Larry Carlton 『LARRY CARLTON』

2011.11.12(Sat)


夜の彷徨(さまよい)夜の彷徨(さまよい)
(2007/06/27)
ラリー・カールトン

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またもや名盤の登場です。1978年に発表された『夜の彷徨』は、ラリー・カールトンのリーダー作としては3枚目のアルバムになります。彼の代表曲であり、ギター小僧の永遠のバイブルと言っても過言ではない(?)名曲「ルーム 335」を収録した、あまりにも有名なこのアルバムを(恐れ多くも)今回のレビューに選んでみました。
名盤の宿命なのかもしれませんが、このCDも再発売される度に音質が大きく異なっているようです。ここでは私の所有している1991年発売の日本国内盤CD(WPCP-4091)についてレビューしていきます。

裏ジャケットに記載されているクレジットを見ると、ストリングスセクションのレコーディングを除いたすべてのレコーディングからミックスダウンまでの工程が、ラリー・カールトンの自宅スタジオ「Room 335」で行われているようです。プロデュースやアレンジだけでなく、エンジニアリングまでも手がけているラリー・カールトンは当時30歳、なんと恐ろしい才能でしょうか。セカンドエンジニアとしてクレジットされているのはスティーブ・カールトン。ラリー・カールトンの家族構成は知りませんが、名前からは身内のニオイがプンプンしてきます(笑)。まあおそらくほとんどの作業をラリー・カールトン本人が行っているのでしょう。

さて、1曲目は自宅スタジオと同じタイトルを持つ「ルーム 335」です。柔らかく乾いたエレキピアノと図太いベースのリフで始まるイントロには緊張感がありますが、ストリングスとタイトなドラムが入ってくると、ぱっと目の前が開けたかのような爽やかさが感じられ、伸びやかなエレキギターのメロディで一気に解放されるようなこの構成、素晴らしいですね。これ大好きです、私。
バスドラムはどっしりとしていて、ビーターがヘッドに当たる感じもよくわかる、押し出しの強い音です。スネアドラムは平たく重く、歯切れの良いタイトなサウンドで、適度に乗ったリバーブもいい感じです。ハイハットは一体どうしちゃったの? というくらい奥まって目立ちません。シンバル類もかなり控えめです。
エレキギターのサウンドについて私があれこれ能書きを垂れると、世界中のギターフリークから非難を浴びそうなのでやめておきますね、えへへ。やっぱり良い音してます、ハイ。
1コーラス目の主旋律を演奏するエレキギターはダブリングされているようです。ディレイマシンを使ったのではなく2度まったく同じ演奏をして重ねている感じです。それを左右に振り分け、厚みと広がりを出していますね。パワフルなアドリブパートからはダブリングはされていません。
エレキピアノのソロは(私、このソロ大好きです)つぶれ気味の中低音が力強く、よく転がる感じの出しゃばりすぎない高音とのバランスもいいですね。このパートからこっそり入ってくるパーカッション(カバサかな)のドライブ感や、控えめだけどカッコいいギターのカッティングも聴き逃したくないポイントです。

しかし、この「ルーム 335」で最も注目したいのは、各楽器、特にドラムの演奏によるダイナミックレンジの表現です。簡単に言うと強弱の付け方ですね。この曲は主旋律、ギターソロ、エレピソロ、ギターソロという4コーラスで構成されていて、それぞれがイントロと同じリフで繋げられています。それぞれのコーラスは控えめな(とはいっても決して弱々しい訳ではありません)演奏から始まり、後半ではこれでもかというくらいにパワフルなプレイになっていきます。楽器は強く演奏すれば音量が上がるだけでなく、楽器自体の「鳴り」が変化して音に張りがでてきます。それがしっかり聴き取れるんですね。
ジェフ・ポーカロのドラムは、ただリズムを刻むだけでなく、非常に豊かな抑揚表現をしています。いわば「歌って」います。もちろん他の楽器も追随して、演奏だけでなく音量や音の張りでも大きなうねりを生み出しています。

room335_wave

そんな事を踏まえてみると、出だしのハイハットやシンバルが控えめだった理由も見えてくるような気がします。ダイナミックレンジ(音の大小の差)が広いこれらのカナモノ類は、もっとも強い演奏のときに一番良いバランスになるように音量が設定されているのではないでしょうか。その時々の気持ち良さでバランスをとるのではなく、音量を固定に近い状態にすることによる、プレイヤーの抑揚表現を尊重したミキシング、そしてバンド全体のドライブ感を重視したいかにもプレイヤーらしいミキシングと言えるでしょう。ジャズの表現の仕方に近いですかね。そしてそれは見事に成功していると思います。エンジニアのラリー・カールトン恐るべし、です。
この素晴らしいダイナミックレンジが、再発されたCDで潰されていない事を願うばかりです。

1曲目のレビューが非常に長くなってしまいました。駆け足で続けていきますね。

軽いタッチのアコースティックギターがいい感じの2曲目「彼女はミステリー」と、スラップベースが印象的な6曲目「恋のあやまち」では、ラリー・カールトンのソフトなボーカルが聴けます。こういった曲調でもリズムにはメリハリがあり、バスドラムの力強さが印象に残ります。

3曲目「ナイト・クロウラー」ではロール気味のスネアドラムの高域がちょっと強調されたように感じます。この曲のドラムサウンドも素晴らしく、演奏の細かいニュアンスまでよく聴き取れるダイナミックレンジが気持ちいいですね。伸びやかなエレキギターの合間にちょっと出てくるベンドを使用したキーボードがちょっとしたアクセントになっています。
終盤のストリングスのロングトーンは、2小節ごとに息継ぎのような不自然な感じがしてますが、これってキーボードなんでしょうか?

4曲目の「ポイント・イット・アップ」はハイハットにかけられたフェイザー(?)のようなエフェクトが印象的です。ドラムは今度はややくぐもったようなサウンドになっていて、スピード感のあるベースやエレピのバッキングとうまく馴染んでいます。エレキギターのアドリブプレイは圧巻ですね。一番最後のスネアにかけられたリバーブは、やや大げさでしょうか(笑)。

5曲目「リオのサンバ」は、ギターソロのピッキングの強弱による音色変化が最大の聴き所ではないでしょうか。エレピソロのバックに聞こえる歯切れの良いカッティングも大好きです。

ロックテイストあふれる7曲目「希望の光」は1曲目「Room 335」と同様に主旋律のギターがダブリングされていて、後半になるとセンター定位のアドリブと掛け合いのような状態になります。ささくれたように乾いたオルガンのサウンドがいい雰囲気ですね。最後はリズム隊と主旋律のギターがフェードアウトして、ギターのアドリブはそのままに、ちょっと違ったリズムのギターがフェードインしてきます。このギターサウンドも大迫力です。

ラスト8曲目は、美しいエレキピアノで始まるバラード「昨日の夢」です。冒頭のエレキピアノのバックには微かにヒスノイズが聞こえています。このノイズが楽器のアンプから出ているものなのか、録音テープによるものなのかはちょっと判断がつきません。ちなみにエレキギターが出てくる直前にふわっと聞こえてくるノイズもあり、こちらはギターアンプのノイズでしょう。うまくフェーダー処理されているようですね。小さな音量の録音ではこのあたりが当時の技術の限界だったのかもしれませんが、その処理に苦労の跡が感じられます(笑)。
この曲は全編完全にギターが主役で、ギターの魅力でもある粗いサウンドやその表現力をたっぷりと味わうことができます。アルバムの最後にふさわしい曲と言えるでしょうね。


世界のトップギタリスト、ラリー・カールトンの最も勢いのある時期(?)に発表されたこの『夜の彷徨』は、本当にギターの魅力満載のアルバムです。このギターサウンドはギターキッズの永遠の憧れ、目標であり続けるのでしょう。本当に良い音してます。
と同時に、超一流ミュージシャンによるバンドとしてのアンサンブルやサウンドも素晴らしく、まさにこれが名盤たるゆえんなのではないでしょうか。
大きめの音量でじっくり味わいたいアルバムです。


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COMMENT

諸星輝々

No title

いつもありがとうございます。

1曲のみについてもコメになりますが・・

ミスター335 とも言われたカールトンのギター
柔らかなタッチとギターを知り尽くしたフレーズ構成は、聴く者を惹きつけてやまない魅力がありますよね。

Room 335 あらためて聴いてみました。

ポーカロの叩きだす、ダイナミズムをしっかりとキープしたうねりあるビートにも心を揺さぶられる
ほんとに名曲ですね!!

 



2011.11.14(Mon) 12:53 | URL | EDIT

さはんじ

Re: No title

>諸星輝々さん
コメントありがとうございます!

この記事を読んで、あらためて曲を聴いてくださった、それが本当に嬉しいです。
Room 335、本当に素晴らしい名曲です。

こちらこそいつもありがとうございます。

2011.11.14(Mon) 22:49 | URL | EDIT

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