James Taylor 『ONE MAN DOG』

2010.09.08(Wed)


ワン・マン・ドッグワン・マン・ドッグ
(2008/05/28)
ジェームス・テイラー

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1972年に発表されたジェームス・テイラーの『ONE MAN DOG』は、人によって好みの分かれるアルバムのようです。名曲「寂しい夜」を擁してはいるものの、インストゥルメンタルを含む短めの曲が18曲も収録され、じっくり聴き込むというよりは、さらっといつの間にか終わってしまうような、地味な印象を持つ人がいる一方で、聴き込む程に味わい深いとの理由から、この『ONE MAN DOG』をジェームス・テイラーのベストのアルバムとして挙げる人も少なくありません。

音楽的背景等は他の詳しいサイトにおまかせして、サウンド・サイドから見て注目したいのは、このアルバムがジェームス・テイラーの自宅、ロサンゼルスのスタジオ、ニューヨークのスタジオと、3カ所でレコーディングされているという点です。これらの曲にサウンド的な違いはあるのでしょうか。

全体的なサウンドとしては、輪郭のはっきりとした、しかしながら太くて暖かい、アナログサウンドの良さをたっぷりと味わうことのできる、非常に良い音のアルバムといった印象です。

やはり気になるのは自宅でのレコーディングですね。ジャケット裏にはジェームス・テイラーの自宅スタジオらしき写真が載っています。コントロール・ルームと思われるスペースには、今となっては決して大きいとは言えないミキシング・コンソールと、1インチ・16トラックのマルチテープレコーダーが確認できます。この広くゆったりとした録音スペースで、時間とスタジオ料金を気にすることなく、じっくりとレコーディングが行われたのでしょう。そのリラックスした雰囲気は演奏によく表れていると思います。

ライナーノーツによると、自宅スタジオで録音された曲は8曲、ロサンゼルス(LA)のクローバー・スタジオが5曲、ニューヨーク(NY)のA&Rスタジオが5曲となっています。が、よく見ると「All vocals recorded at Clover Recorders」との記載があり、全てのボーカルはLAのクローバー・スタジオでオーバーダビングされているようです。「All vocals」という表現にコーラス(Background Vocals)が含まれるのかどうか判りませんが、含まれるならば、自宅で録音されたのはドラム、ベース、パーカッション、ギターにピアノ(エレキを含む)といった、いわゆるベーシック・トラックのみだという事になります。

楽器やアンプにマイクを接近させて(オンマイクで)録音できるギターや電気楽器類はともかく、ある程度マイクを離して録音せざるを得ないドラムや生ピアノは、録音場所の音響特性がサウンドに大きく影響します。自宅録音された曲のスネアドラムや生ピアノは、やはりかなり甘い音で、残念な感じが否めません。
が、全体的には非常に良いサウンドで、レコーディングスタジオで録音した曲と並べても、ほとんど違和感はありません。この時代に、自宅にレコーディングスタジオと同等の機材を揃えていたジェームス・テイラーおそるべし、といった感じです。それともレンタルだったのかな?(笑)

LAで録音された曲とNYで録音された曲についても、サウンド的には大きな違いは感じられません。サウンドを求めたというよりは、楽器編成やミュージシャンの都合でスタジオを選択しているような気がします。ブラスセクションの入る曲は基本的にNYのスタジオで、フィル・ラモーンがレコーディングしていますが、ミックスダウンはすべてLAのスタジオで(別のエンジニアによって)行われているためか、フィル・ラモーンのあの独特な湿った感じのサウンドも影を潜めています。
ボーカルの録音とミックスダウンをすべて同じスタジオで行うことによって、トータルなサウンドの印象をきっちり統一できているのだと思います。

13曲目からラスト18曲目までは、途切れる事なく畳み掛けるように曲が続いていきます。曲が替わったとは思えないような自然なつながりの曲もありますが、面白いのは13曲目「HYMN」と次の「FANFARE」の切り替わりです。「HYMN」の最後の音を長くのばすブラスセクションの定位が、徐々に左チャンネル側に移動していき、次の「FANFARE」のイントロのブラスが右チャンネル側から始まって、また中央に移動していくという、まるでフレームアウト・フレームインのような音の演出がされています。また、「FANFARE」ではサックス・ソロが左右に移動するという遊びも見られます。

続く15曲目「LITTLE DAVID」は、チェンソー、ノコギリ、ハンマーといった大工道具の音がリズムを作るという楽しいイントロから始まります。サンプラーなどなかった時代ですから、これらの大工道具を文字通り「演奏」していたのでしょう。こういったアイデアをすぐに試せるのは自宅録音ならではだと思いますし、その「演奏」している姿を想像すると思わず笑顔になってしまいます。しかしながら、これらの音もダブルで(2度)録音してステレオに広げるといった手法を使っているなど、楽しむだけでなくしっかりと考えて録音されていることがわかります。

自宅・LA・NYと、それぞれの場所で録音された曲が、アルバムの中にどのように配置されているかを見てみると、自宅録音の曲は全体にまんべんなく散りばめられていて、LA録音の曲は主に前半に、NY録音の曲は主に後半に収録されているようです。この配列は、これまでLAを拠点に活動してきたジェームス・テイラーが、次のアルバム『Walking Man』で全面ニューヨーク録音に踏み切ることを暗示しているのでは…と考えるのは考え過ぎでしょうね(笑)。

蛇足ですが、この『ONE MAN DOG』のCDのライナーノーツは、誤植やら記載落ちやら間違いが多いですね。ライナーノーツの情報をもとにしたレビュー記事を書いていると、これがどこまで信用できるのか、少々不安になってきてしまいます(汗)。





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