Andrew Gold『ALL THIS AND HEAVEN TOO』

2011.08.16(Tue)


All This & Heaven TooAll This & Heaven Too
(2005/05/31)
Andrew Gold

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このブログではすっかりお馴染みになった(?)まさかの3連続アルバムレビュー、今回は1978年に発表されたアンドリュー・ゴールドのサードアルバム『幸福を売る男』です。この邦題はアルバムジャケットのイメージから付けられたのでしょうか、あまりセンスがいいとは思えませんねえ。一方、原題の『ALL THIS AND HEAVEN TOO』は、1940年に公開された映画のタイトルを意識して付けられたのでしょうか。こちらの邦題は『凡てこの世も天国も』。ああ、こっちじゃなくて本当によかった(笑)。

このアルバム『幸福を売る男』は、3作目にしてついにアンドリュ-・ゴールドのセルフプロデュース(シンガーソングライターのブロック・ウォルシュとの連名ですが)となった作品であり、レコーディングエンジニアも違うことから、前2作とはサウンド的に大きく変化していることが期待できます。そんなことを思いつつ聴いてみると…あらら、これは予想以上でした。前作『自画像』の翌年の作品だというのに、これほどサウンドが違うのか、という感じです。

が、実は、前2作品がCD化されたのは1991年なのですが、この『幸福を売る男』(と4作目『風にくちづけ』)は1999年になってやっとCD化されました。この8年間のマスタリング技術の進歩を無視することはできません。CD化される際に施されたマスタリングによってサウンドが大きく変わることは間違いないですから、純粋にアルバムとしてのサウンドを比較するためには、アナログレコードを用いなければならないでしょう。現在の私の環境ではそれは不可能なので、これは単純にそれぞれのCDを聴いた感想という意味でのレビューであることをご了承ください。

と、いきなり言い訳になってしまい、ちょっとテンション落ち気味ですが(笑)、気を取り直していきます。
サウンドサイドから見て気になるのは、裏ジャケットに記された「Mixed using the Aphex.」というクレジットです。この「Aphex」というのは、おそらくエキサイターの事だと思われます。新しもの好きの(たぶん)アンドリュー・ゴールドがセルフプロデュースのこの作品に、当時の最新鋭エフェクトを使いたがったであろう事は容易に想像できますし、もしもエキサイターを使用したのなら、前作から劇的にサウンドが変化した事も納得できるというものです。
違っていたらごめんなさい、天国のアンドリュー・ゴールド様。

さて、1曲目「愛しているのに」のイントロのピアノを聴いた瞬間に、前作までのサウンドとは違うことが実感できると思います。ダイナミックで歯切れが良く、奥深さも感じられる明るいサウンドは、それまでのサウンドが被っていたベールが数枚とれたかのようです。ドラムやその他の楽器も粒立ちの良いリアルなサウンドで、ボーカルも前作までのように奥まった感じはなく、2・3歩前に出てきたように感じられます。
しかし、シンバルやハイハット等の金属系の音はだいぶ控えめにミックスされていて、高音が耳につくようなことも無く、全体的に程よい周波数バランスになっているという印象です。

2曲目「オー、ユーレイニア」でサビから入ってくるアルペジオはクラビネットなのですが、まるでエレキギターのようなエフェクト処理がされており、演奏もギターを模したような弾き方をしています。ちょっと聞いただけだと本当にギターだと勘違いしそうです。2コーラスめが終わってからの間奏でようやくクラビらしい演奏が出てきて、ここでタネ明かしだよ、というイタズラ心が感じられます。本当にアンドリュー・ゴールドのアルバムはこういう仕掛けが多いですね。

3曲目「きみの面影」はアンドリュー・ゴールドのピアノとギターのみによる演奏となっています。イントロのアコースティックギターは、きらびやかな高音とやわらかい低音のバランスがなかなか心地よい感じです。途中から入ってくるエレキギターは何とも不思議なサウンドで、まるでポルタメントを伴ったシンセサイザーのようです。これはボトルネックを用いたボリューム奏法か、あるいはバイオリンの弓のような物を使用しているのかもしれません。こういった特殊なサウンドも、嫌味にならず自然に聞かせられるところにセンスの良さを感じます。

そして4曲目「彼女に首ったけ」は、スタジオの壁を叩いた音とクラップ(手拍子)を何度も(ライナーノーツによると22回?)オーバーダブして作り上げたリズムをループさせているそうです。おそらくオープンリールテープを文字通りループにつないで再生したものをリズムトラックとして使用したのでしょう。サンプリング・リズムの先駆けと言えるでしょうね。
スティーリー・ダンがアルバム『ガウチョ』(1980年)の中でドラムをループさせていたそうですが、どうやらアンドリュー・ゴールドのほうが早かったようですね。また、この翌年に発表されヒットしたイーグルスの「ハートエイク・トゥナイト」のリズムはこの「彼女に首ったけ」をパクッた(笑)ものじゃないかという噂もあります。さらに、ライナーノーツによるとキム・カーンズの「ベティ・デイビスの瞳」もそんな感じがするとの事ですが、私はこちらは似ているとは思えませんねえ。
と、この曲は様々な方面に影響を与えているようです(?)が、無機質なリズムループと、アーニー・ワッツのサックス以外はすべてシンセサイザーによる演奏となっています。曲想的にはテクノっぽさなど微塵も感じられませんが、本当に現代のエレクトリック・ミュージックの先駆的な曲と言えるかもしれません。

5曲目「きみがすべて」のイントロでは、よく聴くと、ピアノの低音を追いかけるように何か金属的な振動のような「ビィィィン」という音が聞こえています。これはもしかしたら前述のエキサイターの影響によって発生したノイズではないかと思うのですが、どうなのでしょうね。それほど目立ちませんが、気にすると、とても気になってしまいます。

6曲目「気の合う二人」では後半、ボーカルに深いディレイがかかります。しばらくすると大胆なフィードバックも追加されますが、唐突にドライなサウンドのボーカルが割り込み、ブレイクの後にもとの調子に戻るというアイデアはとても自然で違和感がありません。本当にセンスがいいですねえ。

7曲目「恋は何処に」ではハーモニウムという楽器が使用されています。インド音楽でよく用いられるオルガンのような楽器だそうです。柔らかくも金属的なアタックを持つエレキピアノとうまく馴染んで、独特の雰囲気を作っていると思います。ティンパニと共に鳴る重低音はエレキピアノでしょうか? また、この曲でもエレキギターのボトルネック奏法が聞けます。

ボサノバ風の8曲目「ジュヌヴィエーヌ」は、パーカッション(とストリングス)以外のすべての演奏をアンドリュー・ゴールドひとりでこなしています。後半のエレキギターのソロは素晴らしく気持ちのいいサウンドで、まるでフュージョン系のアルバムを聴いているのではないかと錯覚するほどです。


どうもアンドリュー・ゴールドのアルバムをレビューすると、それぞれの曲に特徴があって、結局は全ての曲についてコメントしたくなってしまいます。が、だいぶ長くなってしまったので、9・10曲目は割愛して今回はあえてここまでにしましょう。特に深い理由はありませんが。

相変わらず楽曲やアレンジに関しても素晴らしく、センスの良さを感じられますし、音楽的な幅広さも増してきているように思います。さらにこのアルバムではサウンド面も格段に磨き上げられた感があり、トータル的な完成度も高くなっていると言えるでしょう。



   


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2011.08.19(Fri) 18:44 | | EDIT

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