さだまさし『夢供養』

2011.07.14(Thu)


夢供養リマスタリング メモリアル盤夢供養リマスタリング メモリアル盤
(2003/02/19)
さだまさし

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今回は意表をついて(?)さだまさしのアルバム『夢供養』を取り上げてみようと思います。
1979年、さだまさし27歳の誕生日に発表されたこのアルバムこそがさだまさしの最高傑作であると言う人は少なくありません。かく言う私もその一人で、言うなればポール・サイモンの『時の流れに』に相当する程の(言い過ぎかな?)代表的アルバムだと思います。
アルバム独自の世界観を重視したため、当時大ヒットしたシングル「天までとどけ」は収録されなかったのですが、それでもこのアルバムは大ヒット作となりました。

最初に白状してしまいますが、この『夢供養』は私が中学・高校の頃に最も良く聴いたアルバムです。レコードが擦り切れる程…と言いたい所ですが、実際はそれが怖くてカセットテープに録音し繰り返し聴いていたのが本当のところです。それ故に思い入れも強いのですが、当時はサウンド云々はまったく気にしていなかった訳で、30年以上経ってあらためてこのアルバムをなるべく冷静にニュートラルな気持ちで聴いてみようと思いました。
音源は2003年に発売されたCD「リマスタリング メモリアル盤」です。

1曲目「唐八景-序」は、息を抜いたようなふわっとしたボーカルをユニゾンで複数回オーバーダブしたアカペラの曲で、フェードインしてきたかと思うとすぐフェードアウトして、まるで風に乗ってどこかから聞こえてきた唄声のように演出されています。リバーブが深めにかかっていますが、リバーブタイムはさほど長くないようです。

1曲目がフェードアウトした後、おもむろにアコースティックギターによる2曲目「風の篝火」のイントロが始まります。このアコースティックギターの音は充分にきらびやかなのですが、なんとなく芯がないような、存在感はたっぷりなのに出しゃばらないような、ちょっと不思議なサウンドに聞こえます。よくわかりませんが、中音域が少し引っ込んでいるのでしょうか。このアコースティックギターのサウンドは、アルバムを通して聞く事ができます(9曲目の「空蝉」だけちょっと印象が違う感じです)。また、度々出てくる高音域のオブリガートにはこれでもかというくらいリバーブがかかっています。

ボーカルの音像は大きめで、柔らかくナチュラルな音質です。全曲を通してたっぷりめのリバーブがかかり、いかにもボーカルが主役です、といった感じですね。少しだけざらっとした荒い感じに聞こえる部分があるのが残念で、これが録音時のものなのかマスターテープの状態によるものなのかはもちろん判断できません。

ドラムのサウンドは、当時の流行なのでしょうか、深胴のような太いスネアの音が印象的です。ボーカルを邪魔しないようにと配慮されているのか、特にスネアは控えめにミックスされているようです。6曲目「療養所」のサビの部分では、タムのフィルインに対して後に続くスネアが拍子抜けするほど引っ込んで聞こえます。
唯一ドラムが大活躍する8曲目「立ち止まった素描画」では村上 ponta 秀一によるちょっと変わったリズムパターンを聞くことができます。ドラムサウンド自体はデッドで地味めですが、演奏は派手で聴き応えたっぷりです。この凝ったリズムが曲調に合っているかどうかはちと疑問ですけどね(笑)。アルバム中で最も派手なこの曲の最後はシンバルの逆回転サウンドで一気に収束し、9曲目「空蝉」のシリアスなイントロに劇的に繋がっていきます。

しかし何と言ってもこのアルバムでもっとも特徴的なのはストリングスのアレンジと、それを含む全体のオーケストレーションでしょう。さだまさしの楽曲はシリアスなものからコミカルなものまで非常に幅広く多彩ですが、それぞれの世界観を的確に表現した渡辺俊幸氏のアレンジはとても素晴らしいものだと思います。
学生の頃はさして気にもしなかったのですが、今聴き直してみると、特に7曲目「春告鳥」のイントロの緊張感は圧巻で、柔らかなピアノのアルペジオと、か細いストリングスやベル等が、見事に古都の寺院の厳かさ・静謐さを表現しています。

同窓会の席上で恩師に思い出話をするという設定の10曲目「木根川橋」は、宴会場(居酒屋?)の効果音から始まります。このアルバムに収録されなかったシングルヒット曲の「天までとどけ」が宴会場のBGMとして微かに聞こえてきて、ニヤリとさせられますね。この効果音が、私が記憶していたよりずっと控えめだったので、あら、こんなもんだったっけ? と、ちょっと驚きました。
また、この曲の最後のフレーズを同窓生?が合唱するというアイデアや、酒に酔って寝てしまった先生の様子を表現したであろうエンディングの可愛らしいアレンジも、とてもユーモラスでいい感じです。

そしてラストは、まず1曲目再出の「唐八景-序」が左チャンネルから微かに聞こえてきて、ゆっくりと右チャンネルに移動して消えていきます。まさに風のごとくといった感じです。この「唐八景」はさだまさしの故郷である長崎の民謡であり、その後に始まる11曲目「ひき潮」は、都会で挫折感を抱いて故郷に思いを馳せるという内容の曲で、この構成も見事です。美しいストリングスが印象的なエンディングはじっくりと時間をかけてフェードアウトしていきますが、音の消え際はなんだかあっさりと終わってしまいます。これまで何度もレビューに書いていますが、きっとアナログレコードなら自然に聞こえたんでしょうねえ。

全体的にアコースティックな雰囲気を重視したアレンジで、低音や高音のバランスも良く、どっしりと落ち着いたサウンドといった印象のアルバムです。曲によってはシンセサイザー(Poly Moog)もクレジットされていますが、実際には控えめな隠し味程度に使用されているようです。このあたりのセンスもさすがですね。


さて、さだまさしのアルバムについて書くならば、歌詩について触れない訳にはいかないでしょう。作家の宮崎康平氏が絶賛したと言われる「まほろば」を筆頭に、多彩でクォリティの高い歌詩が揃っています。中にはとても26歳の青年が書いたとは思えない詩もあり、その才能にはただただ驚くばかりです。ちなみにさだまさしの作品はすべて「作詞」ではなく「作詩」とクレジットされているのだそうです。このあたりにもこだわりが窺えますね。

ついでに触れておきますが、このCD「夢供養 リマスタリング メモリアル盤」は2枚組になっていて、Disk-2のほうには「唐八景-序」を除く全曲のピアノによるインストゥルメンタルが収録されています。スティーブ・キューンやビル・メイズといったビッグネームによるジャジーでしっとりとした演奏を聴く事ができ、サウンド面でも柔らかく落ち着いたピアノの音を楽しむことができます。
…でも、これって必要なのかなあ(笑)


  


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