井上夢人「ホワイトノイズ」

2011.11.19(Sat)


あくむ (集英社文庫)あくむ (集英社文庫)
(1996/08/20)
井上 夢人

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ちょっと季節外れかなという気もしますが、秋の夜長にホラー小説を楽しむのもいいかもしれません。今回ご紹介するのは、井上夢人の短編集『あくむ』に収録されている「ホワイトノイズ」です。

仕事帰りに立ち寄ったディスカウント・ストアで、たまたま見かけたエアバンド・レシーバー。名刺くらいのサイズの小さな盗聴器だ。なんとなく軽い気持ちで買ってしまったその日から、ぼくは盗聴に夢中になっていった。そしてある日、ぼくの盗聴器は主婦とその浮気相手らしい男の会話をキャッチする…。

盗聴を題材とした小説は少なくないでしょう(いずれもうひとつご紹介するつもりです)。盗聴には他人のプライベートに対する好奇心、情報が音声だけに制限されているからこそ膨らむ想像力、そして罪悪感など、ドキドキワクワクするような魅力があります。もちろんフィクションの題材としてですよ。実際にやっちゃあいけません(笑)。
そしてこの「ホワイトノイズ」は主人公が盗聴にのめり込んでいく様が無理なく自然に描かれていて、読者である私たちも自然とストーリーに引き込まれていきます。そこに小さな事件が起こり、事態は急展開していくのですが、ここから先はネタバレになりますので自粛という事で…。
こう書くとなんだかミステリ小説の紹介みたいですが、やっぱりこれはホラーストーリーなのです。

ミステリとホラーは、時によく似た装いをしていることがあります。「謎」を主題とするのがミステリで「恐怖」を主題とするのがホラーであることに間違いはないでしょうが、ストーリーを牽引してきた謎がある瞬間に恐怖に変わる、というケースがあるんですね。
私はミステリが好きですが、それはすべての謎が収斂し見事に解決することに快感を覚えるからです。ところが、謎が解決することなく最後の最後で突き放されてしまったら、そこに恐怖が残るとしたら、それは謎が主題であったとしてもやっぱりホラーなのではないか、と私はこの『あくむ』を読んだ時に思ったのです。ま、ジャンルの定義なんて曖昧なものなんですけどね。

この『あくむ』に収録された作品には、その名の通り、夢か現実か判然としないという恐怖が巧みに描かれています。ある意味、岡嶋二人の長編「クラインの壷」に似たテイストかもしれませんが、こちらは短編であるだけに読者を小気味良くストンと恐怖という奈落に落としてくれます。
井上夢人の文章はとても読みやすいのでどんどん読み進めることができますが、読後にふと「ぞっ」とする、それもある意味快感なのかもしれません。

臆病で小心者の私は、ホラー映画は嫌いですが、ホラー小説は決して嫌いではありません。





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