David Benoit『WAITING FOR SPRING』

2011.02.01(Tue)


Waiting for SpringWaiting for Spring
(1989/09/25)
David Benoit

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実に久々のレビュー記事更新であります。
ここ数年ですっかり寒がりになった私の今の気持ちを的確に代弁したようなタイトルを持つアルバム、デビッド・ベノワの『ウェイティング・フォー・スプリング』を、レビュー復帰記事の第1弾として選んでみました。1989年に発表されたこのアルバムは、それまでの爽やかフュージョン路線とは違う、しっとりとした4ビート・ジャズを基調としたものになっていてファンを驚かせました。その内容をわかりやすく表すためか、日本盤には「ビル・エヴァンスに捧ぐ」というサブタイトルがつけられています。もちろんそのサウンドも、フュージョン路線のアルバムとは大きく異なっています。

2トラック・デジタルレコーダーに一発録りされた、この『WAITING FOR SPRING』はデビッド・ベノワのアルバムとしてはかなりジャズ寄りではあるものの、メインストリーム・ジャズのファンからするとジャズとしてはまだまだ甘いのだそうです。そういった意見をあちこちで耳にしました。私は大好きなんですけどね。まあ私はまっとうなジャズ・ファンではありませんからこのくらいが気持ちよく聴ける訳で…、なんて言い訳じみた独り言はともかく。

いきなり脱線気味になってしまいましたが、このアルバムは楽曲の音楽性だけでなくサウンドもよりジャズっぽくなっています。全体にたっぷりとした残響があり、ふわっと柔らかめな印象のサウンドです。が、それぞれの楽器の音は輪郭がはっきりとしていて、特にピアノは高音域にデビッド・ベノワ特有の明るい艶が感じられます。しっとりとした曲も暗く感じられないのはこのピアノの音色のお陰なのかもしれません。逆にそれがジャズらしくないと言われる原因とも言えるでしょうが。

特筆すべきは、32歳という若さで急逝した女性ギタリストのエミリー・レムラーが参加し、素晴らしい演奏を聴かせてくれている事でしょう。ちなみに彼女がこの世を去ったのはこのアルバムが発表された翌年です。
楽器に関するクレジットは記されていませんが、おそらくフルアコースティック・ギターを使用しているのでしょう。いわゆるジャズ・ギターで、基本的に丸く太いナチュラルな音色で、ベースと共に中央に定位しています。
「Some other sunset」のギターはアンプの音だけでなく、まるで生音もマイクで拾ってミックスしているかのようなシャッキリとした高音を聴くことができます。また、「Fireside」ではコーラス系のエフェクトがかかり、独特の雰囲気を演出しています。エフェクトによって左右に広げられていますが、この曲のギターはやや左側に定位しているように聞こえます。

ドラムはピーター・アースキンです。抑揚のある、まさしくジャズ・ドラムといった感じで、繊細さと力強さを兼ね備えたダイナミックレンジの広い演奏と言えるでしょう。4ビートの楽曲で頻繁に聞けるライドシンバルはあまり響かずに、アタック音のカチカチという音が目立ちます。そのため、他のハイハットやシズルシンバルの鳴りがよりはっきりと聞こえます。
「After the snow falls」における演奏の繊細さは素晴らしく、スネアのブラシ・ワークはまるで積雪の中を歩く足音のように聞こえます。また、同じくブラシでそっと鳴らすシンバルの音はしんしんと降る雪のようです。
「Some other sunset」では決して強く叩いている訳ではないのですが、ベースのフレーズに合わせたタムの豊かな鳴りが、力強さを感じさせてくれます。

ルーサー・ヒューズのウッドベースは、音色の硬さ柔らかさを演奏で見事にコントロールしています。アコースティックな楽器の表現力は本当に素晴らしいと再認識していまいました。アルコ(弓)による演奏も控えめで嫌味にならず(実は私はあまり好きじゃないのですが)いい感じです。また、気合いの入ったソロや盛り上がる部分では、指板に弦がぶつかるカチカチという音がハッキリ(というか大きく)聞こえ、演奏のリアリティを感じます。うるさい雑音だと感じる人もいるかもしれませんが、これこそが楽器の音であるし、力強さを表現する大切な音でもあると思います。頻繁に鳴っていたら興ざめですけどね(笑)。

また、ベーシストのジョン・パティトゥッチも「Cast your fate to the wind」と「Cat on a windowsill」の2曲に参加しています。そしてこの2曲にはエミリー・レムラーのギターが入っていません。ライナーノーツによると録音日は1989年の2月5日と5月25日となっているので、この2曲は他の曲とは録音日が違うのだろうと想像できます。しかし、3ヶ月以上も間があいているにもかかわらず、これらの曲にサウンド的な差異は感じられません。

前述のように『WAITING FOR SPRING』は、それまでのデビッド・ベノワとは異質なサウンドのアルバムではありますが、その内容の素晴らしさは多くの人に支持されたようです。このサウンドもれっきとしたデビッド・ベノワのサウンドとして認識され、3年後には同路線のアルバム『LETTER TO EVAN』が発表されました。こちらはよりバラエティに富んだ内容になっていますが、私はサウンド的にも楽器編成的にも、アルバムのジャケット写真的にもシンプルな『WAITING FOR SPRING』のほうが好みだったりします。

それにしてもホント、早く春にならないかなあ。


  

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COMMENT

bunta52

Some other sunset

こんばんわ!
さっそく、YouTube で『Some other sunset』を探し、いま listen しながらコメント書いています。

  http://www.youtube.com/watch?v=GgS4phLWBWE

軽快なサウンドになごみます。この方は女性ギタリストなんですか、指の動きが軽やかで繊細ですね!
すごく勉強になります。
また紹介してくださいね、楽しみにしています・・・☆

2011.02.04(Fri) 22:19 | URL | EDIT

さはんじ

Re: Some other sunset

>bunta52さま

コメントありがとうございます。とてもうれしいです!
デビッド・ベノワの「Some other sunset」という曲には、いくつかのバージョンが存在します。このYouTubeのバージョンは、1986年に日本の企画で発表された『SUMMER』というアルバムに収録されているもので、『Waiting for spirng』に収録されている曲とは別のアレンジになっています。こちらのギタリストはグラント・ガイスマンという男性で、ガット弦のアコースティックギターを弾いていますね。日本での知名度はイマイチですが、グラント・ガイスマンは私の大好きなギタリストのひとりです。
もしも機会がありましたら、『Waiting for spirng』も聴いてみてくださいね。
今後ともよろしくお願いいたします。

2011.02.05(Sat) 08:18 | URL | EDIT

bunta52

ありゃりゃ~ !!

さはんじさん、おはよーございます!
YouTube で聴いた Some other sunset のギターは
エミリー・レムラーさんじゃなかったのですかー ^^;

中古ショップで時間をつぶすのも楽しみの一つなので、
今度、Waiting for spirng のジャケット探そうと思います。
ありがとうございました!

2011.02.06(Sun) 08:58 | URL | EDIT

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