているとの記載がありました。スタジオもバラバラで、これも一体どんないきさつでこうなったのか不思議ではありますが、曲ごとのミキシングはきちんと統一されていて、違和感はありません。

この『ライブ・アット・ミケルズ』は、本当に素晴らしいサウンドクオリティで、とてもライブアルバムとは思えません。というか、ここまで手を加えられたものをライブアルバムと言って良いのかとさえ思ってしまいます。たまたまライブハウスで録音されたベストアルバムと言ったほうが、しっくりきそうです。
ただ、この素晴らしいサウンドと演奏の余韻に浸ろうと思っても、曲が終わると同時に聞こえてくる歓声のウソ臭さに、感動は一気に冷めてしまうんですけどね(笑)。


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COMMENT

PATTI

あれ?まだこれ読んでなかった(^^;;

さはんじさん、こんばんわ。

レヴューは全部読んだつもりだったのに、抜けぬけでした・・・

すごいんですね!読んでるうち聞きたくてしょうがなくなり、検索したら、
http://www.cdbaby.com/cd/johntropea2

で、視聴できました。
でも、何十秒じゃ、わからないわ。
7th Heavenって曲が7拍子ってことくらいはわかりましたけど。
CD聞きたいけど、いつ入るかわかんないって。
ないんだって。

やっぱりライヴって感じの音、いいですね。
私の、寺井先生とのレコーディングはスタジオではなく、ライヴハウスをお借りしたの。
そこは、床に線路の枕木の廃材を使ってて、壁はレンガ。梁や天井にも惜しみなく木が使われていて、音をよく吸収するのか、とてもまろやかな、決してキンキンしない音になるんで、あえて選びました。

そんな環境で、その上、流し録りだから、ブツブツ切れてなくて、感情の流れがスムーズに、自然に聞こえてるはずなんですけど、それを感じさせるほどのウデがなかったのが残念・・・

でも私自身はとっても好きな出来上がりなの。ラストで息切れさえしてなければ、ですけどね(笑)



2012.09.19(Wed) 19:48 | URL | EDIT

さはんじ

Re: あれ?まだこれ読んでなかった(^^;;

>PATTIさん
コメントありがとうございます。

あらら、このCDも入手困難盤になっていましたか。
売れ線ばかりがもてはやされて、質の良い音楽が市場から消えていくのは実に悲しい事です。

「部屋の鳴り」は録音するサウンドに大きく影響しますよね。良い音のする空間はとても貴重です。

えーと、近いうちにメッセージ送りますね。

2012.09.20(Thu) 00:05 | URL | EDIT

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