一青窈『月天心』

2010.09.22(Wed)


月天心月天心
(2002/12/18)
一青窈

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今回取り上げるのは、エキゾチックな雰囲気と、日常的でありながら斬新で不思議な歌詞が印象的なデビュー曲「もらい泣き」の大ヒットで一気にメジャーアーティストとなった一青窈のファーストアルバム『月天心』です。ネット上のレビューなどを見ると、大ブレイクしたこのアルバムも賛否両論、さまざまな評価があるようです。

一青窈の曲で特徴的なのは何と言ってもその独特な歌詞の世界観だと思いますが、このアルバムを聴いた限り、メロディーやコードの展開に突飛なところはなく、いたってオーソドックスな楽曲という印象を受けました。不思議な魅力を持った歌詞の世界を更に印象付け、盛り上げているのはアレンジ及びそのサウンドのようです。

このアルバムは実に様々なアレンジの曲で構成されています。クレジットを見ると、曲ごとのプロデューサーやアレンジャー、エンジニア、レコーディングスタジオまでもバラバラで、これを多彩な音楽性と見るか、方向性の模索中と見るかはかなり微妙なセンだと思います。ボーカルのエフェクト処理さえも曲ごとに異なっていて、アルバムのトータルな雰囲気をつなぎ止めているのは、一青窈の歌唱と歌詞の世界観、そして奇をてらったように耳障りで刺激的なサウンド、といった感じです。

最も気になったのは3曲目「sunny side up」で、これは歌詞もメロディーもとても可愛らしいフォークソングといった感じの楽曲なのですが、サウンドは非常に奇抜です。
マイクロホンで人の声を収録する際、距離が近すぎたり角度が適切でなかった場合に、息がマイクにかかって「ボッ」という低音のノイズが入ってしまうことがあります。これは「ポップノイズ」とか「吹かれ」と呼びますが、この「sunny side up」という曲のボーカルにはこのノイズが目一杯入っています。あまりにも頻繁に入っているので、ノイズ成分を後から足しているのではないかと疑ってしまうほどです。
マイクのすぐ近くで歌っている雰囲気を出したかったのでしょうか(それにしてもノイズ処理の方法はいくらでもあります)、それともたまたま入ったノイズが面白いと思って強調してみたのでしょうか。いずれにしてもこれはレコーディングのタブーをやすやすと犯している行為で、これが新しい感覚などとは思いたくないですね。かつて録音の仕事をしていたことのある私は、このノイズが気持ち悪くて仕方ありません。
さらに効果音のようなシンセサイザー、無機質でうるさいハイハット風のリズム、サイン波のような電子的重低音、曲の後半から出てくるピンクノイズっぽい音(一応リズムを刻んでいるようです)など、これらは曲の雰囲気を無視したアレンジだと思います。前衛的・攻撃的な曲ならばともかく、こういったキュートな曲にこのサウンドというのは、まったく理解に苦しみます。

2曲目の「もらい泣き」から4曲目の「イマドコ」まで無機質な打ち込みのリズムの曲が続いたかと思うと、5曲目の「犬」は一転してハードなロックナンバーになります。この曲で印象的なのはバスドラムの音像の大きさとその豊かな響きです。
通常、ドラムはバスドラムとスネアドラムによって、収束と解放を繰り返すようにリズムをつくっていきます。しかしこの曲ほどにバスドラムが響くと、バスドラムとスネアのどちらも解放の役割を担っているように感じます。これはこの曲調に合っていて、なかなか面白い効果が出ていると思いました。

楽曲もアレンジもサウンドもバラエティに富んだ内容のアルバムですが、全体的に見てリズムを強調した曲が多いように思います。そしてそれぞれの曲の中には何か心に引っかかるようなサウンドが含まれていて、それがアルバムのカラーになっているようです。それは硬質なリズムであったり、奇抜な電子音であったり、ちょっと印象的な音色の楽器であったり、ドラムを強調したミックスであったりとさまざまですが、はたしてこのような方法が一青窈の楽曲に効果的に作用しているのかどうかは疑問です。
ただ、私は次にどんなサウンドの曲がくるのだろうかと、期待半分不安半分で聴き進めていくうちに、あっという間に10曲すべてを聴き終えてしまいました。好みは別として、知らないうちにこの世界に引き込まれていた訳で、そういう意味では効果的なサウンドなのだと言えるのかもしれません。なんだか納得できませんが(笑)。

一青窈の歌詞やボーカルはそれだけで充分に魅力的なので、できれば控えめなアレンジやサウンドでこのアルバムの世界を味わってみたいものです。


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